159 幸せはすぐそこに
そうして報告を済ませた一行はホールに戻り、報酬金を受け取ることになった。
(お兄さんは弾むって言ってたけど、どのくらいなのかな?)
リーベがワクワクしていると、フィーリアが報酬金を持って来る。
「お待たせしました。報酬金のお支払いになります」
そうして差し出された金額は、さすがにカナバミほど高価ではなかったが、それでも十二分に高い金額だった。これだけあれば一月は遊んでいられるだろう。
「おお……!」
リーベとフロイデが揃って感嘆の声を上げる傍ら、ヴァールは領収書にサインする。
そうして彼の手に渡った報酬金は、そこからさらにフェアのもとへ。すると彼はリーベに微笑み掛ける。
「ふふ。これで明日にでもあの子を迎えに行けますね」
「はい!」
喜んで返事をするとフィーリアが不思議そうに首を傾げる。
「あれ? まだワンちゃんを買ってもらってないんですか?」
「あー、それは……」
リーベはフロイデさ盗み見た。
あの時は彼との確執のために、ぬいぐるみを買いに行く気にはなれなかったのだ。とは言え、本人の前で本当のことを言うわけにも行かず、リーベは返答に窮した。
するとフェアがフォローする。
「生活費との兼ね合いで見送ったのですよ」
「そうだったんですね――じゃあ今度こそ、楽しみですね?」
「うん!」
少女たちは笑みを交わした後、別れた。フィーリアは今も仕事の途中で、それの邪魔をするわけにはいかないからだ。
ともあれギルドを出たとき、リーベは買おうとしている犬がぬいぐるみだと言い損ねたことに気付く。しかしまあ、それは兄の方から知らされるだろうと気にしないことにした。
ギルドハウスに到着した一行はそれぞれ分担して家事を終えた。それから皆で食卓を囲い、夕食が終わると後は眠るだけとなった。
リーベは愛しのダンクを抱きしめると語りかける。
「ダンク。明日こそはあの子をお迎えに行くからね。ダンクもうんとおめかししようね?」
「…………」
ダンクは嬉しそうでありながらも、ガールフレンドが出来るとあって少し気恥ずかしそうだ。彼のそんな一面を見るのは初めてで、リーベはとても新鮮な気持ちにさせられた。
「ふふ、そんな緊張しなくていいんだよ。わたしも付いてるんだから」
「…………」
それでもダンクは気にしてしまう。その姿は何処となくフロイデに似ているように思えた――と、その時、当人から声を掛けられる。
「リーベちゃん」
「あ、ごめんなさい。うるさかったですか?」
問い掛けながら起き上がると、彼もまた起き上がった。それから「ううん」と否定し、本心を述べる。
「……ぼくが意地悪してたから、だからあの犬をお迎え、出来なかったんでしょ?」
「フロイデさん……」
リーベは彼が全てを察しているのに気付く。こうなっては隠し立てても仕方がない。
「そう、ですね。で、でも! もう過ぎたことなんで気にしないでください」
「リーベちゃん……うん。ごめんね」
彼はそう言うと苦しそうに毛布を被った。リーベは彼が純粋な人物であると知っているだけに胸が痛んだ。しかしなんと言葉を掛けた物か倦ね、口を噤んでしまう。
だが同時に思いつく。
明日、あのぬいぐるみを買った時に目一杯喜べば良いのだ。そうすれば彼も罪悪感をてばなせるだろう。
そう思い至った彼女は素晴らしい明日へ向け、眠りに就くのだった。
今日のダンクはクランハウスの狭い室内をうろうろと歩き回っており、まるで落ち着きがない。
『もう、ダンクってば。今からそんなに緊張しても仕方ないでしょ?』
『きゅうん……』
彼は短い尻尾を床にたたきつけながら不安を訴える。
『大丈夫だよ。ダンクはかっこいいから、あの子もきっと気に入ってくれるよ』
そう励ますも、彼は以前として落ち込んでいた。
『もう! 男の子ったら肝心なところでシャイなんだから!』
恋愛経験のない身でありながら偉そうに言うと、彼はそんなことない都でも言いたげに吠えた。それが男の意地であることをリーベは悟ると、愛犬が一層愛おしく思えてくる。
『ふふ、それでこそわたしのダンクだよ!』
そう呼び掛けるとダンクは得意そうにに目を煌めかせる。
『その調子で明日も頑張ろう!』
『きゃん!』
それから2人は挨拶の練習をしたり、コーディネートの練習をしたりと、充実した時間を過ごした。
明日からのこの素晴らしい時間にあの子が加わるのだと思うと、リーベはとても幸せな気分になれた。
『ふふ、明日は最高の1日にしようね?』
『きゃん!』




