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冒険姫リーベ 英雄の娘はみんなの希望になるため冒険者活動をがんばります!  作者: 森丘どんぐり
第2章 旅立ちの時

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100 また会えるから

 4人が料理を平らげたころには客足もまばらになり、店内には空席が目立ってきた。ピークタイムを終えた食堂は、こうして閉店時刻まで緩やかに時が過ぎていくものだが、そんなとき、見知った人物が来店し、店内は少し賑やかになった。


「お、ディアンか」


 エルガーが友人の名を呼ぶと、彼は挨拶代わりに左腕を掲げた。


「お前が来るなんて珍しいな」

「デクのヤツが飯を用意してなかったんでな」


 ディアンはデクという召使いと2人で暮らしているのだ。


「全く、召使いの癖に自分の飯しか用意しないなんてな」


 くつくつと笑うと、リーベたちの隣の食卓に掛ける。その中でリーベと目が合う。


「お、リーベか。なんでお前がそこにいるんだ?」

「こんばんは、ディアンさん。今日はお客として来てるんですよ」


 素直に答えると、彼は魔女のような鷲鼻をヒクリと動かし、怪しい笑い声を響かせがら、ヴァールたちへ目線を映す。


「よう。久しぶりだな」

「ご無沙汰してます」


 フェアが丁重に挨拶する中、ヴァールは「また老けたな」と鼻で笑った。


「ヴァール! ……どうもすみません」

「いいさ。実際老けたからな……ところで、そこで船を漕いでるのは?」


 その言葉にリーベはフロイデがうつらうつらとしているのに気付かされた。昼間はカナバミと戦って、晩は美味しいものをお腹がいっぱい食べたのだ。彼がこうなるのはある意味当然のことだろう。


「最近弟子に取ったフロイデっつうんだが……見ての通り今はお眠なんだよ」

「お眠って、ガキじゃねえんだから」


 あきれた風に言うが、すぐに納得したようで、くつくつと笑いながら腰を下ろした。彼が着席する様子を見守っていると、リーベはふと大事なことを思い出した。


「あ、そうだ。あの、わたし――」

「冒険者になった話なら聞いてるぞ」

「そ、そうなんですか」


 画家という職業柄、家に籠もりがちなディアンだが、妙に耳が早い。不思議に思っていると、彼は右腕の袖を握りしめながら問うてくる。


「冒険者になって早々、カナバミを倒したんだってな」

「え、ええ……。みんなに助けられて、どうにか」

「そうか」


 ディアンは思案するかのように目を瞑った。その様子は非常に達観したもので、彼女の嘘を嘘を見抜いているのかもしれない。そう思うとリーベは途端に緊張してきたが、彼が口にしたのは全く別の言葉だった。


「カナバミを倒した以上、お前はもっと大きな活躍を期待されるだろう。だが、それに答えることには拘泥(こうでい)するなよ。じゃねえとお前もこうなっちまうからな」


 そう言うと、腕を失い、こぶのように残った右肩をくい上げて見せた。


 ディアンは元冒険者なだけあって、エルガーと似たことを言う。


(それだけ今のわたしは不安定な状態にあるのかな?)


「は、はい……気をつけます…………」


 リーベが粛々とする横で、ヴァールが「俺たちの目の黒いうちは無茶させねえよ」と言う。その言葉はたいへん頼もしいものであったが、続けて「それよか――」と発せられた為、感動する暇はなかった。


「俺たちは食い終わったんだから、長っ(ちり)はやめねえとな」

「おっと、そうでしたね」


 フェアは恥じらうように早口で言うと、いつの間にか眠ってしまっていたフロイデをゆすり始めた。


「ほら、起きてください。帰りますよ」

「……――いちゃん…………?」

「たく、リーベと違って寝坊はしねえが、どこでも寝ちまうから困ったもんだ」


 ため息をつくと、ヴァールは手を上げ「お勘定」と言って立ち上がり、店員であるエルガー共々、カウンターへと向かっていった。


「お前は行かなくていいのか?」


 ディアンがメニュー表を眺めながらリーベに尋ねてくる。


「はい……あの、実はもうすぐ、王都に……テルドルを離れなければならないんです」

「……そうか」

「もしかしたら、ディアンさんと会えるのは今日が最後かもしれないので、その……」

「最後だなんて、縁起でもないことを言うな」


 ピシャリと言いつけると、彼はメニュー表を畳んで彼女を見た。魔女のような怪しげな瞳はしかし、慈愛にも似た温かい感情を宿していた。


「ワシもそうだったからわかるが、腕の立つ連中はギルドに扱きこき使われるんだ。西へ東へ、はたまた南へって具合にな。だからまたすぐに会えるさ」


 そう言って彼は微笑んだ。初めて見る表情であったが、とてもよく似合っていた。


「ディアンさん……ふふ、そうですね。またすぐに会えますもんね」


 そう口にしたとき、ヴァールが支払いを終えて弟子にに手招きしていた。


「あ、呼ばれちゃった。行かないと」

「気をつけてな」

「はい!」


 リーベは友達にするように親しく手を振って別れると、仲間たちの元へ向かった。 


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