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冒険姫リーベ 英雄の娘はみんなの希望になるため冒険者活動をがんばります!  作者: 森丘どんぐり
第3章 新天地へ

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158 調査報告

 いつもであれば体力作りの為に帰路は徒歩で行くところだったが、今回は調査任務に付き、早急に情報を持ち帰る為に馬車を利用することになった。


 王都に到着したのは昼から夕方に変わろうかという時刻だった。


「ふい~到着っと。んじゃ、さっさと報告を済ませちまうか」


 ヴァールの言葉にフェアが頷く。


「それが良いでしょう。リーベさんは大丈夫ですか? もしお疲れならフロイデと一緒に先に帰宅していただいても構いませんが」

「ありがとうございます。でも馬車で帰ってきたので、全然大丈夫ですよ?」

「そうですか。ふふ、リーベさんも体力が付いてきたようで」

「ああ。お前の頑張りの賜だな」


 2人に褒められると気恥ずかしくなってリーベは目線を逸らした。しかしその先にはフロイデがいて、彼は「体力、付いた」と褒めてきた。


「うう……そ、そんな褒めないでくださいよ~」


 リーベが言うと皆が笑った。


 そんな和やかな空気を心地よく思いつつ、彼女は仲間と共にギルド本部を目指した。






 ギルド本部に入って早々、リーベとフィーリアの目が合う。


 するとフィーリアは頭頂の跳ね毛をピーンと伸ばしながら反転し、事務所にいる兄へ呼び掛ける。


「お兄ちゃ~ん! リーベちゃんたちが帰ってきましたよ~!」


 リーベはその声に帰ってきたのだと実感しつつ、友達のいる受付へ向かう。

 するとフィーリアふわふわの長髪を(ひるがえ)しながら振り返り、笑みを浮かべる。


「リーベちゃん。それにフロイデくんたちも、お帰りなさい」

「ただいま、リアちゃん!」


 2人は手を取り合った。そうしてきゃっきゃと燥いでいると事務所からカルムがやって来る。


「あ、お兄ちゃん!」

「ここでその呼び方はしない」

「お兄ちゃんはお兄ちゃんなんですから」


 妹の言葉にカルムは頭を抱える。


「はあ……困ったものだね」


 彼は首筋を(いたわり)りながら冒険者たちを見やる。


「やあどうも、お疲れ様です。急なお願いであるにもかかわらず、どうもありがとうございます。皆さんご無事のようで、何よりです」

「そりゃどうも。たく、今回はちと危なかったぜ」

「その件について、少しお話を伺いたいのですが……」

「構わねえよ。つうか、お前の方が忙しいだろうに」

「はは……役柄というものがありますからね。さあ、こちらへどうぞ」


 言いながら彼は妹に茶を持ってくるように言いつけた。







 案内されたのは前回と同じ会議室だった。リーベたちは壁際に荷物を置くとそれぞれ腰掛け、対面に掛けるギルドの人間を見つめる。


「さて。今回の濃霧異変ですが、加工場より、ミストクラーケンの仕業だと伺っています。この事実に違いはありませんか?」


 彼ががペンを手に問いかけると、ヴァールが整然と答える。


「違わないな」

「そうですか。では、この魔物はガストロオワゾーによって連れ込まれたというのは?」

「それも違いねえ。ミストクラーケンが巣くってた洞窟の奥にヤツの死骸があった」

「ふむ……今回と同様に、ガストロオワゾーが他の地域から魔物を連れ込む事案はたびたびありますが、ヴァールさんから見てどうでしょう。ミストクラーケンは他の魔物と同様に環境の違いに適応出来ず、死滅するのでしょうか?」

「いいや。湿気が多くて、餌になるアルボルメデューサもいる。発見が遅れたら環境に根付いていただろうよ」


 冒険者の証言にカルムは相づちを打ちながらもサラサラと用紙に記入していった。


「今回問題となった個体はメスだと伺っていますが、卵を産み付けたりはしませんでしたか?」

「洞窟の奥にあったよ。もちろん潰してあるから安心してくれ」

「それは良かった」


 と、その時。ドアが開いてフィーリアが茶を持ってくる。


「失礼しま~す」


 妙に間延びした声で言うと面々にお茶を配り、自らは兄の隣に掛けようとする。


「自分の仕事に戻ってね」

「ぶー!」


 そうして妹が退室すると、カルムはペンを置き、茶をすする。


「ふう。皆さんが即応してくれたお陰で事なきを得ましたが、派遣するのがあと少し遅かったら、生態系が変わってしまっていたことでしょう。今回はどうも、ありがとうございました」

「いいさ。こき使われんのはいつものことだからな」

「はは、いつもお世話になっています」


 ところで、とリーベを見る。


「今回もリーベちゃんが戦ったんですか?」

「はい――ああでも、おじさんが弱らせてくれたのをわたしとフロイデさんと2人で倒したんです」


 隣でフロイデが「うんうん」と頷く。


「へえ……ミストクラーケンは第二級危険種に分類されるくらい手強いんだ。それに挑めるなんて、リーベちゃんもフロイデくんも、肝が据わってるね」

「むふーっ!」


 フロイデが得々と小鼻を膨らませると彼は笑った。リーベも釣られて笑ってしまう。


「ふふ、ありがとうございます。でもそっか。ミストクラーケンは二級の魔物なんですね」

「うん。人を襲うことに積極的で、環境に害を与える魔物だからね。その分、報酬金も弾むから期待しててね?」


 そう言うとカルムは何かを思い出したように短い声を上げる。


「そうだ。報酬と言えば、リーベちゃん。リアから犬を飼うって聞いたんだけど、クランハウスはペット禁止だよ?」

「え⁉ そうなんですか!」

「うん。ほら、冒険者って家を空けがちでしょ? その間、お世話が出来なくなるし、誰かに預けたとしても、そこで問題が起こったら責任問題になるからね」

「そ、そうなんだ……」


 リーベがショックを受けているとフェアがくすりと笑う。


「犬と言ってもぬいぐるみのことですので、どうぞご安心ください」

「あ、そうなんですか? 僕もリアも、てっきり本物の犬かと思ってましたよ」

「いいえ! ダンクもあの子も、本物のワンちゃんなんです!」


 必死に訴えるとフロイデが「ペット禁止」と言う。


「あ……うう~」


 彼女が困り果てると皆がは笑った。

 そんな和やかな空気の中、ヴァールの低い声はよく響いた。


「ふう、雑談も良いが、余り時間掛けてもいらんねえだろ」

「おっと、そうでした。それではまとめに移らせていただきますね」


 彼は茶で口内を潤すと再びペンを取った。


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