勇者の子孫と聖女の子孫〜婚約の馴れ初め〜
シリーズ物の予定です♪( ´▽`)
「ねぇお母さま?ちょっとよろしいかしら?
この国の歴史や言い伝えや絵本では勇者さまと聖女さまはご結婚なさって幸せに暮らしたのよね?
国が公式に認めていらっしゃる本当のお話しなのでしょう?
なぜ勇者さまの子孫は王族の方々と言われていて、聖女さまの子孫は私たち公爵家と言われているのかしら?
なぜニ家にバラバラに別れているのかしら?
お二人がご結婚なさったなら王族の方々も私たちも勇者さまと聖女さま、どちらもの子孫になりますわよね?
不思議だわ、なぜですの?」
空気が凍った瞬間である。
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遡ること数分前
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現在は王宮にてアレックス第一王子10歳の、"婚約者を見つけられたらラッキーガーデンパーティー"の真っ最中。
アレックス王子が国王と王妃と入場し、会場にいる貴族たちへ三日三晩考え抜きついに完成した渾身のスピーチを披露した。
「みなの者!私のために集まってくれて感謝する。この度、婚約者を決めることとなった!私はこの国の歴史にある初代国王の勇者や聖女のように、数々の困難を乗り越え、成長し合い、お互いを認め尊敬し合い、そして私の両親のように愛し合い手を取り合って国を導く、そんな夫婦になれるような婚約者を見つけたい!」
噛まずに最後まで言い切れて、まことにドヤァな表情である。
国王も王妃も息子の成長に胸が熱くなった。まさに胸熱。
貴族たちも小さな若き将来の君主を誇らしく思い胸を張った。
ところがどっこいである。
筆頭公爵家の令嬢、アリア8歳がアレックス王子のスピーチを聞いてあることを疑問に思った。思ってしまったのだ。
アリアは現在、周りのもの全てに興味津々期に突入しており疑問に思ったことを全て口に出してしまう。
そして答えが分かるまで、なぜですの攻撃をしないと我慢ができないお年頃であった。
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そして冒頭に戻る
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一応声を潜めたつもりだろうがアレックス王子の胸熱スピーチ後の静寂があったので、アリアのなぜですの攻撃は思いのほか会場に響いた。
アリアの母は貴族らしい微笑みを浮かべ、なぜですの攻撃が止まらないアリアを見つめるが内心は大雨、大荒れ、大嵐の三重苦に陥っていた。
「ねぇお母さま、聞いてらっしゃいますの?ねぇ、なぜですの?なぜですのかしら?」
娘は目に入れても痛くないほど可愛いが、今だけは手に持つ扇子をアリアの可愛い口に突っ込んで黙らしたろか?あぁ?と思った。
そこへ救世主が現れた。
アリアの父である。
「アリア、歴史や伝説、言い伝えは確かではないこともあるんだ。本当のことはその時その場に存在していた人しか分からない。なんとなくそんな感じだったってことが分かれば深く考える必要はないんだよ。陛下、皆様、うちの娘が失礼いたしました。」
さすがはこの国の宰相。平和的?に場を収めた。
国王も王妃も会場全体もとりあえずホッとしたし、アリアの母の扇子も出番は無くなった。
アリアも全信頼を置く父がそう言うならそう。と呆気なく先程の疑問を頭から消し飛ばし、チャキッと切り替えて次なるなぜですの攻撃の対象を探した。
が、ただ一人アリアの疑問に衝撃を受けチャキっと切り替えられない者がいた。
そう、アレックス王子だ。
自分が三日三晩考えた渾身のスピーチを根本からなんだか否定されたような気もしたし、
確かに今まで結婚したはずの勇者と聖女の子孫が別れているのをなぜ誰も疑問に思わなかったのか…アリアの疑問はめちゃくちゃ的を射ている気もしたし、
宰相がこの国の歴史をなんとなくでいいやんのひと言で済ませたのもふざけんなと不満な気もした。
なのでアレックス王子は密かに決心した。
自分が真実を見つけ出そうと。
真実が分かるまでは婚約者も決められない、と。
アレックス王子がまず初めにしたことは、自分を混乱の渦に追い込んだアリアを協力させることだ。
少し遠くにいるアリアを見るとすでに先程のことなど何もなかったことのように幸せそうにお菓子を食している。
逃がすものか、私の心をこんなに乱した女はお前だけだ。
なにやら語弊はあるが、アレックス王子がアリアを見つめる視線に気付いた王妃はついに息子が恋を!?キャーッとなった。
そのために国王と王妃はアリアを婚約者と決めた。
公爵家はまさかの事態にひっくり返った。
アレックス王子に目を付けられたことなど知らないアリアは今日も元気になぜですの攻撃に勤しんでいた。