第四話 生霊、飛ばします
「そんで、どうすんだよ。この一週間、お前は何をすんだよ」
「とりあえず、帰り際にストーカーの情報を聞き出したので、もう少し調べたあと、私の生霊を飛ばします」
「ん……? 今、何つった?」
「私の生霊を飛ばします」
「……は? なんて?」
「私の、生霊を、飛ばします」
「ん……? 菅原の、生霊を、飛ばす? どこに?」
「はぁ……」
「おい、何ため息ついてんだよ。わかんねぇことだらけなんだよ。お前の言ってることは」
「はぁ……わかりました。あなたが理解できるように説明しますね」
「おう、俺が理解できるように説明しろ。いや、最初からそうしろ」
「まず、ストーカーの家に私の生霊を飛ばします」
「だから! だから、そこがわかんねぇんだよ。何で生霊を飛ばせるんだよ。ドローンじゃねぇんだからよ。そんな簡単にできんのかよ。そもそも」
「簡単にかどうかはわかりませんが、できます。ちょっと疲れたり、空腹を感じたりはしますが」
「ちょっと疲れて、腹が減る程度で生霊を飛ばせんのか。お前は」
「まぁ、そうなりますね」
「それで、飛ばしてどうすんだよ」
「三日三晩、ストーカーの枕元に私の生霊が立ちます。少々、笑みを浮かべましょうか。しかめっ面よりも効きます。当社比ですが」
「当社比ってなんだよ。まぁ、確かに笑ってる方が怖ぇな。それが三日三晩って。怖すぎんだろ。それって、塩とか撒かれたらどうなんの?」
「効きませんね。私はナメクジではないので」
「その独特な比喩やめろよ」
「私のことを、AI、カーナビ、ドローンに喩えるあなたに言われましても……」
「いや、まぁ、確かにな。それはそうだ。いや、お前の方が圧倒的におかしい。それで? 三日三晩枕元に立ったあとは?」
「あとは、そのストーカーの行く先々に私が現れ、少し微笑むだけです。そして最後に、依頼者の家に再度行く日。その日にストーカーに接触を図ります。おそらく、家の外にいるはずなので」
「は!? 接触!? 危ねぇだろ。何をすんだよ」
「肩を叩いて、微笑むだけです。『ストーカー、楽しいですか?』と聞くのもありですね」
「こ、怖ぇな、それは。てか、なんでその日、そいつが家の外にいるってわかんだよ」
「ストーカーが、依頼者のシフトを把握している。そんな気がして」
「なんでシフトを把握できるんだ? そのストーカーは」
「店の常連と言っていたので。お店で贔屓にされている方なんでしょう。ご贔屓さんに、『あの子が好きだから食事に誘いたい。休みの日を教えて』と言われたら、教えてしまうでしょう」
「なるほど。確かに、お得意さんならな。無視はできない。俺らの業界でもあるからなぁ」
「まぁ、こんなのは勘でしかないですが」
「勘って……うまくいくのかよ、それは」
「わかりません。やってみないことには」
「はぁ……そんで? 菅原、お前ひとりでやれんのかよ」
「はい」
「はぁ……とりあえず危ねぇから、俺も行ってやるよ」
「結構です」
「結構ですじゃねぇよ! 俺、心配してやってんだぞ。お前に何かあったらどうすんだよ。俺は、お前の力がねぇと陰陽師としてやっていけねぇんだぞ!? わかってんのか!? 俺の人生がかかってんだぞ!?」
「はい、わかっています。でも、心配は無用です」
「うるせぇ! 行くって言ったら行くんだよ。マジで困るんだよ。お前に何かあったら。まったく。本当になんなんだよ、お前は。まぁ、俺がいたところでどうにもできないけどな。たとえば、ストーカー野郎がびびってお前に殴りかかってきたとしても。俺、喧嘩とか鬼弱いし」
「わかりました。勝手にどうぞ」
「はぁ? よろしくお願いしますだろうがぁ!?」
「はぁ……よろしくお願いいたします」
「よろしい」
「チッ」
「だから、舌打ちしてんじゃねぇよ!!!」
はぁ。面倒くせぇことに巻き込まれちまったな……。




