クリスマス〜真琴
◇登場人物◇
ギルド”永遠の風”メンバー
一条風斗~ウインド ギルドマスター。男子高校生
三好月代~ムーン 女子高校生
佐竹咲華~ブロッサム 女子中学生
六角右京~ライト 社会人(営業職)
細川翠 ~グリーン 臨時女将
ギルド”幻の兔”メンバー
尼子夕凪~イブニング ギルドマスター。女子高校生
津軽真琴~トゥルース 宰相。女子高校生
佐竹綾音~サウンド。女子高校生
尼子大輔~ザ・ビック 風の将軍。男子大学生
一体、どういう事かしら?
昨日までは風の将軍を"ビッグ"から別の方に入れ替えるって話をしていたのに、今日になって急に話が変わったわ。
それにしても…
『ビッグには、なるべく関わらないようにしてちょうだい。』
って、どういう事なの?
"お嬢様"あ、違った…"ギルドマスター"イブニング様の心情、行動を読むのが楽しいのに…この指示はまったく分からないわ。
せっかく『どうやってビッグを失脚させようか』と思案していたというのに…
まぁ、このワガママな感じがお嬢様っぽく見える部分なのだから正解なのかも♪
「トゥルース〜、ねぇ、ちょっと来てー。」
おっと…イブニング様が呼んでいるわね。
さっと風を切るように走り寄る。
なるべく視界に入らないように回りこむのがコツ。
勿論、速度ブーストのスキルと装備は必須ね。
私はこのゲームの世界で漫画『閃光の執事は悪事を許さない。』の主人公、トゥルースに成り切っている。
さっと現れる動きもその為のウチの一つ。
誰も見ていない所で、必死に練習したわ。
そして、ギルドマスターのイブニング様の事は漫画に出てくるヒロイン"お嬢様"のように扱う。
あぁ、なんて楽しいのかしら。
最初は、私も他のプレイヤー達と同じように、ただモンスターと戦ってレベルを上げて…という遊び方だった。
名前は、最初からトゥルースだったけどね。
初めてイブニング様にお会いして、心が惹かれた。
何事にも屈せず堂々とした、たたずまい。
しっかりとした口調、その台詞。
お嬢様じゃないの!あのお嬢様が、ここに居たわ!
そこから私はギルド"幻の兎"の参謀としてイブニング様を支えている。
「新加入のあの子さぁ…風部隊の隊長補佐にしない?」
「サウンドさんですね。少し早すぎるかとも思いますので…一度、隊長のビックさんと相談してみるのはいかがでしょうか?」
「え?ビックと?それはちょっと…」
どうしたのだろう?あの歯切れの良い言葉使いが、ビックの話となると言葉足らずになる。
「まぁ…よほどの事が無い限り、このギルド"幻の兎"はイブニング様の独断で良いかと思います。」
「うーん、あなたの意見も大事よ。ほんと、頼りにしているのだから。」
あぁ、なんて事…『閃光の執事』でお嬢様がトゥルースに伝えていた台詞じゃないの!嬉しい…すごく嬉しい。
「ん?どうしたのトゥルース。トイレ?」
「あ、いえ…あまりに嬉しいお言葉をいただけたので感涙しておりました。」
「もう、大袈裟ねぇ。で、どうなの?早すぎるは置いといて、トゥルースの意見は?」
「ビックさんは少々強引な部分があります。その点、サウンドさんは慎重に事を運ぶようです。バランス的には良い判断かと思います。」
「そう、じゃぁ…補佐役に適任ね。」
「ただ…ビックさんは人の言う事を聞かない事が多いですので、サウンドさんの心が持たない可能性が懸念されます。」
「"人の言う事を聞かない"…ほんと、そう!そうなのよ!」
え?何?あきらかに不機嫌になるイブニング様。
何故、こんなにビックに固執するようになったのかしら?
