クリスマス〜翠
◇登場人物◇
ギルド”永遠の風”メンバー
一条風斗~ウインド ギルドマスター。男子高校生
三好月代~ムーン 女子高校生
佐竹咲華~ブロッサム 女子中学生
六角右京~ライト 社会人(営業職)
細川翠 ~グリーン 臨時女将
ギルド”幻の兔”メンバー
尼子夕凪~イブニング ギルドマスター。女子高校生
津軽真琴~トゥルース 宰相。女子高校生
佐竹綾音~サウンド。女子高校生
尼子大輔~ザ・ビック 風の将軍。男子大学生
「翠!お母さん、退院できる事になった!25日に退院だ。」
病院から戻ったお父さんがドアを開けると同時に口にした言葉は、私にとって一番嬉しいプレゼントだった。
「はぁ…良かった…」
何ヶ月か女将代理として働いてみた結果から出た言葉。
お母さんが病気から回復して「良かった」
女将という仕事から解放される事から来る「良かった」
どちらの思いに比重が高いかは…正直、分からなかった。
それくらい女将の仕事は大変だったという事。
「皆さんにも伝えてくるから。」
晴れ晴れとした顔を浮かべる父親の顔は、今までに見た事も無いような表情だった。
良かったわね…お父さん。
そうだ…右京にも伝えておこう。
スマートフォンを手に取り、チャット画面を開いた。
『お母さん、25日に退院する事になった。』
右京、ちゃんと生活しているかな?
どうせまた、スーパーの惣菜ばっかり食べているんでしょうね。
『それは良かった!もう元気な様子かい?』
お、返信が早いわね。
うーん…元気な様子か…
正直に言うと"分からない"
何故なら私はお見舞いにあまり行っていないから。
仕事が忙しい事が一番の理由だけど、二人きりになって話をするのが、まだ難しかったから。
『すっかり元気って訳じゃないかな。』
想像して返事をした。
普通、退院したからといっても、そんなにすぐにバリバリ働けないのじゃないかな?
お母さんが復帰しても、サポートしなくっちゃ。
『そうか、翠も倒れないようにしろよ。お前、頑張り過ぎるから。』
『確かに…自分のキャパ以上に働いていた気がするわ。ところで右京こそ、元気にしてるの?』
『あぁ、普通に元気だよ。26日にそっちに行くからよろしくな。』
え?こっちに来る?
『ちょっと、それどういう事?私、忙しいわよ。』
とにかく、慌てて返事を返した。
『どういう事って…予約しているだろ?通ってないか?』
えーーー、予約?ウチの旅館を??
『そんな先のお客様の予約まで見てないわよ。』
私は予約者の管理はしていない。
前日の打ち合わせで、予定を組むまで見ない。
なんせ…次の日の事を考える事で精一杯な状況だから。
『うん、ちゃんと予約取れてるわ。良かった。』
良かったじゃないわよ…こっちにも準備ってものが…
って、お客様なんだから普通に接客するだけなのかな?
『良かったって…ウチの旅館、高いわよ?大丈夫なの?』
あまりに忙しいから、最近、値上げをした。
それでも海外からのお客様を中心に予約が多い。
有り難い事だけど、知り合いに泊まって貰うには正直、申し訳ないと思うくらいの金額になっている。
『ボーナス出たからな、奮発したわ。』
親指を立てながら、そう言う右京の姿が目に浮かんだ。
『仕方ないわね…ちょっとサービス品を足しとくわ。』
このお客様は私の彼氏だから金額を下げるね、なんて言えない。
そもそも私が東京に彼氏が居て、しかも同棲していたなんて事は誰にも伝えていないから。
楽しみにしている…と、いう右京のメッセージにスタンプで返した。
26日か…クリスマスプレゼントでも準備しておこうかな。
お母さんの退院祝いも何か…
って…私のお母さん、一体、何を渡せば喜ぶのかしら?
右京が喜びそうな物は想像が付くけど…さっぱり思い浮かばない。
うーん…仲居さんに相談しようかな。
夜になり、PCの電源を付けた。
オンラインゲーム、サウザントフェアリーにログインすると変わらず"永遠の風"のメンバーが出迎えてくれた。
「お母さん、退院するんだって!おめでとう。」
お、ウィンドさん、防具が変わっているわね。
なかなかカッコイイじゃないの。
「お久しぶりっす!時間あるんすか?一戦、やりましょう!」
なんか凄そうな武器ね…ブロッサムさん。
「グリーンさん、お元気にしてますか?」
ムーンさん、元気よ…ちょっと疲れてるけど。
「お、さっきぶり。」
私のお母さんが退院する事をもうみんなに伝えたのね、ライト。
矢継ぎ早にみんなが話すから、返事をする暇が無く心の中で返事をした。
「私は元気にやっているわよ、みんなも元気そうね。」
「今日はみんなに相談があるの…お母さんの退院祝い、何か良いのが無いかな?って思って。」
仲居さんたちに相談したけど、結局、良いアイデアは無かった。
仲居さんたちは、すでにお花を贈る事にしているようで、どのお花にするかを選んでいた。
私もその中に入りたいくらいだったけど…それは違うわね。と思いとどまった。
「退院祝いか…うーん。」
「うーん。」
「うーん。」
「うーん。」
4人が同じポーズを取り、悩んでいる。
相変わらず、楽しい空間ね…ここは。
「肩揉みチケット…とか。」
姿はゴリゴリマッチョだけど中身は女子中学生のブロッサムさん…可愛いアイデアね。でも…お母さんの肩を揉むなんてなんか恥ずかしいわ。
「何か…お母さんが好きな食べ物とか。」
右京っぽい考えね、営業マンって感じの答えだわ。
好きな食べ物は…板前さんに任せようかな。
「体を温める物はどうかな?寒いし。」
流石、ムーンさん…良いアイデアね。
館内は暖房が効いているから良いけど…外はめっちゃ寒いのよね…ここ。
「体を温める物なら…マフラーとか?どうだろう?」
ウィンドさんの答えに頷いた。
うん、良いわね…マフラー。
「みんなありがとう!マフラー、良いわね。あと、肩揉み券に、美味しい食べ物。」
肩揉み券も作っちゃおうかしら。あと、お母さんが好きだった和菓子を思い出した。
あの和菓子屋さん、まだあるかな?
「お役に立てて良かったです!」
みんなが伝えてくれている。
やっぱり、ここのみんなの事は…好きだ。お母さんが帰って来たら、またここに来れるようになるかな?
お母さんが、帰って来たら…私、どうなるんだろう?
お父さんからは、お母さんを手伝って欲しいって言われているけど…
そう言えば、お母さんの気持ちは聞いていないな。
一つの旅館に、二人も女将は必要ないよね…
女将になるのが嫌で都会に出て行った私を…お母さん、受け入れてくれるのかな…
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更新を楽しみにして貰っていた方がいましたらスミマセン、しばらくお休みしてしまいました。
春先、忙しくなるけど頑張って更新しますので、お付き合いお願いいたします。
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