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冒険姫リーベ 〜食堂の看板娘だけど、みんなの希望になるために冒険者になることにしました〜  作者: 森丘どんぐり
第4章 新たな出会いと、さらなる冒険

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176 君の名は

 ぬいぐるみ屋を出ると、リーベは昼夜の食材の買いながら帰宅しようということになった。そうして大通りを目指す道中、示し合わせた訳ではないが、ヴァールが先頭でその次にフロイデ、リーベと続き、最後尾にはフェアつくという、いつもの隊列を形成していた。


 

 そんな中、リーベは職業病とはバカに出来ないものだと思うのだった。


 こうして大通りに差し掛かった時、左方からフロイデを呼ぶ声がした。


「あら、黒猫ちゃん!」


 響いてきたのは若干嗄れた女性の声だ。声の主が誰かは、一度冒険を共にしているリーベには間違えようもない。


「あ、ブリッツさん」

「やっほー」


気さくに挨拶をする彼女の両脇にはその妹であるフランメとラヴィーネの姿があった。不思議なことに、彼女らは皆、冒険の装いであったのだ。


「こんにちは」

「ご機嫌よう」


各々挨拶を口にした彼女らは、フロイデの腕の中にカティアがいるのに気付く。


 真っ先に反応したのはブリッツだった。


「もう黒猫ちゃんったら、猫を抱えて!」


 ずいと寄ってくるブリッツにフロイデは拒絶反応を起こしつつも、カティアを見せたい思いを抑えきれず、実に奇妙な反応を示していた。


「あれ? よく見たらぬいぐるみじゃない」

「う、うん……リーベちゃんが、買って、くれた……!」


 嬉しそうにカティアを見せつけながら彼は言う。


 そのあどけない仕草に微笑みを浮かべたブリッツだが、それはすぐさま、にやけ顔へと変わった。彼女は口角をつり上げるとイタズラっぽい視線をリーベに投げかける。


「贈り物で気を引こうだなんて、あなたも黒猫ちゃん狙いだったのね」

「ち、違いますよ!」

「ふふ、そんな照れなくても良いのよ?」

「照れてません!」


 ブリッツほど話していて疲れる人はいないとリーベが深いため息をつく中、ヴァールが彼女らに問い掛ける。


「お前ら、まさかもう次の冒険に出るつもりじゃねえだろうな?」

「そのつもりよ」


 彼女はあっさりと肯定した。

 彼女らはリーベと共にギガマンティス退治に行って、昨日帰ってきたばかりだ。リーベが疲労を感じているように、彼女らにもまた、疲労が蓄積している。その上で次の冒険へ出るなど、危険にもほどがある。


 リーベが心配を募らせていると、フェアが同じ思いを口にする。


「体力は気付かない内に消耗するものです。せめてあと1日は安息に当てるべきではないでしょうか?」

「フェア様のおっしゃる通りですわ。ですが、ジッとはしていられないのです」


 ラヴィーネの言葉にフランメがリーベに目を向けて続ける。


「この前のリーベちゃん、凄かった。だから私たちも負けてられない」


 そう言われてリーベは誇らしいやら気恥ずかしいやらでまごついてしまう。


「ふふ。そういうワケだから。んじゃ、行ってくるわ」

「お、お気を付けて」


 去り際、ブリッツはフロイデさんに向けて投げキッスをしていったが、カティアの前足によってハートがはたき落とされるのだった。






 買い物をしながら帰宅すると、リーベたちは各々の休日を過ごすことになった。


 ヴァールは例によって筋トレへ。フェアは衣服の修繕を。そしてフロイデはテーブルに座らせたカティアに対し、まるで宝石でも見るかのようなキラキラした視線を送っている。その様子にリーベは出資した身として、大変心地よい思いだった。


「ふふ、カティア。可愛いですか?」

「うん……!」


 頷くと彼は愛猫をひょいと抱き上げ、リーベに差し出してくる。


「すごい、もふもふ……!」


(フロイデさんがそこまで言うだなんて……)


 一体どれほどのモフリティがあるのか、気になって仕方ない。


 リーベはまるで赤ん坊を抱き上げるようにそっとカティアを受け取ったその時――


「――っ!」


 雲のように軽く、絹のような滑らかなその感触に、彼女は衝撃を受けた。


「……すごいもふもふだ…………!」

「むふーっ!」


 リーベの所感に彼は得意げに小鼻を膨らませる。


「なんだろう。アデライドにちょっと似てるかも」


 アデライド――ソキウスもカティアと同様に直毛で、系統としては同じだ。


 そんなことを考えていると、フロイデが羨ましそうな目をしていた。


「アデライドも、こんな感じ、なの?」

「あ……」


 アデライドはリーベにしかもふもふさせてくれなかったのだ。


「そ、そうですよ?」

「へえ、そうなんだ」

「ああ、カティア、ありがとうございました。すごいもふもふでしたよ」

「でしょ……!」


 彼はくぷぷと小さく笑いながら愛猫を受け取ると対面に座らせ、ジーッと見つめ始めた。


「ふふ。出資した甲斐がありましたね」


 フェアの一声にリーベは首肯する。


「はい!」

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