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冒険姫リーベ 〜とある少女が英雄になるまで〜  作者: 森丘どんぐり
第1章 英雄の娘、冒険に出る

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039 訓練は続く

 3人が早々に平らげ食休みしている中、リーベは未だに食事を続けていた。それは量が多いからではなく、食べづらいからで。彼女は父の咀嚼が早い理由がここにあるのだと思い至った。


「……ごくん。いつもこれしか食べないんですか?」


 それに答えたのはヴァールだった。


「いや。川が近い時とかは――」

「さかな!」


 フロイデが目を輝かせる。


 彼は魚が好物だった。それによってリーベの彼に対する「猫っぽい」という印象が一層強まるのだった。

「ははは……」

 









「――そこで止めて」

「う……!」


 暴走しないギリギリまで魔力を高め、そこで維持する。その難易度と、先の失敗に由来する恐怖感から額に汗が滲み、伝ってくる。今度は目に入らないよう、まぶたを閉じて凌ぐ。


「そうです。そのままあと10秒」


 フェアが数え下ろしていく。


 かつてこれ程長い10秒を経験したことがあるだろうか? いやない。


「くう……っ!」

「イチ……ゼロ」


 数え終わるや、リーベは脱力してへたり込んだ。


「はあ……はあ…………」


 浮かぶに任せていた汗をようやく拭うとすっきりして、達成感に包まれた。


「お疲れ様です」


 水筒を渡される。


「ありがとうございます……ぷは! ふう……生き返る」

「ふふ。初日にしてここまで出来るとは。予想以上の成果です」

「ほ、本当ですか」


(ひょっとしてわたし、才能あるんじゃ……!)


 自尊心が満たされ、やる気が一層のものとなっていく。

 しかし間の悪いことに、ヴァールが「帰るぞー!」と言った。


「えー、もう帰るの?」

「逆にまだいるつもりか?」

「え?」


 彼は空を示した。見上げると夕焼け空が目に飛び込んできた。


「あ、もうこんな時間?」

「そうだ。そろそろ帰んねえと夜になっちまうぞ」


 納得しつつも、なんだか口惜しい気持ちでいっぱいだった。それを察してフェアが笑う。


「ふふ、気概は素晴らしいですが、目の前のことに囚われてはいけませんよ?」

「は、はい……気を付けます」


 粛々としているとフロイデがぼそりと言う。


「それに、心配してると思う……よ?」


 彼が言っているのは、彼女の両親のことだった。


(確かに、お父さん抜きで街の外に出るのはこれが初めてだ。きっと今頃、そわそわして家事も手に付かないでいるだろうな……)


「確かに……早く帰らないと」

「そういうこった。ほら、行くぞ」








 それからが大変だった。


 坂道は数百メートルに及び、じわじわとリーベの()()()()の体力を奪っていった。道半ばでへとへとになり、東門をくぐる頃にはげんなりとしていて、ヴァールの苦笑を買ってしまう。


「たく、こんくらいでへばってるようじゃ困るぜ?」

「ぜえ……ぜえ…………」


 答えようにも答えられない。情けない思いでいっぱいになる中、フェアは言う。


「体力とは活動する内に自然と身に付く物です。焦ることはありませんよ?」

「は、はひ……ふう……」


 肩で息をしていると、フロイデが妙に浮かれているのに気付いた。


「早く行こ……!」


(あれだけ剣を振り回していたのに、元気だな……)


「行くってどこへですか?」

「お店……!」


 彼の答えは要領を得ないもので、リーベが首を傾げているとフェアが言う。


「実は今晩、シェーンさんからお招きに預かっているんですよ」


 という事はつまり、今晩は賑やかな夕食になるということだ。


 そう思うとリーベは多少、元気が湧いてきた。


「そっか……! じゃあ、早く帰らないとですね」

「ああ。だがその前に俺らは武器を片付けてくるから、一旦ここで解散な」


 武装したまま食事をするわけにはいかないから、それも当然だった。


「わかった。それじゃ、お店で待ってるね」


 こうして彼女らは一時解散したのだった。

 



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