教え方が独特な少女
俺には、毎日のように顔を合わせている同年代の女性がいる。
だが、残念ながら恋人ではない。
そう、家が近くの幼馴染というやつだ。
そして、そいつが幼少期、俺にこんな事を言った事がある。
「たかくんは頭が良いんだね!」
断じてその言葉を引きずっているものではないが、しかし、俺は今でも授業の予習復習を欠かさず、成績上位をキープしている。
そして今。
「わっかんねー・・・。」
図書室で自習していた俺は、苦手の数学で止まってしまった。
どうにもベクトルというやつが分かりにくい。
始点と終点が一緒ならどこ経由しても一緒?何だそれ。
教科書を読み返していると、隣に誰か座ってきた。
振り返ると、朝水が居た。
(どうしたんだ、こんなとこで。)
正直、数学が得意な朝水の前で勉強して苦手がバレるのが嫌だ。
しかし、朝水は俺の教科書を指さして、こてんと首を傾げた。
可愛い。
じゃなかった、バレてた。
教科書の端に、いつのまにかこんな文字が書かれていた。
(分かんないんでしょ)
「・・・人の教科書に落書きすんな。」
目線をなるべく合わせない様に小声で言うと、右肩をポコポコと叩かれた。全然痛くない。
「まぁ、でもっ・・・教えてくれると助かるなー、なんて・・・。」
ここは朝水の顔を立てておこう。
一瞬で機嫌の良い顔になった朝水はノートを取り出し、
(私たち)
と書いて丸で囲んだ。
それから、こ、と書きかけて慌てて消してから
(友達)
と少し離れたところに書いて丸で囲んだ。
その間に
(ゲーム)
(漫画の貸し借り)
(おしゃべり)
と書いていって、線で繋ぐ。
(私たちが始点、友達が終点。その間をどう経由しても、友達になれるでしょ?)
何だか、分かったような、分からないような。
「まぁ、確かにな。」
朝水は満足げな顔をした後、腕時計を見てそそくさと帰っていった。
「独特な教え方だな、あれは・・・。」
まぁ、久々に同じ教科書を二人で覗き込むのも悪くはなかったと、俺は思った。




