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冒険姫リーベ 英雄の娘はみんなの希望になるため冒険者活動をがんばります!  作者: 森丘どんぐり
第3章 新天地へ

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161 幸せな一日

 幸福な出来事はそれだけに留まらなかった。


 ボニーを連れての帰り道、クランハウスの前に郵便屋がいたのだ。

 彼は家主の帰宅を知ると歩み寄ってきて「エーアステさんにお手紙です」と中身がぎっしりと詰まった封筒を差し出してきた。リーベが真っ先に差出人を確認すると、そこには両親の名前が記されていた。


 食卓に着いてそれを開封すると、三つ折りにした便せんが2組出てきた。一方は整然たる筆跡で記されていて、もう一方は筆圧が濃く、そのせいで紙面が点字のようにポコポコと出張っていた。どちらから読むか迷ったが、右手に持っていた母の手紙から読んだ。


 2人の手紙は娘の無事を喜ぶところから始まり、テルドルでの出来事を経て、愛情を籠めた言葉で締められていた。それらがリーベに温もりと、僅かな郷愁(きょうしゅう)を抱かせた。しかし故郷に帰ることは出来ず、その代わりにとリーベは手紙を書きたい衝動に駆られた。


 二階に上がるとレターセットを引っ張りだし、ここ数日の出来事と、今日起こった素敵な出来事の数々を記していく。そうでもしなければ多幸感で胸が張り裂けてしまいそうだったから。


『お父さんとお母さんへ。


 今日、2人の手紙が届いたよ? それを読んでる時ね、わたし実家にいるみたいに温かい気持ちになれたの。だからありがと。2人とも忙しいだろうけど、また手紙をくれると嬉しいな。


 そうそう。いくつかご報告があります。


 まず、わたし、魔法剣士になりました。


 剣士じゃないよ? 魔法剣士だよ?


 おじさんたちが言うには私には才能があるからって。得意分野で戦った方が、例え前衛でも安全なんだって。


 実はもう、キックホッパーとは別に、実戦にも出たんだよ。


 王都の南東にあるヌクレール湿原にミストクラーケンが出たの。ガストロなんとかって魔物に東の方から連れてこられたみたいで。陸なのにイカがいるなんて不思議だよね?


 そうそう。おじさんがすごかったんだよ!


 ミストクラーケンを一瞬で昏倒させちゃって、それから長い脚を切り落としていったの。そうして弱ったところでわたしとフロイデさんが戦ったの。途中、フロイデさんが危なくなったけれども、わたしが斬撃を飛ばして助けたの。


 ほら、前にフロイデさんとの仲がこじれちゃったって言ったでしょ?


 この一件があったから仲直りできたんだ。お陰で今日は清々しい気持ちで過ごせているの。


――で。わたしが今日、1番伝えたいのはこれからだよ。


 実は、ダンクにガールフレンドが出来たの!


 クリーム色のトイプードルで、耳元に赤いリボンを飾ったオシャレな女の子なんだ。


 名前はボニーって言うの。女の子らしい素敵なお名前でしょ?


 ダンクったら、ボニーの前ではガチガチでね。それが面白可愛くて、2人に見せられないのが残念だよ。


 あ、いけない! 便せん、これが最後だったんだ!


 そういうわけだから、今日はここまでね?


 良い一日を。


 2人の娘、リーベより』







「……ふう」


 感情のままに、一息で手紙を書き切るとリーベは僅かな疲労と、大きな達成感を抱いた。


早くこの手紙を両親の元へ届けたいが、頻繁に手紙を投函しては出費もかさむわけで、彼女は口惜しい思いで手紙をしまった。


 その代わりにと、リーベはベッドの上で見つめ合っているダンクとボニーの下へ向かう。


「ふふ、どんなお話をしてたのかな?」

「…………」

「…………」


 どうやら早速、2人だけの秘密を作ったらしい。

 それは大変ほほえましいことであるが、飼い主である自分を抜きに話しが進むのはちょっぴり悲しかった。


「ねえねえ、教えてよ~」


 ベッドにうつ伏せになり、枕元に佇む2人を交互に見やる。しかし2人ともむっつりと口を閉ざしたまま、答えようとはしなかった。


「むう……いけず」


――と、その時、リーベはイタズラ心を起こす。


「ふふふ……そっちがその気なら、もふもふタイムで嫌でも暴露させて上げる!」


 するとダンクは恐怖に口を噤んだが、ボニーはなんとも知れない様子。


(今はそれでいいんだ。すぐにわからせて上げるからね!)


「行くよ? もふもふーっ!」


 狭い室内には2人の声なき悲鳴が響き渡るのだった。


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