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幻の鳥

作者: 空川 億里

 俺の趣味はバード・ウォッチングだ。カメラ・グラスをかけて、鳥を追い求める。

 幻の鳥を探して、会社が休みの時は北海道から沖縄まで飛行機や電車やリニアモーターカーや自家用エアカーであちこちを訪れたのだ。

 今は22世紀初頭。俺が勤務するような大手企業は、金土日の週休3日が当たり前になっていた。

 カメラ・グラスには望遠機能がついており、俺の思考を読みとって、遠くの被写体を自由に拡大できたのだ。

 日本の国土は森林の伐採が進み、樹木の数が減っていた。鳥が止まっていそうな木々はすっかり姿を消している。

 電線も地下に敷設されるようになり、やはり鳥達が乗っかるような、電柱の数も減っていた。

 やがて俺は林というのもわびしい、漢字で書いたら木が2本でなく1・5本しかなさげな場所に、鳥らしい存在を見つけた。

 今や野鳥自体の数が激減しており、どんな種類の鳥であっても貴重なのだ。

 俺は、カメラ・グラスの望遠機能を、考えるだけで拡大させる。幻の鳥がいた!

 最早絶滅したのではないかとの話もあった幻の鳥がいるのだ。俺は早速撮影を開始した。これは歴史的な一瞬だ。

 ホロ動画をSNSにあげれば、大勢のフォロワーが観て、再生回数も稼げるだろう。その時である。突如銃声が鳴り響く。

 わびしい木の枝に止まっていた鳥が撃たれて墜落した。状況を飲み込むのに時間がかかる。

 周囲を慌てて見渡すと、猟銃を手にした男の姿があった。密猟者である。

 怒りのあまり、俺は大声をあげながら、密猟者に向かって走る。

 いつしか周囲からカメラ・グラスを装着した男女が次々現れて、密猟者を歯がいじめにした。

 マグマのような憤りゆえに、俺はバード・ウォッチング仲間に捕まった男の顔を思いきり殴った。

 男を捕まえていた仲間達が、興奮した俺を密猟者のそばから引き離す。俺は、幻の鳥を振り返る。

 殺されたその鳥は、スズメである。ニワトリのような家畜を除けば、地球で最後の野鳥かもしれない。

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― 新着の感想 ―
雀が絶滅する事を想像すると、野鳥一貴重な類いとも云えますね
2025/07/06 10:14 甘口激辛カレーうどん
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