表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
冒険姫リーベ 英雄の娘はみんなの希望になるため冒険者活動をがんばります!  作者: 森丘どんぐり
第3章 新天地へ

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

131/142

130 ゲテモノフード押しつけてくる系男子

 あるときダンクが山のように大きくなった。


 昨夜まで飼い主であるリーベの腕の中に収まるサイズであったのだが。一体全体、なにがあったのかリーベは不思議に思ったが、それはさておき、大きくなったダンクと遊ぶことにした。


 ソキウスの騎手であるスヴェンが相棒であるアデライドの背中に乗っていたように、リーベはダンクの背に乗り、もふもふのアプリコットの長毛を手綱のように握りしめ、呼びかける。


『いいよ~』

『き゛や゛ん゛』


 重低音の利いた鳴き声と共にダンクは走り出す。

 リーベは上下に激しく振られるのを堪えながらも、前方の景色を見やる。


『わあっ! 速い速い!』

『き゛や゛ん ゛き゛や゛~~~ん゛』


 ズシンズシンと大地を踏みしめながら、ダンクは南方にあるテルドルを目指して駆け続けた。そして今や懐かしいラルバの町に差し掛かった、その時だった。


「――ベちゃん……!」


『ん? ダンク、今何か聞こえなかった?』

『く゛う゛ん゛?』


「――きろ!」


『ほらまた! ほんと、何だろう』


 リーベが呟いた時だった。


「起きろ!」


 その声が響いた途端、彼女はバランスを崩し、落馬ならぬ落犬(らくけん)してしまった――


「うわああああっ⁉」


 ガバリと身を起こすと、そこにはヴァールとフロイデがいて、彼らは鬼気迫る様相でリーベの名前を呼び続けている。


「な、なに⁉」


大いに動揺するも、ヴァールは叫ぶ。


「早く起きろ! そんで朝飯つくってくれ!」

「あ、朝ごはん? そんなにお腹空いてるの?」

「違う……!」


 今度はフロイデ。


「このままじゃ……このままじゃ――」


 言い掛けた時、開け放たれたドアからは恐ろしく青い臭気が漂ってきて一同は咄嗟に鼻を摘まんだ。


「うっ! はひほほひほひ……(何この臭い……)」

「ひはっは!(しまった!)」

「へははほふひ、はひへは……(フェアが料理、始めた……)」

「はははははひほふ……(鼻が曲がりそう……)」


 リーベはフェアの腕前に恐怖を覚えつつも、ヴァールたちと共に、着替えもせずに1階に下りていった。悪臭の発生源へ近づくにつれて臭いは強くなっていき、ついには鼻を摘まんでも耐えられない領域に突入する。


「うう……!」


 リーベが呻くと調理中だったフェアが気付く。


「おや、お目覚めですか?」


 そう言って振り返ったとても良い笑顔だった。

 しかし今のリーベにはそれが、毒薬を調合する魔女の(わら)いに思えてならなかった。


「もうすぐ出来ますので、身支度を調えてきてください」

「……はひ」


 リーベはとにかくこの場から逃れたい一心でそう答えてしまった。そんな彼女の言葉にヴァールとフロイデが酷く落胆したのは言うまでもない。






 食卓の上にはパンと牛乳の他に緑色のスープが置かれていた。それは藻の繁殖した水面のようであり、臭いに至ってはそのものだった。


「さ、皆さんどうぞ、お食べください」

「…………」


 リーベはヴァールとフロイデを順繰りに見た。


 2人とも目は死んでいて、抵抗する気がない様子。それは行動にも表れていて、2人は黙々とスープを(すく)い、飲み込む。その動作を淡々と繰り返している。


「あ……」

「リーベさん? どこか具合でも?」


 フェアはせっかくのパンを藻スープに浸しながら言う。


「い、いえ……」


 逃れられないと悟った彼女はスープに向き直り、覚悟を決めた。


(ええい、ままよ!)


「すす――ぬうっ⁉」


 どうにか喉に流し込んだ瞬間、激しく()せてしまう。


「ゲホゲホ……フェ、フェアさん! これ、何のスープなんですか!」

「マジカルリーフのスープですよ?」

「ま、マジカルリーフ⁉」 


 彼が平然と口にした名前にリーベは恐怖した。


 マジカルリーフとは、魔力回復の効能を持つ植物だが、その用途は決まって薬で……つまり、食材ではないのだ。それをフェアはほうれん草やグリンピースの代わりに使っている。

 この異常さを例えるならば、軟膏(なんこう)をジャムの代わりとしているようなものだ。


「ふぇ、フェアさん……」

「なんでしょう?」

「マジカルリーフは……」


 言い掛けたが、彼の純粋な瞳を前に、根本的なダメだしをするのは(はばか)られた。


「……こ、個性的な味わい、ですね」


 お世辞で諷諫(ふうかん)するも、彼は言葉通りに受け取ってしまう。


「そうでしょう。この鼻を抜ける爽やかさな香りは他の食材では出せませんからね」

「…………」


そう。彼は本気で美味しいと思っているのだ。


(フェアさんがこんなに味音痴だったなんて……)


 出会って10年ほどが経過するが、なぜ知る機会がなかったのだろうかと不思議に思うと同時に、リーベは自分の役割の重大さを痛感した。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