お正月のひととき〜風斗
◇登場人物◇
ギルド”永遠の風”メンバー
一条風斗~ウインド ギルドマスター。男子高校生
三好月代~ムーン 女子高校生
佐竹咲華~ブロッサム 女子中学生
六角右京~ライト 社会人(営業職)
細川翠 ~グリーン 臨時女将
ギルド”幻の兔”メンバー
尼子夕凪~イブニング ギルドマスター。女子高校生
津軽真琴~トゥルース 宰相。女子高校生
佐竹綾音~サウンド。女子高校生
尼子大輔~ザ・ビック 風の将軍。男子大学生
「あぁ、おめでとう。」
待ち合わせの場所である三好月代の家の前に来ると、すでに三好と尼子は楽しそうに話をしていた。
「ちょっと、そっけないわねぇ…新年なのよ。」
そうか?普通に新年の挨拶"おめでとう"と言葉を発したつもりだったが、何か間違えただろうか?
あいかわらず三好の反応の意味が俺には分からない。
「まぁまぁ…風斗らしくって良いじゃないの。」
俺らしい?たかが"おめでとう"と言っただけで"俺らしく"となるのか?
あぁ、そうか…
「あけましておめでとう。」
「ん?」
「ん?」
三好、尼子ともに不思議そうな顔をする。
"おめでとう"だけじゃお正月感が足りなかったのかと思い、"あけまして"を足してみたのだが違ったか。
「えっと…近所の神社で良いのか?」
まぁ、いいや…とっとと初詣に行こうと考え、切り出した。
「時間あるから、もっと大きい所に行こうよ。」
「それだと…熱田神宮が良いんじゃない?」
おいおい、随分と大きな神社を提案して来たな。
「いや、そんなところ…混むだろ?激混みだろ?」
わざわざ遠い神社に行かなくても近所の神社で良いって。と言いたかったが、あえて発言を変えた。
この二人も"混む"のは嫌だから、近所の神社で妥協するかと考えての事だ。
「混むって事は、ご利益があるって事じゃないの。」
「そうね、だから人が集まるのよ。」
二人の意見が一致する以上、俺の意見が通る事は無い。
なんせ2対1だ。
「まぁ、どこでも良いが…」
ため息混じりに伝えたが、盛り上がった二人はすでに歩き出していた。
と、その時…
「おぅ、どこに行くんだ?」
聞き覚えのある声が背後から聞こえた。
「げっ、なんでお兄ちゃんがいるのよ!」
振り返った先には、そう叫んだ尼子夕凪の兄の姿があった。
「君たち3人は仲良しだなぁ〜。」
仲良しって訳でも無いと思うが…まぁ、周りから見るとそう見えるのか。
「初詣にでも行こうかと思って。」
三好がそう話した事によって、その質問を投げかけられていたのだったと思い出す。
「偶然だな!俺も初詣に行くところだったんだ!よし、一緒に行くぞ。」
頭を抑え、あちゃー、といった顔をする尼子。
尼子の気持ちは分かる気がする…正直、このお兄さんはちょっと面倒くさい。
尼子のお兄さんのように、無駄に声が大きくて、ぐいぐい来るタイプは昔から苦手だ。
「もう、一緒になんて行かないわよ!」
そう叫んだ尼子も、そう言えばぐいぐい来るタイプだ。この兄にしてこの妹って感じか?
