151 恐怖に抗える理由
作者都合で数日更新できず申し訳ありません。
今日から連載を再開していきますので、引き続きご愛読いただけますと幸いです。
夕食や入浴などの日課を終えたリーベは、明日の冒険に備えて休む必要に迫られた。だからダンクとお話しする時間もほどほどに早々に目を瞑る。
しかし胸がモヤモヤしていることに加え、ダンクが構って欲しそうにしていたため彼女は結局、話し始めた。
「もお、仕方ないな。ちょっとだけだよ?」
リーベがそう口にするとダンクは嬉しそうに目を煌めかせる。
「ふふ、ダンクは甘えん坊さんだね?」
「…………」
背中を撫でると彼は嬉しそうに身を震わせる。そんな愛犬を愛おしく思いながらも、リーベは言葉を続ける。
「あのね、南東にある湿原で、1日中霧が濛々と立ちこめてるんだって。不思議でしょう?」
「…………」
「わたしたちは明日、それの原因を調べに行くの。ダンクだってお家が霧まみれだったら嫌でしょう?」
「…………」
彼は霧の中の我が身を想像し、湿気によりモフリティが低下するのを悟り、ぶるりと震える。
「そうでしょう? わたしたちは明日、そんな霧を出す魔物を倒しに行くんだよ?」
すると彼は単純な恐怖にぶるりと震わせる。
「ふふ。まあダンクはお家にいるんだから心配はいらないよ? だけどわたしは明日、その霧を出す魔物のところに行かなきゃならないの。だからダンクには無事を祈ってて欲しいんだ。お願いできる?」
「…………」
彼が頷くのを見ると、リーベは安心できた――とその時、フロイデの声が響く。
「まだ、起きてる?」
「あ、すみません。起こしちゃいましたか?」
「うん」
「ああ、ごめんなさい。もう寝ますから」
彼にそう言うと、リーベは小声でダンクに呼びかける。
「そう言うことだから、また今度ね?」
「…………」
残念そうにするが、彼は道理のわかる子だ。
だからダンクはさておき、フロイデの眠りを妨げてしまったことを気にする。
せめてこれ以上彼の眠気を妨げないようにと口を噤んでいると、彼の方から話しかけてきた。
「ねえ、リーベちゃん」
「ん? なんですか?」
少々驚きながらも答える。
「リーベちゃんは怖くないの?」
「?」
彼の意図が読めず沈黙していると、彼は続ける。
「次から本当に剣士として、戦うんだ、よ?」
「あ、ああ……そうですね」
キックホッパーとの戦いは謂わばお試しだった。しかし、これからは1人の剣士――魔法剣士として戦場に立つのだ。前衛なのだから当然危険だし、1つのミスが命に直結する。それを思えば恐れずにはいられない。
「……もちろん怖いです。でも、わたし1人の戦いじゃありませんから。いざとなればおじさんにフェアさんが護ってくれますから。それに――」
「才能がある、から?」
「……フロイデさん…………」
「……おやすみ」
彼は逃げるように寝返りを打った。
その言葉は妬心の発露であり、それによってリーベの胸には悲しい気持ちと僅かな憤りとが生ずる。
だが彼とて悪気はないのだ。
そう理解しているが故に余計にモヤモヤする。
「…………」
リーベは10を数えて心を宥めると、「おやすみなさい」と返してまぶたを下ろした。




