クリスマス〜月代
◇登場人物◇
ギルド”永遠の風”メンバー
一条風斗~ウインド ギルドマスター。男子高校生
三好月代~ムーン 女子高校生
佐竹咲華~ブロッサム 女子中学生
六角右京~ライト 社会人(営業職)
細川翠 ~グリーン 臨時女将
ギルド”幻の兔”メンバー
尼子夕凪~イブニング ギルドマスター。女子高校生
津軽真琴~トゥルース 宰相。女子高校生
佐竹綾音~サウンド。女子高校生
尼子大輔~ザ・ビック 風の将軍。男子大学生
「はぁ…」
安堵の為か疲れの為なのか…理由は分からないが、ため息がこぼれた。
隣に腰を下ろした夕凪と風斗も私と同じようにグッタリと脱力している。
招待されてクリスマスパーティーに来たのは良いけど…夕凪のお兄さんって、あんな感じだったかな?
夕凪より人の話を聞かないじゃないの!
小学生の頃、夕凪の家に遊びにきた時に会った事はあるけど、そう言えば話をした記憶が無いわ。
もしかして話をした事はあったかもしれない。
けど…残念ながら私の記憶力は”中の下”いえ”下の下”かも知れないわ。
中学生の頃は、部活が忙しくなって遊びに来た事は無かったわね。
しかも夕凪のお兄さんが、サウザントフェアリーをプレイしていて、さらにギルド"幻の兎"の一員だなんて…びっくりよ。
あの様子を見ると、夕凪も知らなかったようね…今も隣で惚けているわ。
”幻の兔”のギルドマスター”イブニング”事、夕凪。
以前、攻略掲示板に顔写真を夕凪親衛隊の1人によってアップされてしまったから、同じギルド所属のお兄さんに知られてしまっているのも当然ね。
さっきは、なんとか誤魔化せたけど、今後も上手く行くのかしら?
「おい…尼子、お兄さん…俺との関係を勘違いしているようだけど大丈夫か?」
ちょっと風斗…今は、その事は後回しで大丈夫よ。
私を挟んで両隣に座る風斗と夕凪。
流石に常に冷静沈着な表情を保つ夕凪も焦ったような表情を浮かべている。
「ん-。勘違い?まぁ、いいんじゃないかな?そのうち本当になるんだから。」
あれ?夕凪は急にいつもの冷静な表情へと戻ると呆れたような返答をおこなう。
ちょっと夕凪”そのうち本当になる”って、どういう意味よ?ほんと、高校に入ってから意味不明な発言が多いわね。
とは言っても中学生の時は、今みたいにベッタリ一緒って訳じゃなかったから本当の夕凪を…今の夕凪を私は知らなかっただけなのかも?
「いやいや…ややこし過ぎるだろ…」
「そう?確定事項よ。」
夕凪の返答に風斗が頭を抱えている。
確かに、風斗が言う通り、実際に付き合ってもいないのに、付き合ってるとお兄さんに勘違いされているというのは、ややこしい話だと思う。
だけど…風斗が困っている姿は…うん、面白いわ。
だいたい、いつも生意気なのよ。
はい”俺は何でも分かっています”みたいな顔をして。
試験勉強を頑張ってしているのなら良いわよ…そんなの微塵も見せない癖に、実際、試験の成績は良い。
私はこんなに試験結果に苦労しているというのに…あぁ、なんか腹立たしいわね。
「風斗ったら、どうしてそんなに困るの?学校イチの美人を相手に。光栄に思いなさいよ。」
つい、嫌みな事を口ずさんでしまったわ。
まぁ、正直な自分の気持ちでもある。
どうして?夕凪は風斗の事が好きなの?そんなにカッコイイ男でも無いし、スポーツ万能って訳でも無い。
そうよ…風斗に夕凪になんて、本来は勿体無い話なんだから、風斗の方が拒否権を持つなんて、ありえない話よ。
「ちょっと月代ちゃん、ダメよ…そんな事を言っちゃ。私だけの風斗じゃなくて、2人で一緒に愛するんだから。」
ん??また訳の分からない事を言っているわね…夕凪。
援護射撃をしたつもりが、まるで撃った砲弾が盾に跳ね返って自分に戻って来たような感覚だわ。
”夏から”だったかな?
