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冒険姫リーベ 英雄の娘はみんなの希望になるため冒険者活動をがんばります!  作者: 森丘どんぐり
第3章 新天地へ

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118 ラルバの町

 太陽が西に消えようという時、冒険者一行はラルバの町にたどり着いた。


「へえ、これがラルバの町かー」


 平原のただ中にあるこの町は木造の建物が多く、石造りの建築が特徴のテルドルと違って温かみのある街並みだった(あくまで外観上の話だ)。それに形容しがたいが、匂いや雰囲気もテルドルのものと違っており、感じ取れる物全てがリーベには新鮮なものだった。


 ダンク共々、初めて訪れた町に感動し、繁々(しげしげ)と辺りを見回しているとヴァールが促す。


「リーベ、ボーッと突っ立ってねえで行くぞ」

「あ、うん」


 こうして一行は歩き出した。


「これから宿屋にいくの?」

「他に何があるんだ?」


 ヴァールが小さく笑うとフェアが続く。


「町に訪れた時、まずやるべきは拠点の確保です。荷物を抱えたままでは食事もままならないですからね」

「あ、そっか……」


 納得していると、フロイデがぼそりと尋ねる。


「前と同じところ、行くの?」

「はい。空きがあれば良いのですが――と、着きましたね」


 リーベの眼前には木造二階建ての建物が現れた。入り口であるドアの上には、宿屋を表すベッドのシンボルを描かれた看板が吊り下げられていた。


「ここか……」


(そういえば、ちゃんとした宿屋に泊まるのはこれが初めてだっけ)


 宿屋が一体どうなってるか気にしながら看板を見上げていると、ヴァールがドアを開けて屋内に潜り込んでいった。その大きな背中を追いかけると、そこは受付だった。


「あらいらっしゃい」


 女将である初老の女性が穏やかに言う。


「宿泊ですか?」

「ああ。4人飯付きで頼む」


 宿泊だけでなく食事も出来るという事にリーベは感心していると、彼らの財政担当であるフェアが会計を済ませて、代わりに鍵を1つ受け取った。その様子にリーベは、どうやら今回は1部屋に4人で泊まるらしいと悟る。


「お部屋は隣の階段を上った先にあります。あと、すぐにお食事の用意が出来ますので、荷物を置いたら下りていらしてください」

「はいよ。世話になるぜ」

「お世話になります」


 ヴァールの挨拶にフェア共々続くとフロイデさんが「な、なります……」と合わせた。


「ふふ、大したおもてなしは出来ませんが、ごゆっくりしていってくださいね」


 女将の穏やかな眼差しに見送られ、一行は階段を上がっていった。


 体の大きいヴァールが一段踏むたびに階段が悲鳴を上げるかのように激しく軋み、踏み抜いてしまわないかとリーベは心配させられた。幸いなことにそんな事態に陥ることなく、無事に2階にたどり着いた。

 それから客室に入ると、そこは狭い空間にベッド4台を並べて置いてただけの簡素な部屋だった。


「んじゃ、とっとと荷物置いて、飯食いに行くぞ」


 そう言いながらヴァールは1番奥のベッドを目指した。フェアに促され、リーベはその手前のベッドへ向かった。真っ白なシーツの敷かれた清潔なベッドにダンクを座らせると、ベッド脇に荷物とソードロッドを置き、部屋を出る。


「ダンクはお留守番ね?」

「…………」


 ダンクの不服そうな姿に後ろ髪を引かれつつ、リーベは下の食堂を目指す。


 受付の左隣の部屋が食堂になっていて、四角いテーブルが2台置かれていた。そのうちの一台に女将が料理を配膳していて、温かな匂いが入り口にまで届いていた。


「良い匂い……」


 思わず呟くと、女将が一向に気付くを見た。


「あら。ちょうど今用意が出来たところです。さ、どうぞお食べください」


 促されるまま、4人は席に着いた。食卓には四人分の食事が置かれていて、その内容は丸パンが1つに、腸詰めが1本、それに野菜スープが付いてた。リーベにはちょうど良い量であるが、男性陣には少ないように彼女は思った。しかしそれを口にする訳にはいかず、彼女は気にしないことにした。


「いただきます」


 まず手をつけたのは野菜スープだ。根菜が多めのポトフのようなもので、野菜から出た甘みと微かな塩気が合わさり、とても優しい味だった。


「ふう、美味しい。あ、そう言えばわたし、外食するのは初めてかも」


 そう口にすると、対面でパンをちぎっていたフロイデが不思議そうな顔をした。


「そう、なの?」

「はい。覚えてる限りだと」

「家が食堂だもんな」


ヴァールが言うとフェアがくすりと笑う。


「ふふ、毎日外食してるようなものですね」

「はは、確かに!」


初めての外食は愉快で、ちょっぴり不思議な体験だった。







 夕食の後、入浴を終えて宿に戻ってきた。


 火照る体は眠気を催し始め、思考にもやがかかっていく。そんな状態ながら、どうにか寝床に帰り着くと、リーベは留守番をしていたダンクを抱きしめた。


「ただいま~」

「…………」


ダンクは先に眠っていた。


 リーベも早く眠って、ダンクの待つ夢の世界へ行かねばと考えつつ毛布を被ると、愛犬の大きな頭に鼻を埋めた。ダンクの体にはテルドルの匂いが染みついており、その僅かな匂いが彼女の郷愁を駆り立てた。


「…………」


(お父さんたち、今頃寂しがってるだろうな……)


 そんなことを考えていると、突如、左から大きな手が伸びてきて、固い指先が彼女の頬をくすぐった。


「おじさん?」

「こうしてやんねえと眠れねえんだろ?」

「あーそういえば……ありがと。でも今日はダンクがいるから大丈夫だよ?」

「……そうか」


 ヴァールは残念そうに呟くと手を引っ込めた。


「おじさんが手を繋ぎたいなら良いよ?」

「ぬかせ!」


 短い言葉を最後に彼が沈黙すると、リーベ背後でフェアがくすりと笑う。そのさらに後ろからはくーくーと愛らしい寝息が響いていた。


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