第六話 わーい
「……決まったか?」
「……はい、このハンバーグのライスセット……」
「それで足りんのか? 生霊のせいで腹減ってんだろ。いつもと同じじゃ、またグーグー鳴るんじゃねぇのか?」
「……じゃあ、このイチゴのパフェも……」
「へぇ、甘いもの食うんだな。意外」
真顔でハンバーグを食う菅原。
なんだこいつ。もっと美味そうに食えよ。人の金で食う飯だぞ。
「……あの、それしか食べないんですか?」
「……は? あぁ、サラダ? まぁな。イケメンでいるためには、こんなもんで十分なんだよ」
「……ストイックですね」
「ストイック、ねぇ。ま、俺の価値なんてのは、イケメンなことくらいだからな」
「なるほど」
「てか、さっき手持ちがねぇって言ってたけど、お前、給料結構もらってんじゃねぇの?」
「結構……かどうかはわかりません。同世代の平均年収くらいでしょうか」
「へぇ。平均年収がわかんねぇなぁ。九百万くらい?」
「なるほど。裕福な家庭で育つと、このような金銭感覚になると。勉強になります」
「は? 何だよ。知らねぇよ。平均とか」
スマホを取り出し、調べる。
は……!?
二百八十万から三百万!?
これで、生きられんのかこいつは……。
いや、みんな、これで生きてんのか!?
知らなかった……。
「もっと貰ってると思ってた」
「まぁ、まだ新人なので。数をこなして、お父様に認められれば、もう少し報酬も上がるんじゃないでしょうか」
「もう少し、なんか食えよ。パンとか。ケーキとか」
「……ありがとうございます。じゃあ、この期間限定のTボーンステーキを一つ」
「お前、遠慮って知ってる?」
「はい。知っていますよ」
「……まぁ、いい。食えよ」
「わーい」
わーい?
なんだ、こいつ。テンション上がってんのか?
Tボーンステーキで。
は?
いやなんか、怖……。
デザートを食う菅原を見つめる。
どんだけ食うんだこの女は。
「何ですか?」
「いや、よく食うなと思って」
「今日は特別ですよ。生霊を飛ばしているので」
「やっぱ、疲れんの?」
「そうですね。疲れます。今日はまだ一日目なので、そこまで疲れてはいませんが」
「ふーん。つーか、いつからその力はあんの?」
「物心ついた頃には、すでにありました」
「へぇ。親はびっくりしただろうな」
「そうですね。母は気味悪がっていました。まぁ、幼い我が子が何もない場所に話しかけていたら、気味が悪いのは当然です」
「まぁ、確かに。それはビビるな。普通に。父親は? 同じくビビってた?」
「父は、行方知らずです。顔も知りません」
「……へ、へぇ。そうなんだ……」
「食べ終わりました。ご馳走様です」
「お、おう……じゃあ、行くぞ」
気まずい。
父親がいないなんて、知らなかった。
知らねぇだけで、こいつも色々あるんだな。




