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陰陽師の名家のイケメンなのに霊力ゼロな俺。全部マネージャーの女が祓ってるけど、アイツ全然可愛くない  作者: かにえR
【第2章 見えない男の煩悶】

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第三話 ストーカー生霊、現る


「依頼者の情報は?」


「二十代、女性。自宅にて心霊現象が発生とのことです」


「へぇ。てかさぁ、こんなちまちま祓って意味あるわけ? もっとデカい仕事をドーンと、みたいなのないの?」


「平安の世でしたら、あったかもしれませんね。ですが令和の今は、こういった”ちまちま祓う”仕事を積み重ねなければ、利益は得られません」


「なんだよ利益って。陰陽師が利益求めていいのかよぉ」


「はい。現実問題、利益なしには陰陽師であろうと存続できません」


「はぁ。やっぱAIだな、お前は。感情とかあるのか? 怒ったり泣いたりすんのか、お前は」


「はい。人間ですので、喜怒哀楽は兼ね揃えております。ですが、ここでの私はあなたのマネージメント役なので、こういった対応になっている。それだけです。もしかしたら、あなたの見えないところでは泣いたり喚いたりしているかもしれませんよ」


「へぇ。泣いたり喚いたりねぇ……それはそれで怖ぇな」


「まぁ、しませんけど。そうやって“見えない部分の他者の気持ちを理解する”のも、陰陽師として必要なことだと思います。依頼者にとって本当に不安なことは何か――」


「あーうざいうざい。知らねぇよそんなの。じゃあさ、お前はわかるのかよ。他人の見えねぇ部分がよ」


「わかりません」


「はぁ? わかんねぇくせに俺に説教してんのかぁ?」


「はい。私は陰陽師ではないので。御影家の利益のためにマネージャーとして言ったまでです」


「クソ。AIならAIらしく、肯定だけしてろよ。俺が気持ちよく仕事できるようになぁ」


「私はAIではありません。人間です」


「んなのわかってんだよ。まじでお前と話してるとイラつくんだよ。なんなんだよ」


「目的地に到着しました。準備お願いします」


「カーナビか! お前は!」


「……」


「クソ!!!」


◇ ◇ ◇


インターホンを鳴らす菅原。

出てきたのは、普通の女。


中に入っても、普通の部屋。


「心霊現象、大変でしたね。でも、もう大丈夫。私が祓いましょう」


「……はい。祓ったら、その霊は消滅するんですか?」


「え……?」


(おい、すがわら! 消滅すんのか!?)


俺は後ろに立つ菅原に耳打ちする。


(かんばらです。はい、消滅します)


「消滅するそうです」


「……するそう?」


「消滅します!!!」


「チッ」


後ろから小さな舌打ちが聞こえる。

振り返ると、無の表情で壁を見ている菅原。


クソ……この女……。


「では、祓いましょう」


「……はい、お願いします」


その瞬間、菅原が窓に向かって歩き出し、勢いよくカーテンを開けた。


「菅原、お前、何やってんだよ!」


「……」


窓の外をじっと見ている。

依頼者は怯えてるし、俺までおかしいヤツだと思われるだろ。


「あ、すみません。日に当たりたいと思ったみたいで。ちょっと変わったマネージャーなんですよ、はは……」


「そ、そうなんですね。すみません、部屋が暗くて……日中もカーテン閉めっぱなしで……」


突然、菅原が口を開く。


「ストーカーですか?」


「な、何言ってんだお前は! 心霊現象って言ってんだろ!!! あ、すみませんね。こいつ本当変わってて……お気になさらず……」


「えっ……なんでわかるんですか?」


「やっぱり……少々お待ちください」


そう言って、菅原は俺の腕を引っ張り外へ出た。


「いててて……おい、なんだよ! 何なんだよ! 意味がわかんねぇ! さっきからお前何言ってんだよ」


「ストーカーです。彼女のストーカーの生霊がいます。カーテンを開けて外を見たら、生霊本人と同じ顔の人間が、こちらの様子を伺っていました」


「こ、怖!!!」


「つまり、霊を祓っても、ストーカー本人が彼女への執着をやめない限り、また悪さをするということです」


「いや、そんなのどうにもできねぇだろ。いいか? 俺はイケメンだ。背も高い。ジムで鍛えてる。だがな、喧嘩が鬼弱い。鬼だぞ。鬼弱い。わかるか? おい、そんな目で見るなよ。無理だろ。どうにもなんねぇよ」


「確かに、どうにもならない。どうしたものか……」


菅原は考え込み始めた。


「もう祓って帰ろうぜ。俺たちにはどうにもできねぇよ」


「でも、祓ったのにまた生霊が現れたら? “祓えてない”とクレームが来る。クチコミに書かれたら依頼が減り、利益が減る。回り回って、私の給料が……減る……」


「は? なんだよ金の心配かよ! ……でも確かに、祓ったのにストーカー野郎のせいで“祓えてない”と言われるのは腹立たしいな」


「祓うのは私ですが」


「んなのわかってんだよ。クソ。腹立つなまじで」


「一旦、彼女に話を聞きましょうか」


「めんどくせぇけど、そうするしかねぇな」


◇ ◇ ◇


「お待たせしました。すみません、ストーカーというのはいつ頃から?」


菅原が依頼者に尋ねる。


「えーっと……三か月前くらいから……」


「知り合いですか?」


「はい……お店の常連さんで……」


「警察には相談しましたか?」


「……はい。でも“見回り強化します”だけで。引っ越しも考えましたが、職場変えないと同じかなって……。転職も簡単じゃなくて……」


「なるほど。わかりました」


警察でもダメなのか……知らなかった。


「あの、何か心霊現象と関係あるんですか?」


「あなた、見えてますよね? その霊の姿。そのストーカーの姿だった」


「……はい、そうです……」


依頼者は泣き出した。


菅原はカバンを漁り、雑に数枚ティッシュを渡す。


「生霊ですよね、御影さん」


「そ、そう。ここにいるのはストーカーの生霊!」


あいつ、鼻で笑いやがった。むかつく。見えねぇんだから仕方ねぇだろ。


(ど、どうすんだよ)


(とりあえず、祓います)


「とりあえず霊を祓いましょう。では、祓います」


俺は部屋の真ん中に立ち、それっぽく手印を組む。

祓えねぇくせに手印なんか組んでんじゃねぇよ俺……まあイケメンだから許されるけど。


菅原を見る。やっぱり手印すら組まない。なんなんだこいつは。


「破ァッ!」


叫んだ瞬間、少し恥ずかしくなった。


菅原が頷く。


「無事に祓えましたよ」


「ありがとうございます!」


菅原が俺の前にぐいっと出る。


「一週間後に様子を見に来てもいいですか?」


「は!?!?」


「え? あ、はい……わかりました」


部屋を出る。


「お前、何勝手に決めてんだよ! 一週間後に来てどうすんだよ!」


「クチコミのためです。どうするかは今考えています」


「金のためってか? おい、どうなってんだよまじで」


「……」


なんで俺がこんなヤツに振り回されてんだよ……。

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