いや、尼子は小学生の頃は大人しい印象だったから…遺伝では無いのか。
「冷たいなぁ、2人きりの兄妹じゃないか。」
バレバレの泣き真似をしながら言う尼子兄。
「近づかないで、あっちに行って!」
おいおい、そこまで言わなくても…と、少し同情の気持ちが芽生えてしまう。
「夕凪、そこまで言わなくても…」
フォローを入れる三好。俺と同じく同情の気持ちなのだろう。
「ほら、友達も俺と一緒に行きたいと言っているぞ。」
「全然っ、言ってないから!」
ん?誰が一緒に行きたいって言ったんだ?と思った瞬間に尼子が否定する。
これ、もう一緒に行かないと無理なヤツじゃ。
そう思って三好の顔を見ると、同意見だったようで頷いている。
すると、尼子が口を開いた。
「尼子大輔…よく聞きなさい。」
何だ?急に尼子の声のトーンが低くなった。
大輔って…尼子兄の名前だったか。
「私たちは今から熱田神宮に行きます。あなたは地元の神社に行きなさい。」
うわー、凄い冷たい口調だ。
「あ…あ…」
それを聞いたお兄さんは口をパクパクとさせている。
「ザ・ビック!追い出されたい?」
これは…尼子じゃない.イブニングだ。
「あ、はい!近所の神社へと向かいます!」
大きな声で叫ぶと敬礼してお兄さんは走り去った。
「もしかして、お兄さんに夕凪がイブニングだって事、伝えたの?」
「伝えたって言うか…バレたの。」
バレたってかぁ。
それで、イブニングモードで追い払ったんだな。
「それで…大丈夫なのか?」
俺は尼子が写真をネット掲示板に晒された事を思い出した。
あの時は、結構ショックを受けていた様子だったが…
「風斗、ありがと。大丈夫よ、あの兄は面倒だけど、悪い事はしないわ。」
確かに…妹の事をおとしめるような事はしないか。
俺は一人っ子だから、妹や兄とかがどんな存在なのかイメージしにくいけど、尼子が言うのなら間違い無いだろう。
「よし、出発しよう!おー!」
三好の声で気持ちを切り替え、ふたたび歩き始めた。
こういった時、三好の元気な声は有難い。
地下鉄を乗り継ぎ、熱田神宮へと着いた。
やはり凄い人の数だ。
参道からすでに人の波が出来ている。
「俺…ここで待っているよ。」
「何、言っているの…早く行くわよ。」
自販機が沢山ある場所にベンチがあったので、ちょうど良いと思ったが、やはり一緒に行かないとダメらしい。
「はいはい、行きましょうねー。」
尼子に背中を押されて前へと進む。
「分かった、分かった…自分で歩くから。」
「ねぇ、もう冬休みの課題は終わった?」
ゆっくりとしか進めなくなった列の中で三好が問いかけてくる。
「あぁ、少なかったからな。」
「私も終わったー。」
「えっと…見せて。」
あー、もしかしてと予想はしたが、現実に言葉にされた。
「もう、月代ちゃんは…仕方ないわねぇ。」
尼子に任せておけば大丈夫か…
「三好…頭が良くなるように神様に祈るんだぞ。」
「なによ…やっぱり風斗って、嫌い。」
なんだ?やっぱりって、前から嫌いだろ?
「もう、風斗ってば…デリカシーが無いわね。」
「デリカシーって問題じゃないわ、性格が悪いのよ。」
あぁ、三好も面倒な性格なのだった…ちょっとでも良いヤツだと思ったのが間違いだった。
「なんか仲良くなったのかと思ったけど、まだまだね。」
「風斗と仲良くなるなんて多分、一生無いから…」
そうだな…俺もそれは無いと思う。
「はぁ…私、神様に二人が仲良くなるようにお祈りしとくわね。」
「そんな事を祈るの勿体無いわ。夕凪は自分の事を祈って。」
そうだった…初詣に来たのだからお祈りをしないと。
えっと…確か、神様に祈りを捧げるというか、誓いを立てるのだったな。
「風斗は、何をお祈りするの?」
「うーん、今、考え中だけど、こう言う事は他人に言わない方が良いって聞いた事があるぞ。」
「そういえば、そんな事を聞いた事あるわね。私も黙って祈ろ。」
「私も教えなーい。」
さて、やっと神様の前まで、辿り着いた。
手を合わせ、心の中で祈る。
『今年こそ…ムーンさんと出会えますように。』
ギルド"永遠の風"のメンバーの中で一人だけ会えていないムーンさん。
冬休み、毎日一緒に遊んでいる。
最近、ムーンさんはとても強くなって、ゲームの進め方を教える存在から、共に難題をクリアする存在となった。
ゲームにログインするのが楽しい…実際に会うとガッカリされるかも知れない。
でも、ムーンさんに…会ってみたいな。
「ほら、風斗…ボーッとしないで。夕凪、あっちに行ったわよ。」
「あぁ、分かった。」
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