夕凪が風斗と私と同時に付き合いたい…いえ、結婚したいなんて言い出したのは。
とても暑い夏まつりの日の出来事を思い出す。
”まさか、本気の話じゃないわよね”
風斗とも同意見だったので、そのままスルーしているけど…一体、夕凪は何を思っているのかしら。
「お待たせー。」
ドンッと大きなドアを閉める音と共に、夕凪のお兄さんがトイレから戻って来た。
「待っていないわよ、自分の部屋に戻りなさいよ。」
冷酷な口調で夕凪が言い放つ。
「なんだよ…一緒にパーティしようぜー。楽しもうぜー。」
「10万円…今日のパーティ参加費用よ。」
軽い感じで参加を申し出たお兄さんを、さらに冷酷な表情と口調でぶった切る夕凪。
「ちっ、何だよ…母さんに言いつけてやるからな!」
「どうぞご自由に。」
え?お母さん?お兄さんの捨て台詞に思わず、プッと吹き出しそうになってしまい口を押さえた。
夕凪は、シッシッっといった感じで右手で追い払う。
ドンッというドアが閉まる音が再び鳴り響き、リビングは静まり返った。
「えっと…参加費用って必要だったか?」
恐る恐る風斗が尋ねる。
そう言えば…私は飲み物を持って来たけど、風斗は手ぶらだったわね。
払いなさい、10万円。
「風斗と月代ちゃんは大丈夫よー!その代わり、ゆっくりしていってね♪」
お兄さんに対する冷たい表情とは180度変わり、暖かな表情へと戻る夕凪。
その表情を見て、風斗がホッとしたのが分かった。
そもそも手ぶらで来るってどういうつもりよ?まったく…分かっていないわね。
追い込んじゃなさい夕凪、お兄さんと同じように風斗も冷たくしちゃいなさい。
「ところで…尼子はお兄さんが”幻の兔”のメンバーだったって事は知らなかったのか?」
「もう、全然っ知らなかったわ。ビックリよねー。」
ジュースを一口含みながら夕凪はそう風斗に返すが、その表情からは驚いている様子は見て取れない。
「バレないように気を付けないとね。」
「そうなのよー、実は風の将軍”ザ・ビック”は入れ替えようと考えていてね。強いんだけど、人の話を聞かないし、頼りない部分があるの。」
ポテチを摘み、笑いながら言う夕凪に対し、私と風斗は顔を見合わせた。
人の話を聞かないと言うのは、さっきのお兄さんの態度からよく分かるわ。
「そ、そうなんだ…イブニング様も大変そうだな。」
「だからぁ、”様”付けないでって言っているでしょ。さぁ、好きの食べてねー。」
「風斗が所属しているギルドは、そういうゴタゴタは無いの?」
「んー、無いかな。」
「月代ちゃんとこのギルドは?」
「えーっと…前に一人、抜けちゃって大変だったかな。」
「やっぱり、どこでもあるのね。そういう事。」
ニコニコと笑いながら、話す夕凪。
ダメだわ、このままサウザントフェアリーの話をしていたら、ボロが出て私がギルド”永遠の風”所属だって事がバレてしまうわ。
「そうそう、この前に話したインチキギルド”永遠の風”がねー、5位に落ちてるのよ。インチキしているからよねー。」
キャー、早速、出てしまったわ”永遠の風”っていうワードが。それにしても、インチキギルドって何よ。何もインチキなんてしていないわよ。
「いや、インチキって訳じゃないだろ。」
突然、風斗が大きな声を出した…風斗にしては、大きな声って感じかな?
ただ、風斗が大きな声を出す事なんて見た事が無い。
怒っているのかな?にしても、どうして風斗が怒るのよ?
「ん?風斗って、”永遠の風”に知り合いでも居るの?」
「いや…ただ、インチキなんかで少数ギルドが5位になんてなるかな?って思って。」
不思議そうに言う夕凪に対して、風斗は静かに答えた。
そうよ風斗、もっと言ってやって、私が所属するギルド”永遠の風”は強さと連携で上位に居るのよ!
「ん-、確かに、以前ウチに勧誘した”グリーン”って子の実力は間違いなかったけどねー。」
そうよ、グリーンさんが5人居るようなものなんだから!ウチは!って、私は別だから4人+1人ね。
「それより…三好は補習は良かったのか?赤点、あったんじゃ…」
うん、話題を変えたいとは思っていたけど、こっちに振るのね。
助かったけど、なんか釈然としないわ。
「今回は、休み明けの再試験って事になったから大丈夫よ。」
夏休みは補習で大変だったけど、冬休みは補習は無いみたい。先生方も休みたいのね。
「いや…冬休み明けに再試験って、ちゃんと勉強しとけよ…」
風斗の言葉にサッと血の気が引いた。
「それは…そうね。月代ちゃん…今から勉強よ!」
笑いながら言う夕凪。
「クリスマスくらい遊ばせてーーーー!」
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