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冒険姫リーベ 英雄の娘はみんなの希望になるため冒険者活動をがんばります!  作者: 森丘どんぐり
第3章 新天地へ

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123 王都へ

 旅はまだまだ続く。


 宿場町セルランを後にした一行はアミバの村で一泊し、そしてついに王都をへ至ろうかと言うところまでやって来た。


 道中、リーベは暇な時間を無駄にするまいと瞑想に励んでいたが、結局は眠気に負けてしまい、集中の局地へ踏み込むことはできなかった。


「ふう……ちょっと休憩」

「なんだ、もう終わりか?」


 ヴァールが問うてくる。


「うん……どうしても眠くなっちゃって……ふぁああ」

「ほおん。俺にはわからねえことだから何も言えねえけど、まあ無理しねえ程度に頑張れよ」

「うん、ありがと」


 そんなやり取りを交わしつつ休憩に入ると、リーベは御者の肩越しに前方の景色を見た。今は森の中を進んでいて、街道を挟んで木々が生い茂っている。これらはもう見飽きた景色だったため、少し先で森が途切れていることに嬉しくなった。


「ねえ、王都まであとどれくらい?」


 問い掛けるとヴァールは前方の景色に目をやりながら答えてくれる。


「そうだな……あと2時間くらいか?」

「2時間? もうそんな近くまで来たの?」

「ああ。この先が丘になってんだが、それを超えたら王都が見えるだろうよ」

「ほんと!」


 リーベは慌てて前方を見やるも、景色は相変わらずだった。


「ふふ、少し早かったですね」


 フェアが言うとフロイデが笑う。


「くぷぷ……子供みたい」


(フロイデさんにだけは言われたくない!)


 喉まで出掛けた言葉を飲み込むと、御者が笑いながら言う。


「ははは! お嬢ちゃんには悪いが、この先で馬に水を飲ませてやりたいんですが」


 それに答えたのは一行のリーダーであるヴァールだった。


「ああ、構わねえぞ」

「ありがとうございます。すぐそこに川があるので、そこで一端停車しますね」


 そうして馬車が停まったとき、乗客も休憩に入った。


 何もしていないように思われるが、座ってるだけでも体は疲れるのである。だから各々体を伸ばしたり、軽い運動をしたりとして過ごしていた。


 そして馬車馬が水を飲み終えたとき、乗客たちは再びの搭乗を求められた。しかしリーベは荷台に乗り込もうとしなかった。


「あの、わたしも御者台に乗せてもらっていいですか」

「いいよ」


 突然の頼みにもかかわらず、御者は2つ返事で快諾し、尻をずらした。そしてリーベがダンクを抱いているのに気付くと、預かってくれた。リーベは彼の厚意を受けながらステップに足を掛け、御者台に上がった。


「よっと! ふう、どうもありがとうございます」

「いいよいいよ。お嬢ちゃんは王都は初めてなのかい?」


ダンクを返しながら問うてくる。


「はい!」

「はは、そうかい! それじゃ、お嬢ちゃんのためにも、早く出ないとね」


 そう言うと御者は手綱を振るい、馬車を進めさせた。


 御者台は荷車の座席よりも高い位置にあるため、発進時はあちらより多少不安定だった。足と腹に力を込めてこれを凌ぐと、リーベは広い視界を埋める緑と青の美しさと、風の暖かさに清々しい気持ちになった。


「わあ……御者台っていいですね」

「そうかい?」

「だってこんなに眺めがいいんですもん」

「はは、たしかにね! でも雨なんかが降ったら最悪だよ? ここは屋根なんてないからね」

「あ、確かに……良いことばかりじゃないんですね」

「そうだね。まあでも、今日みたいに心地良い時の方が多いんだけどね」


 そんな他愛もない話をしている内に例の丘の近くまでやって来た。


 こんもりと盛り上がった緑の中を雲1つない青空へ向け砂色の街道が延びている。リーベは坂道に差し掛かると、胸が(はや)るのを感じずにはいられなかった。


(ドキドキ、わくわく……!)


 その時を待ちわびる彼女を焦らすかのように坂道は馬車の速度を遅くした。それを歯痒く思いつつも、着実に登坂していくのを辛抱強く待っていた。


 すると体に感じる斜度が少しずつ浅くなっていく。頂上はすぐそこだ。


「わあ……!」


 王城と思しき壮麗な建物が視界に飛び込んで来たかと思えば、城下に赤い屋根の建物が密集していて、それが左端から右端まで、リーベの視界を埋めんばかり広がっている。その様はまるで花園のようだ。


(これが王都……これがわたしの新しい居場所…………!)


「綺麗……」


 うっとりとため息をつくと、荷台の方からヴァールが笑い掛ける。


「はは! 遠目に見てこれなら、街中に行ったら気絶しちまうんじゃねえか?」


 彼は冗談のつもりで言ったのだが、彼女の胸のときめき様からして、その可能性も十分にあり得た。


 リーベはダンクをギュッと抱きしめ、さらなる感動へ備えるのだった。

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