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8 彼女と別れて再会するまで その3 オルトラム視点

 それは突然、世界に襲いかかった。

 気がつけば流感に罹った人が、あちらこちらにいた。


 前回この国シュタルゼンを襲った流感よりも、今回のほうが酷かったそうだ。我が家は前回罹らなかった祖父と伯母がかかり、亡くなった。

 俺も罹ったけど他の人よりも軽かったようだ。


 病が治り諸々の手続きのために王宮に行った俺がみたものは、流感にかかって重症の王家の人たちだった。そして数日後看護の甲斐なく王家の方々は、亡くなってしまった。


 王位継承権のある公侯爵家にすぐに連絡が行ったが、ほとんどの公侯爵家も同じような状態だった。

 王位継承権がある者のうち残されたのは、公爵家の女性が一人と侯爵家の男性が二人に女性が一人。そのうちの一人が自分とか、冗談だと思いたい。

 伯爵家以下も存続できる家のほうが珍しいくらいだろう。

 国民の多くも亡くなっていた。


 そんな状態で盛大に国葬などできるわけもなく、公爵家の女性、エバンジェリン様に喪主をお願いして、簡易な葬儀を行い王家の霊廟へと王族の方々を安置した。


 シュタルゼンはこのままでは国家として立ち行かなくなるところまで追い込まれてしまった。

 幸いにも、各部署の人員は確保できていた。

 ただ、指揮系統……それぞれの長が亡くなったために、整わないだけで……。


 そこに他国に大使として赴いていたゼルジャン伯爵が戻ってきたことで、事態は動き出した。

 ゼルジャン伯爵の報告では、各国共に我が国と同じ様な状況が起こっていると言った。国を動かすべき高位貴族がほとんど亡くなってしまっているそうだ。

 ゼルジャン伯爵は大使時代の伝手で各国の状況を手に入れた。

 いや、伝手というよりも必要に迫られて情報を共有しているという方が正しかったのだろう。


 そして、その大使たちの結論は、『一国で立ち行かないのであれば二国ないし三国を一つにし、国の体勢を整える』というものであった。


 ここまでに流感が流行ってから三年が経っていた。各国とも、苦しいながらもなんとか国を保っていた。


 我が国は隣国のサンクシェーンと統合されることが決まった。サンクシェーンは王族が生き残っていた。と言っても、王弟の子供たちである。丁度うちの国の公爵令嬢のエバンジェリン様と年が近かったので、二人が婚姻して新しい王家を作ることが決まった。


 主都は広さから考えてサンクシェーンの王都に決定した。

 国の名前も新しくアムシュリッテンとつけられた。


 色々整える為にサンクシェーンに向かうことになった。その直前、俺は騎士団長を拝命した。

 まだ二十一歳の俺にそんな肩書は重いだけだったが、他に騎士団長に(身分的に)就ける者が居ないのでうけるしかなかった。


 サンクシェーン国で出迎えてくれたのは、サンクシェーン王と王弟、宰相、高官たち、それからイカリア侯爵とその子息夫妻だった。

 サンクシェーン国は前国王の王弟の長男が王位を継いで、弟が王弟となっているそうだ。


 両国の顔合わせは滞りなくすんだ。サンクシェーン王とエバンジェリン様は相性も悪くなさそうだった。

 細かいことはこれから話し合うことになるが、統合に向けていい状態で進めそうだった。


 とにかくこちらの高位貴族は若輩者しか残っていないので、新しい国の重要な役職はサンクシェーン国が担ってくれることが決まった。

 あと、あちらからの条件としてエバンジェリン様には、シュタルゼン国の王位を継いで女王になることと、示された。

 これはシュタルゼン国民のためだった。同等の統合だと知らしめるには、同じ立場の者同士が結婚した方が良いということになった。


 夜、歓迎会が開かれた。昼間にクライブ夫妻と話すことは出来なかったから、密かに楽しみにしていたのだ。それに、デテールの姿が見えないことも気になっていた。

 歓迎会の場なら、伯爵令嬢のデテールも出席するのだろうと思った。


 予想に反して、デテールの姿は見つけられなかった。あまり大っぴらにキョロキョロするわけにいかないので、時々広間内を見回している風を装ったけど。


 イカリア侯爵夫妻とクライブ、カトリン夫妻がそばに来た。


「オルトラム、元気そうで安心したよ」

「大きくなったわね。見違えたわ」

「お久しぶりです、イカリア侯爵、イカリア侯爵夫人。お二人に再び会えて、私も嬉しく思います」


 イカリア侯爵夫妻が目を細めて、親し気に話しかけてきた。


「お互い同等の爵位なんだ。畏まらないでくれ。だが、大変だったようだな」

「ええ。仕方がないこととはいえ、やるせないです」


 祖父と伯母が亡くなったのを知ったのだろう。……いや、俺がアクタバ侯爵と名乗った時点で察したのだろうか。


「旧交を温めたいが、それは息子の役目だな。私達はゼルジャン伯爵と話をさせていただくよ」


 そう言うと、侯爵夫妻は離れていった。

 残された俺たち……俺とクライブ、カトリンの間には微妙な空気が流れた。それを振り払うようにクライブが一歩近づいて言った。


「会いたかったよ、オルトラム」

「俺もだよ、クライブ」


 手を出してきたので、それをぐっと握った。くしゃっとクライブの顔が……泣き出しそうになった。

 うん。知ってる。クライブは昔から感情に素直だった。だからって、ここで泣くなよ。


「カトリンも、元気そうだね」

「はい、オルトラム様も」


 カトリンは微かに微笑んだけど、まだ緊張しているように見えた。というか、身構えているように見える。

 その様子に内心首を捻りながら、肝心なことを聞くことにした。


「ところでデテールはどうしたの。彼女も来ていると思ったのだけど」

「あっ……」


 何気ない普通の質問のはずなのに、二人の顔から血の気が引いた。大袈裟な反応にまたも首を捻った。


「あの、デテールは……」


 カトリンが答えかけて……目に涙をいっぱいに溜めて俺のことを見つめた。それ以上言葉が続かないようだ。


「えっと……ちょっと、場所を移さないか」


 クライブはそう言うと、カトリンを庇うようにして歩き出した。


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