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19・ようこそ……『こちら』の世界へ……

 そういって顔をのぞかせたのは、入学式の後、制服脱がされちゃうぞと脅しに来た先輩だった。


「あれ?」

「あ」


 芙綺と雅が驚くと、先輩は近くに寄って来た。


「コトちゃん、こっちに来てたのねぇ。迎えに行ったのに」

「わざわざ来ないでよ恥ずかしいじゃん」

「なんでぇ。お姉ちゃんかなしい」


 お姉ちゃん?と驚くと、視線に気づいた先輩が、にっこり微笑んだ。


「いらっしゃぁああい、是非演劇部に入ってねぇええ」

「入らないです」

「あ、ワイも他の部希望で」

「なんだぁああ、残念~って、あ、この子が美少女ちゃんかあ。確かにかわいぃいい!」


 にこにこと微笑んでいる、のんびりとした言い方のこの先輩は。

 寿がうんざりとしてため息をつく。


「お姉ちゃんです」

 そして姉も頷いた。

「おねえちゃん、でぇす」


 スカートのすそを持ち上げてお姫様みたいにぺこりと挨拶した。

 成程、言われてみたらふんわりした雰囲気はよく似ている。

 妹の方がペースが速いが。

 雅が言った。


「コトどの、お姉ちゃんいつの間に替えたでござるか」

「かえてないよ?」

「全くイメージが違うのでござるが」

「ああ、高校デビューしたの姉」

「やだあコトちゃん、余計な事言わないで」


 成程、あのふんわりはキャラなのかと芙綺は納得した。


「確か以前はもっとスタイリッシュなお方でござった」

「や、折角ウィステリア来たんだからこっち方面伸ばそうって思って」


 いきなりしゃきしゃき話すお姉さんに、あ、こっちが素なんだと気づく。


「まあこんな可愛い制服だし?メイク自由だし?演劇部なら少々行き過ぎたキャラでもなんか許されるし?」


 寿が突っ込んだ。


「絶対黒歴史になるやつ」

「その覚悟ありでの実装よ」


 外見だけじゃなく性格も似てるんだなこの姉妹、と芙綺は思ったのだった。




 寿(ことぶき)のネイルは割と人気で、演劇部の近くの部室からも続々お客が来る有様だった。


「寿、疲れないのかな」


 すると寿の姉が言った。


「あ、平気平気。あの子、一日中でもやれるくらいだから。集中力半端ないし」

「それにしたって大盛況でござるな。商売として成立しそうでござる」

「いいよね~そのうちやろうかな。どうせこの部室は好きに使えるし」


 丸テーブルにはいつの間にか、芙綺と雅、そして先輩らが数人近くに椅子を出してお喋りを始めている。

 まるでお茶会のようだ。


「そういや美少女と雅ちゃんは部活なにに入るの?」

「ワイは映像研究部に、後から行こうかと」

「あ、それなら丁度いま居るじゃん。お~い、えーけーん、新入部員が入部希望だって~」


 寿の姉がそう言うと、マジで?と先輩が立ち上がり、別の子に指示を出した。

 ひとりが頷き、部室を出て行き、再び戻って来た。

 眼鏡のセミロングの女の子が雅の前に立った。


「あなたが入部希望の人?」

「然様に」

「じゃ、これに書いて」

「!入部して良いのでござるか?」

「いいと思う。私ももう入ったし」


 そういってぺこっと頭を下げた。


奥平(おくひら)光希(みき)、一年です」

「木戸でござる。木戸 雅」


 深々と雅は頭を下げた。


「そっちの美少女は?」

「あたしは違います」


 ごめんなさい、と言うと「いえ、大丈夫。失礼」と返した。

 席の近くに立っていた先輩が声をかけた。


「ねえおくらちゃん、お茶飲む?」

「おくらじゃなく奥平です。お茶頂きます」


 そういっておくらこと、奥平は椅子に腰を下ろした。


「所で木戸さん」

「雅で良いでござる、おくら殿」

「おくらじゃねえし。まあいいわ。映像ってなにか経験とか実績は?」

「カメラでござる。ワイ、下手なんすが写真大好きで」

「カメラって自分の持ってるんですか?」

「タメでかまわないでござる。カメラは入学祝に買って貰ったのでござるが、いまいち使い方を把握しておらず」


 はは、と笑うも芙綺は興味を持った。


「カメラって、なにを撮るの?」

「なんでも撮るでござる。風景とか。しかし一番撮りたいのはやはり『推し』でござる」

「推し。推しがいるんだ雅」

「然様でござる。ワイは推し活を頑張る為にウィステリアに入ったと言っても過言ではござらん」

「何の推し活?」


 奥平と芙綺が尋ねた。


「フフ……ワイの推しは、このお方や!」


 ばーん、と雅が差し出したミニバインダーを差し出す。


「へえ、誰誰?」


 好奇心満々で芙綺は雅のバインダーを開いて、あやうく叫びそうになった。


「ぎゃぁああ!」


 いや、叫んだ。

 芙綺じゃない、別の誰かだ。


 え?と驚く芙綺の目の前で、奥平が口を押さえていた。


 びっくりする部室の中の皆に、奥平が真っ赤な顔をして「も、も、も、、申し訳、ありません」としなしなと頭を下げた。


「え、どーしたの?イニシャルGでも出た?」

「なに?なんかあった?」


 心配して先輩らがぞろぞろと見に来るが、「うわあ!」「きゃあ!」「まじで!」などと次々に声が上がる。


「皆さま、どうしたのでござるか」

 驚く雅だが、芙綺はむしろ心臓がどっどっどっどと音を立てていた。


(なんで雅が幾先輩の写真を?しかもロミジュリ?可愛いけど心臓に悪……)


 はぁー、と寿の姉が雅のミニバインダーを見、奥平を見て言った。


「ひょっとしてアンタたち、ロミジュリガチ勢だね?」


 すると奥平と雅は顔を見合わせてお互いに頷いた。


 先輩達は納得し、頷き、そして言った。


「ようこそわがロミジュリガチ応援部隊へ。我々は後輩を歓迎しよう」


 一体なにがはじまったんだ?と芙綺の頭の上には「?」マークが浮かぶのであった。

18・女子が集まればそこが井戸端なのだ

いいねありがとうございます(*´▽`人)

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