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冒険姫リーベ 〜食堂の看板娘だけど、みんなの希望に応えて冒険者になることにしました〜  作者: 森丘どんぐり
第4章 新たな出会いとさらなる冒険

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167 裂かれた依頼書

 冒険者としては珍しい女性4人組のクランがギルドに入ると視線を集めた。

 その中にはリーベの親友であるフィーリアのものも含まれていた。


「あ、リーベちゃ~ん!」


 いつも通り朗らかな彼女であったが、ブリッツの姿を認めると途端に表情を険しくし、頭頂の跳ね毛を逆立つ猫の尻尾のような形状に変化させる。


「またお兄ちゃんを()()()()しに来たんですね!」

「ははは! 違う違う。今日はこの子と冒険をするために来たのよ」

「え、リーベちゃんと? ヴァールさんたちはどうしたんですか?」


 彼女は不思議そうにリーベを見る。


「『他の連中と組むのも学びになるから~』って」

「へ~、そうなんですね~」


 フィーリアは哀れむような目を親友に向ける。


 それに受けてリーベは苦笑するより他になかった。

 そんなやり取りを経て掲示板へ向かうと、そこではすでにフランメとラヴィーネが依頼の選定に取り掛かっていた。


「フラン、ラヴィ。何か良さげな依頼はあったかしら?」


 すると2人はとある依頼書にバッと手を伸ばす。


「ラヴィちゃん。今回も私が先だったよ?」

「いいえ! わたくしの方がコンマ一秒早かったですわ!」


 そんな小競り合いを遠巻きに見せつけられたリーベはは呆れてブリッツに問う。


「あの、2人は何をしてるんですか?」

「あの子たちはいつも小さなことで争ってるのよ」

「へ、へえ……」


 どう反応したものかあぐねていると、ビリリッと紙の破ける音がした。振り向くとフランメとラヴィーネが睨み合っていた。


「ラヴィちゃんが離さないから」

「いいえ。フランが強情だったからですわ」


 些細なことでケンカを繰り広げる2人にリーベが『子供みたい』という感想を抱いてしまったのは致し方ないことだろう。






 2人の言い争いはそれから数分に渡って続いたが、いい加減待ちくたびれたブリッツによって収拾される。彼女は2つに破けた依頼書を受け取ると、勘合符(かんごうふ)の如く付き合わせる。


「ふうん。『ギガマンティスの討伐』ねえ。リーベちゃん。あなた、ギガマンティスと戦ったことは?」

「ありません」


 図鑑のキックホッパーの項にその名が記載されていた以上のことは何も知らなかった。


「そう。この魔物は腕に付いた鎌を剣みたいに振るってくるわ。あなたならどうにか対処できるでしょうけども、それなりに危険な相手よ? どう、行けそう?」


 今まで豪放(ごうほう)に振る舞ってきた彼女にしては意外な言葉だった。その為リーベは動揺させられたが、勇気を持って頷いた。


「そう。じゃあこの依頼にしましょうか」

「あ、待ってください!」


 リーベは依頼書の特記事項を指し示す。


「『外敵がいないにもかかわらず暴れるという症状が確認されている』ってありますけど、これはどういうことですか?」

「ああ、それね。ギガマンティスもカマキリだから、そういう相手がいるのよ。まあ、そっちはアタシたちで対応するから気にしないで」


 彼女の大らかな言葉にはヴァール同様に安心して頷けるだけの器量が感じられた。


「……わ、わかりました」


 そうして依頼を選定した一行は受付に立つフィーリアの元へ向かう。


「今度こそお兄ちゃんを()()()()しに来たんですね!」


 彼女は再び臨戦態勢を取るが、生憎と違った。


「ふふ。依頼の受注をしに来たのよ。はい、お願いね」

「むう……承ります」


 それからフィーリアは定められた通りの手続きをした。最後に友寄の笛を預けると彼女は冒険者を送り出す口上を述べる。


「手続きは以上となります。皆さんの無事の帰還をお待ちしております」


 口上とはいえその言葉には真心が感じられ、リーベの胸が温かくなるのだった。







 冒険者ギルドを出た一行少々の買い物を経てながら、リーベをクランハウスまで送り届けた。


「それじゃ、明日の朝迎えに行くから、寝坊しないでよね?」

「はい。明日はよろしくお願いします」


 そうして別れると彼女は武器や荷物を片付け、整理した後に夕食の支度に取り掛かる。

 そしてそれが完成したころ、彼女の本来の仲間たちが帰ってきた。


「ようリーベ。明日は何を倒しに行くんだ?」


 ヴァールが開口一番に問う。


「ギガマンティスだって」

「ギガマンティスだ? おいおい、それはちと早いんじゃねえか?」

「ヴァール。ブリッツが大丈夫と判断したのですから」


 フェアの言葉に彼は言葉を呑み込む。


「むう……」


 ヴァールはとにかくリーベが心配なのだ。


 彼が口先を尖らせる様子に愛情を感じていると、フロイデが心配して問い掛ける。


「リーベちゃんは大丈夫?」

「わたしは……そうですね。ちょっと不安ですけど、それでも、ブリッツさんの期待に応えたいです」

「……そうか」


 ヴァールの声が食堂に虚しく響き渡った。


「……リーベ。ちゃんと帰ってくるんだぞ?」


 その問い掛けにリーベは精一杯の勇気を籠めて頷いた。








そして夕食と入浴を終え、就寝時間を迎えた。


 リーベはベッドに腰掛け、愛犬であるダンクとボニーに事情を告げていた。


「明日からわたし、冒険に出なきゃ行けないんだ。2人だけで良い子に出来る?」

「…………」

「…………」


(2人は出来るって言っているけど、どうだろう。ダンクはつい最近まで、わたしのいないときに外出していたからな~)


「いい、ダンク? お外はとっても危ないんだから、わたしと一緒じゃない時は出ちゃダメだよ?」

「…………」


 彼は多少の不服を表しながらも、頷く。


「いい子いい子。わたしが帰ってきたら一緒にお散歩しようね」


 すると彼はご機嫌に尻尾を震わせた。


「ふふ。わたしは明日早いから、今日はお休みなさい」

「…………」

「…………」


 そうして彼女は英気を養うべく、眠りに就くのだった。


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