「ビックさんとの話を避けるなら…まずはサウンドさんとお話をしてみるのはいかがでしょうか?」
「あら、それは名案ね。風部隊の立て直しは必須だから、サウンドさんには何とか力になって貰うわ。早々に話してみるわね。」
「では、自分が日程の段取りを図ります。」
「よろしく頼むわ…トゥルース。」
なるべくギルドメンバーと、イブニング様との接触は避けるようにしている。
それが、イブニング様をより高い地位へと導く手段だと考えた。
簡単に話しかける事が出来ない存在。
まさに近づき難い存在…お嬢様であり、このギルドの神。
この戦略の結果、ギルドメンバーは、イブニング様の言葉を貴重に聞くようになった。
さて、サウンドさんは…まだログインしていない様子だな。
その時、机に置いたスマートフォンがビビビと震えた。
相変わらず、このバイブレーションというものには驚かさられる。
「あ、しまったわ…もう、こんな時間だったのね。」
スマートフォンの画面を目に配り、その表示されている時間を見て呟いた。
慌てて部屋を飛び出し、玄関へと向かう。
途中、階段を踏み外しそうになったけど、なんとかリカバリーしたわ。
この現実世界でも速度スキルを使えたら良いのにっ。
「い、いらっしゃい、よ、ようこそー。」
「どうしたんですか?何か息が切れてますよ。」
「ちょっと、階段でつまずいちゃってね。少し焦っただけ。」
「えー、真琴さん大丈夫ですか?」
「うん、平気平気、前から。おっちょこちょいなのよね、私。」
「気をつけてくださいねー。」
玄関のドアの前に立っていたのは、口に手を当てて驚いた表情を浮かべる私の友達。
唯一の友達と言っても過言ではないかな?
「さぁ、咲華ちゃん、入って。」
「お邪魔しまーす。」
今日は友達の佐竹咲華ちゃんがウチに遊びに来る事になっていた。
約束の時間になっていた事に気づいていなかった事は内緒。だって、楽しみ待っていたように思われたいじゃない。
少し年下だけど、彼女も『閃光の執事』が好きな事とか、色々と共通の会話が出来て楽しい。
「今日は妹、居ないから大丈夫よ。」
「そう言えば、モデルの仕事がどうの言ってましたね。」
「あー、ごめんね。また学校で自慢話してた?」
「あたしにとってモデルの仕事は自慢話にならないから問題無いですよ。」
ウチの妹と咲華ちゃんは中学の同級生。
最初は妹が咲華ちゃんの事をイジメていたようだけど、今は仲良くなったみたい。
仲良く…は、ないか。一緒に遊ぶとかは無さそうだから。
まぁ、問題は無さそうだから良いか。
「オススメの漫画を教えてくれるって…楽しみです。」
「うん、とりあえず飲み物を持って来るから、先に2階に上がってて。MAKOTOってドアに書いてあるから。」
友達が家に来るって、もしかしたら人生で初めてかも。
咲華ちゃんも、あの漫画を気に入ってくれると良いんだけどな…ちょっとミステリアスな内容だから、どう思うかなー?
「お待たせー。」
部屋に入ると咲華ちゃんは固まっていた。
ん?何かあった?
「あっ。」
小さな声で反応する咲華ちゃん。
「あー、オンラインゲームよ。トゥルースって名前でプレイしてるの。」
咲華ちゃんが見ていたのは、私のパソコンに映し出されたゲーム画面だった。
「トゥ、トゥルース!?」
突然、声のトーンが高くなる咲華ちゃん…あ、そうか。
プレイヤー名に好きな漫画の主人公名を使うって珍しいのかな?
「うん、一生懸命、デザインしたのよ。なるべく似せてみたつもりだけど…とうかな?このキャラ。」
そう紹介して、マウスを動かして自慢のトゥルースの姿をズームさせた。
けど…何故か咲華ちゃんは画面じゃなく、私の顔を見ている。
「あ、あの…"幻の兎"のトゥルースさん?」
「ん?あれ?まさかの…プレイヤーさん?」
「あ、はい…小規模ギルドでまったりしてます。」
「えー、咲華ちゃんもプレイヤーだったの!?」
確かに大人気のオンラインゲームだけど…まさか、咲華ちゃんが"サウザントフェアリー"のプレイヤーだったなんて、夢にも思わなかったわ。
「そ、尊敬してます!」
何故か足を揃えて敬礼をする咲華ちゃん。
「尊敬だなんて…大袈裟よ。」
そう伝えるも、ビシッと構えた敬礼はそのまま。
「そうだ、今度一緒にモンスター狩りに行きましょうよ。違うギルドでもスマホで連携取れば、やりやすいって聞いた事があるから。」
「いえ、あたしなんて、とんでもないっす。」
「いいじゃないの、咲華ちゃんのプレイヤー名は何?」
「な、名乗る程の者では…」
何故か、かたくなにプレイヤー名を話そうとしない咲華ちゃん。
「それよりもオススメの漫画、見たいっす。」
なんか変な口調になっちゃったわね。
ま、いっか…今日の目的は、そっちだものね。
「そうね、えっーとね、コレコレ。面白いんだから。」
私は、小さな単行本を咲華ちゃんの小さな手の上に載せた。
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