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冒険姫リーベ 〜食堂の看板娘だけど、みんなの希望になるために冒険者になることにしました〜  作者: 森丘どんぐり
第4章 新たな出会いと、さらなる冒険

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174 リーベ報酬金もらいすぎ問題

クランハウスに帰ると、4人はそれぞれ片付けに取り掛かった。


 そんな中、リーベは洗濯に取り掛かろうとしていたフェアに声を掛ける。


「あの、フェアさん」

「おや、なんでしょう」

「その……これなんですけど」


 リーベは今回の冒険で得た報酬金を手渡す。


「今回の依頼のものですか?」

「そうです。そうなんですけど……」

「拝見しますね……おや」


 短い声を上げると彼は(たしな)めるような目で彼女を見た。


「リーベさん。これは(いささ)か、頂きすぎではないのですか?」

「わ、わたしもそう言いました! でも、『人数じゃなくて働きで分けるべきだ』って言ってました」

「とは言いましても、遠慮するべきでしょう?」


 いつも優しい彼だが、この時ばかりは母親が叱るときのような威厳を放っている。

 そのお陰でリーベは項垂れてしまう。それでも尚、声を絞り出して事情を告げる。


「で、でも……受け取らないと襲うって」


 すると彼は目頭を押さえた。


「全く、ブリッツって人は……わかりました。ですが、これはあなたが1人で稼いで来たものです。ですので私が預かる訳には参りません」


 そう言って革袋を差しだされるが、リーベは受け取らなかった。


「わたしが持っていたら、きっと無駄遣いしちゃうと思うので、フェアさんに預かって貰っても良いですか?」


そう言うと人の良い彼は断れなかった。


「そういうことなら。私が責任を持って管理いたしましょう」

 

 フェアに報酬金を預けた後、リーベは2階に上がり、私室に入った。そこにはフロイデと、愛犬2人の姿があった。


「ダンク、ボニー、ただいま」

「…………」


 2人は心細かったようで、一様に押し黙り、リーベを見つめていた。彼女はそんな2人の様子が愛おしくて堪らないが、生憎と彼女は今、汗だくだった。抱きしめる訳にはいかない。


「ふふ、ごめんね。いま汗だくだから、また後でね?」


 微笑み掛けると、利口な2人は辛抱強く口を噤んだ。


 そんな様子を微笑ましく思っていると、横からの視線に気付く。


「フロイデさん? どうかしましたか?」

「……リーベちゃん、いつも犬に話しかけてる、よね? 返事って、ある、の?」


 彼に揶揄うつもりはなく、純粋な疑問を打つけたのだった。


「もちろんありますよ。確かにぬいぐるみは喋りませんが、心を通じてなら会話できるんですから!」


 熱弁すると彼は「へえ……」と、感心した様子を見せた。


「ちょっと検証してみましょうか。これからわたしは下に行くので、フロイデさんは何か、ダンクに話しかけてみてください。それからわたしが聞き出して見せますので」

「う、うん。わかった」


 ()くして検証は始まった。


 リーベは一階に下りて耳を塞いだ。そうして数十秒経った頃、フロイデが呼びに来る。


「終わった、よ?」

「よし。じゃあ確認してみましょう」


 そうしてダンクの前にやって来ると、リーベはしゃがみ、ダンクに目線を合わせる。


「ねえダンク。フロイデさんとどんなお話をしてたのかな?」


 くりくりの瞳を見据えて問い掛ける。するとリーベの脳裏にピキーンと稲妻が走る。


「ふむふむ……なるほど…………」

「わかるの?」

「ええ、わかりましたよ」


 ダンクを下ろすと、変わってフロイデさんの方を見る。


「『ぼくは魚が好き、ダンクは何が好き?』そう尋ねましたね?」


 すると彼は瞠目する。


「当たってる……!」


 彼の瞳は、まるで英雄譚を聞いている時のような純粋な煌めきを湛えており、リーベは甚だしく得意な気持ちにさせられた。


「す、すごい……!」

「ふふふ。わたしとダンクは十年来の友達ですから、これくらい当然ですよ。なんなら、フロイデさんが昨夜、何をしていたかも当てられますよ?」


 得々と言うと、彼はボッと赤くなり、あたふたと必死の様相を見せる。


「き、聞かないで……!」

「え?」


 何かあるのだろうかと訝しんで見るも、やはりダンクに聞いてみないことには始まらない。彼女が愛犬の方を見やると、彼は間に割って入って必死に訴える。


「そんなこと、聞いてもなにも、ない……! だから、聞かなくて、いい……!」


 肩を揺すりながら懇願されると、さすがに聞き出すのは(はばか)られた。


「……フロイデさんがそう言うなら……」


(まあ、プライバシーは大事だもんね?)


 リーベが納得していると、フロイデは大きなため息をついた。


 それから数秒の沈黙を経て、彼は表情を改める。 


「でもいいな、ぼくも友達、ほしい……!」

「そう言えばフロイデさんは前に白猫のぬいぐるみが欲しいって言ってましたけど、お目当ての子はいるんですか?」

「うん」

「あのお店の子ですか?」

「そう……! 白くて、もふもふで、左右で目の色が違う……!」

「オッドアイですか。素敵ですね!」


 彼はうんうんとしきりに頷く。


「そう言えばフロイデさんって、よく白猫と戯れてましたよね?」

「うん。白猫、だいすき……!」


 そう言い切る彼の姿はなんともあどけなく、微笑ましいものだった。


「ふふ! あ、いけない! 晩ご飯作らないと」


 和んでばかりもいられないと、リーベは身を翻すが、フロイデさんに呼び止められる。


「リーベちゃん」

「はい?」

「冒険から戻ってきたばかりで、疲れてない、の?」

「ええ。なんだか最近、体力が付いてきたみたいで」


 両腕で力こぶを作ってみせると彼は笑った。


「くぷぷそうなんだ、ね」


 彼は朝露のように煌めく黒い瞳にリーベを映すと微笑み「いつも、美味しいご飯、ありがと」と言ってくれた。その一言にリーベはとても報われた心地になった。


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