表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
冒険姫リーベ 英雄の娘はみんなの希望になるため冒険者活動をがんばります!  作者: 森丘どんぐり
第3章 新天地へ

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

140/151

139 キックホッパーのもとへ

 太陽が南中するにはもう少し時間が掛かるかという頃。一行はアリアン村にたどり着いた。


 村の周囲には去年の秋に植えた麦が青々と育っており、温かな風が吹くと爽やかな香りが村を満たす。  

 そんな清々しい心地とは対照的に、村人たちの顔には不安の色が浮かんでいた。


「みんな暗い顔して、どうしたんだろう」

「キックホッパーに悩まされてんだろうよ」


 そう答えながら、ヴァールは目的の建物へまっすぐと進んでいた。その後ろに仲間たちが続く。


 そうしてたどり着いたのは質朴(しつぼく)とした雰囲気の建物だ。


 この建物が何かと聞かずとも、リーベはこれが村長宅だと経験から悟っていた。


 ヴァールがその大きな拳でドアを叩くと、中から「はいはい」と老女特有の間延びした淑やかな声が響いてくる。それからしばしの間を置いてドアが開き、腰の曲がった老婆が現れる。小柄な彼女は腰をいたわりながらも遙か高い位置にあるヴァールの顔を仰ぎ見る。


「おや、冒険者さんですか?」

「ああ。キックホッパーが出たって聞いてな。詳しいことを聞かせて欲しいんだが、大丈夫か?」

「ええ、良いですとも。ささ、どうぞ上がってくださいませ」


 そう言うと村長は一行を招き入れ、席に着かせた。


「今お茶を用意しますね?」

「いや、すぐ出るから大丈夫だ」

「どうぞ、お構いなく」


 フェアが言い添えると、「そうですか」と残念そうな声色で言い、自身も席に着いた。


「ふう……いやはや、年は取りたくないものだねえ」

「おばあちゃん、まだまだ、元気」


 フロイデが気を利かせると、彼女は柔和に微笑んだ。


「ええ。私ゃ、健康だけが取り柄だからね」


 2人が笑みを交わしていると和やかな空気が流れたが、ヴァールの声が引き締める。


「それでだ。キックホッパーが目撃された時期と場所を知りてえんだが?」

「おっと、そうでしたね。あれは3日前、村の若いのが隣町に小麦を売りにいった帰りのことです。ここから北東に、馬車で2時間も掛からないところに大きな沼があるんですがね、その(ほとり)に大きなバッタを見たって言うんです」

「ふむふむ……」


 リーベは村長の言葉を一言一句漏らさず、心のメモに書き留めていく。


「私ゃそれが温厚な魔物ってのは知ってるんですが、何でもアレは小麦も食うそうで。もしかしたらこっちへ来て、もうすぐ収穫できる小麦を食い尽くされちゃうんじゃないかって、気が気でなくってね。それで皆さんに来てもらった訳です」

「なるほどな……」

「確かに、キックホッパーが小麦畑を荒らしたと言う例は多数報告されてますからね」

「それにアイツはキレると結構暴れるからな。敷地に入られたらどうしようもねえし、先に駆除しちまうのは懸命な判断だろうよ」

「ありがとうございます。それで、早速駆除に掛かっていただけるのでしょうか?」

「もちろんだ」


 そう言うとヴァールは立ち上がる。


「んじゃ、日が暮れちまう前に(やっこ)さんを始末しに行くか」


 すると村長を除く皆の視線がリーベに集まる。


「できる?」


 フロイデが心配する。


(……たしかに、わたしに倒せるか不安だけど……でも、わたしはこれまで何度も強敵と戦ってきたんだ。だからきっと、キックホッパーにも勝てる!)


 リーベは自分の胸に言い聞かせると、3人の目を見て(しか)と頷いて見せた。


「よし、行くか」

「うん……!」






 アリアン村を出て2時間ほどが経過した。


「ほっほっ……!」


 リーベは規則的な呼吸を心掛けることで疲労を緩和していたが、それでも募るものはある。それは今や山のように堆積し、彼女の肺と心臓を押しつぶさんばかりに圧していた。


「ち、ちょっと休ませて……」


 先頭を歩くヴァールに訴えると、隊列は前進を止めた。


「もうそろそろ接敵するだろうし、ここで1つ休むか」


 その言葉に心底ホッとしつつ、リーベは腰を下ろした――いや、落とした。


「はあ……」


 脚の疲れが地面に溶け出すかのような心地にため息が零れる。


 彼女がへばる一方、他の面々は水分補給をしたり、軽いストレッチをしたりしてて、まさに小休止と言った様子であった。


「……わたしもおじさんたちみたいに体力があれば良いんだけどね」

「俺たちは何年も鍛えてるからな。むしろお前は冒険者になったばかりで、しかも女だ。それを(かんが)みりゃ、よくやってる方だよ」

「そう、かな……?」


 照れくさくなって頬を掻くとフェアが小さく笑って言う。


「そうですよ。リーベさんはもう少し、ご自分を信頼すべきです」

「フェアさん……」

「リーベちゃんは頑張ってる、よ……?」

「フロイデさん……」


 面々が微笑むのを見ると、リーベの胸は温かい思いがこみ上げてくる。


(……みんなの優しさに答えられるよう、もっと頑張ろう!)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