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冒険姫リーベ 〜とある少女が英雄になるまで〜  作者: 森丘どんぐり
第2章 旅立ちの時

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079 帰還者の安らぎ

約2日の道程を経て、冒険者一行はテルドルに帰り着いた。


「つ、着いたあ……」


 リーベは達成感に声を発すると立ち止まることなく、パンパンになったふくらはぎに鞭を打って歩き続ける。


 夕焼けに照らされるテルドルはその赤色を取り込み、まるでレンガの街のようになっていた。そんな温もりに溢れた情景に心奪われていく内、冒険者ギルドの前に差し掛かる。しかし先頭を行くヴァールはこれを素通りする。


「寄らないの?」

「お前ももう限界だろ」

「ま、まあ……」

「前といっしょで明日に回すぞ」


(そういえば前も次の日に回したんだっけか)


 そんなことを考えていると「おかえり」と男性の声が聞こえて来た。彼女が振り返ると、ギルドの方から強面の3人組が出てくるところだった。


「あ、ロイドさん。バートさんにボリスさんも。ただいまです」

「リーベちゃんたちも今帰ってきたんだね」

「はい。でも報告は明日に回すことになって」

「そうなんだ。まあ疲れてるみたいだしね?」

「どこまで行ってきたんだ?」


 ボリスが角刈り頭を搔き回しながら口を挟む。


「セロン村までです」

「そんなところまで歩きで?」


 バートが自慢のスキンヘッドに夕日を煌めかせながら問う。


「はい――と言っても、行きは馬車でしたが」

「そうか。んじゃ、こんなところで足止めしてちゃいけないね」

「ああ、お疲れ様。ヴァールさんたちも、お疲れ様です」

「おう」


 ロイドたちは大先輩に一礼すると去って行った。


……彼らはいい歳に見られがちだが、その実、最年長のロイドでさえ、まだ25なのだ。

 そんな若手3人を見送ると、ヴァールはフェアとフロイデに言う。


「俺はコイツを送ってくから、お前らは先に帰ってろ」

「わかりました」

「お先」


 2人が背を向けると「んじゃ、行くか」とヴァールは伸びをした。

 リーベは頷きつつ、それを真似するとなんだか心地よかった。

 

 食堂〘エーアステ〙は今日も大賑わいで、正面の通りには客たちの談笑する声ががやがやと響いていた。それはリーベが入店すると一層のものとなり、まるで宴会が開かれているかのように騒然とした。


「おかえり」


 賑々しい音の中、父エルガーの声はよく響いた。


「ただいま」


 エルガーは娘がケガしていないか確認しながら「ハイベックスは倒せたか?」と尋ねてくる。その問いに、リーベは自身を持って答える。


「うん。フロイデさんと協力してやっつけたの」


 するとエルガーは目を丸くした。


 当初、未熟なリーベがハイベックスに勝てるなんて思っていなかったからだ。しかし彼はそうした考えをおくびにも出さず、純粋に娘を褒めた。


「そうか。頑張ったな、リーベ」


 エルガーは手が汚れるのも(いと)わずに娘の頭を撫でた。その感触が心地よく、リーベは報われた気がした。


「シェーンも心配してっから、顔見せてやりな」

「うん!」  


客たちに手を振りながら厨房へ向うと、母と目が合った。


「ただいま」

「おかえりなさい」


シェーンは生憎と調理中で、今回も会話することは出来なさそうだ。しかしその穏やかな瞳には安堵する気持ちが在り在りと見て取れて、リーベもまた、安堵するのだった。


「ごめんなさいね、いま手がはなせないのよ」

「ううん。お仕事の邪魔しちゃってごめんね。また後で、ゆっくり話そ?」

「ええ。お疲れ様、リーベ」


そうしてホールを後にしたリーベは自室へとやって来た。


 そこには変わらずダンクがいて、瞳を涙に潤ませ、飼い主を見上げていた。


「ただいま、ダンク」


 入室して、荷物を置いて、グローブを取って、それからダンクを抱き上げた。嬉しそうに目を輝かせていたダンクだが、彼は途端に不機嫌になった。嗅覚に優れる彼は主人が他の犬に現を抜かしていたのを見破ったのだ。


「き、気のせいだよ、ははは……」


 はぐらかすとリーベは、ダンクの大きな頭に鼻先を埋め、今回も無事に帰還できたことを喜んだ。

 


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