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冒険姫リーベ 英雄の娘はみんなの希望になるため冒険者活動をがんばります!  作者: 森丘どんぐり
第3章 新天地へ

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124 旅の終わり、冒険の始まり

 馬車が丘を下るにつれ花園のような赤い屋根たちは見えなくなっていった。代わりに王都を護る隔壁が存在感を放つようになる。それは王都に近づいている証であり、リーベは興奮を通り越し、緊張さえしていた。


「うう……なんか緊張してきました」

「大丈夫? 引き返そうか?」


 御者さんはいたずらな笑みを浮かべた。


「そんな、引き返さないでください!」

「ははは! どうしよっかな?」


 言いながらも彼は馬を急かした。すると当然景色はより早く流れていき、王城が隔壁の陰に隠される。それは残念な事だったが、とある事に気付いた。


「あれ? なんか壁、高くないですか?」


(30メートルくらいかな?)


「王都はこの国の要衝ですからね。その分、テルドルの壁より高く造られてるんですよ」

「へえ」


 フェアの言葉に感心しているとフロイデがとんでもないことを言う。


「壁の中には大きな人が埋まってる」

「え⁉」


 驚きの真実に肩を跳ね上げると、ヴァールが不思議そうな顔をしているのに気付く。


「単なるジョークだが、知らなかったんか?」

「う、うん……」


 彼女らは知らないでいたが、これは王都でしか聞かれないジョークなのだ。


「て言うことは、巨人はいないの?」

「いて堪るか」


 ヴァールが言い捨てる傍ら、フロイデがしてやったりと鼻を膨らませていた。


「なんだ嘘か……よかった」


 ホッと一息ついていると、御者が警告する。


「もうすぐ停まるから気をつけてね?」

「あ、はい」


 答えつつ視線を戻すと、壁が、門が、すぐそこまで迫っていた。


 門は開け放たれていて、頭上で大きなアーチを描いている。壁の重厚さ故にアーチの頂点には深い陰が落とされている。お陰で見上げるリーベはドラゴンが大口を開けているように錯覚した。

「おっきい……」


 感嘆してると、車が止まった。


「おっとっと!」


 足で踏ん張って慣性を凌ぐと、番兵がやって来る。


「身分証を拝見します」


 その言葉にリーベたちは冒険者カードを、御者は御者のライセンスを提示する。


「ふむ、問題ないようですね。どうぞ、お通りください」


(テルドルはここまでしっかりしていなかったような……)


 ともあれ。彼女らは入場した。


「うわあ……!」 


リーベは視界を埋める華々しい光景に声を上げずにはいられなかった。


 南門を抜けた正面には幅広い大通りがあり、その果てには高台と、その上に佇む城郭(じょうかく)があった。それは町を護る灰色の外郭とは異なる白色であり、昼下りの柔らかな陽光を受けて慈愛深く輝いていた。


 顔を左右に振れば白塗りの木組みの家が連なり、それぞれ立派な赤い屋根を被っていた。故郷テルドルは石造りの建物が一般だっただけに、リーベはまるで異世界にやって来た気分だった。


「はあ……」


 その綺麗な街並みにため息をついている間にも馬車は街中を進んでいって、気がついた時には丸い広場にいた。


「ここでいい」


 ヴァールの指示を受け馬車が停車する。


「それじゃ、お別れだね。お嬢ちゃん。王都を満喫していってね」


 御者がにこやかに言う。


「はい! どうも、ありがとうございました」


 御者台から下りるとヴァールからリュックを受け取る(トランクは彼が持ってくれた)。


「ん~……! はあ~これが王都の空気か~」


 旅に疲れた体には沁みる。


「空気なんてどこも変わんねえだろ?」

「変わるよ!」

「どこがだ?」

「どこがって……ええと、と、とにかく違うの!」


 そう答えるとヴァールは短く笑い、「んじゃ行くぞ」と背を向け、歩き出した。


「ギルドに行くの?」

「いいや。その前にまずクランハウスへ行く」


 クランというのは冒険者のチームのことで、彼女ら4人がそれだ。そして冒険者ギルドがクランごとに安価で貸し出している物件がクランハウスなのである。


「クランハウスか……」


 どんなところかなと想像を巡らせていると、フェアが独りごちるように言う。


「長いこと留守にしてましたし、まずは掃除をしないといけませんね」

「掃除、めんどう」


 フロイデの言葉にヴァールが頷く。


「ほんとだよな。てか、ホコリってどっから湧いてくんだよ。あんなのあって喜ぶヤツいんのか?」

「掃除好きなロイドさんなら」


 リーベが言うとみんな笑った。


「はは、いたわ!」


 そんな他愛もないやりとりをしながらも、リーベは辺りを見回していた。


 大通りには馬車が何台も行き交っており、その荷台には決まって大量の物品が積まれている。テルドルも通商が盛んに行われているが、これほどではない。その事実にリーベはこの街こそが首都であると言う事実をまざまざと見せつけられた。


「はええ――」

「安いよ安いよ!」


 リーベが零した感嘆の声は、しきりに行われる客引きの声によってかき消された。


 街が持つ熱量がテルドルのそれとは比にならないレベルであり、彼女は感心を通り越して半ば呆然としていた。


 時折足を止めながらも一行は南東の隔壁沿いの通りにやって来ていた。


「ここは?」

「ここらはクランハウス街って呼ばれてるな」

「へえ、て言うことは、ここら辺にある建物、全部クランハウスなの?」

「全部とは言いませんが、概ねそうですね」


 フェアが教えてくれた。


「壁沿いは日当たりが悪いので地価が安いんですよ。ですのでギルドはここらの家を買い取って、安価で冒険者へと貸し出しているという訳です」

「なるほど……」


 よく見ると行き交う人々は決まって無骨な体格をしていた。この薄暗い通りに逞しい男たちが屯している様は、何処となく恐ろしい物であり、リーベは息を呑んだ。


 そんな感想を見抜いたフロイデがボソリと言う。


「『路地裏』とも呼ばれてる」

「路地裏……」


 言い得て妙だ。


「ははは……」


 苦笑しているとヴァールが伸びをしながら言う。


「説明もこの辺にして、さっさと帰ろうぜ」

「そうですね」

「早くご飯、食べたい……!」


 口々に言うと一行は再び歩き出した。リーベはその後ろを着いていきながらも、クランハウス街を見回し、頭の中に地図を描きこんでいった。


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