巡り会い〜月代
◇登場人物◇
ギルド”永遠の風”メンバー
一条風斗~ウインド ギルドマスター。男子高校生
三好月代~ムーン 女子高校生
佐竹咲華~ブロッサム 女子中学生
六角右京~ライト 社会人(営業職)
細川翠 ~グリーン 社会人(事務職)
ギルド”幻の兔”メンバー
尼子夕凪~イブニング ギルドマスター。女子高校生
津軽真琴~トゥルース 宰相。女子高校生
どう見てもライトさんの元気が無い。
その事はギルド"永遠の風"のみんなも何となく気づいていると思う。
あの日からライトさんと同棲していた筈のグリーンさんは姿を見せていない。
あの日…とは、私がグリーンさんと名古屋でリアルで会って食事した日の事。
私はギルドの中で孤立していると感じていた。
自分では、その感情を否定していたけど、実際にグリーンさんと会って…話をして…
『あぁ、私って…心が狭かったのかも。』と感じた。
自分だけが知らない話でみんなの会話が進んでいく状況に耐えられなくて…いつの間にか逃げ出していた。
『リアルでの高校生活を楽しむから良いもん。やっぱり、知らない人達との交流よりもリアルが大事よねー。』
そう、頭を切り替えていた。
違うでしょ!月代!
リアルで…一番大切だった陸上競技で怪我をして上手く行かなかったから、オンラインゲームの世界に…心地良い仲間に逃げたのが半年前の事じゃない。
今度はゲームの世界で上手く行かなかったから…リアルの世界に逃げるつもり?
グリーンさんとのランチ。
暖かなグリーンさんの言葉に触れ…自分自身を見つめ直す事が出来た。
逃げちゃダメ…自分の居場所は自分で作らないと。
今までの人生…良い方に良い方にと考えていた。
"ポジティブな私。"
そう自負してきたけど、今回の件で実際は違う事に気づいた。
違う…"悪い方に考える事から逃げていただけ…"
「ライトさん…グリーンさん、どうなりましたか?」
戦闘が一段落終えたタイミングで話を切り出す。
"悪い話が出る事を恐れちゃダメ。"
「ちょっと…ムーンさん。」
慌てた様子でウィンドさんが言葉を挟む。
「あぁ…いいんだ、ウィンドさん。」
ゆっくりとライトさんは話し出した。
「グリーンは、ウチから出て行ったんだ。実家に帰ったんだよ。狭い部屋だったのに、今では広すぎるくらいだ。」
続けて言うライトさんは、笑顔で私達にそう伝える。
「そうっすか…えっと…喧嘩でもしたんっすか?」
沈黙していたブロッサムさんが質問をする。
「喧嘩は…していないな。お母さんが入院したとかで、家業が大変になったらしいんだ。それで一旦、帰った。」
冷静に返答するライトさん。
そう言えば…グリーンさんの実家の事は知らないわね。
あの立花さんって方…グリーンさんの事を"お嬢様"って呼んでいたけど、何だったのかしら?
「そういう事ですか…お母さんと実家が大変なのですね。教えてくれてありがとうございます。」
ウィンドさんは、お辞儀をしてライトさんに謝意を伝えた。
しばらくログインしていないグリーンさん…ギルドの今後の運営方針を考えないとならないのかな?
「あの…待ってるっす。グリーンさんが戻ってくるのをボクは待ってるっす!」
力を込めて言うブロッサムさん…グリーンさんに教えて貰ったけど、本当に中の人は女子中学生なのかしら?
ムキムキマッチョキャラの見た目からして、どうにも信じられないわぁ。
中身を教えて貰った事は、しばらく内緒にしとこ…
「あの…ライトさんは、大丈夫ですか?」
辛い思いをしているであろうライトさん…何か力になれればと思い、私はそう伝えた。
「ムーンさん、ありがとう…自分一人の為にご飯を作るのが面倒になって、コンビニ弁当生活に戻っただけかな。」
笑いながら言うライトさん。
うーん、遠いから私がご飯を作ってあげる訳には行かないし…
いや、そもそも私って…料理が出来ないじゃないの!
「コンビニ弁当じゃ栄養が偏りますよ…サラダも買いましょう!」
力説しているウィンドさん…うん、なんか間違えているような気もするわね。
「野菜なら京野菜っす!漬物なんかも最高っす!」
ブロッサムさん、何故…ここで地元の京都を推すのかしら?この方も何かを間違えているような…
「休みの日に作り置きしておくのも良いかと思います。」
お母さんがたまにやっている事を思い出して、私はそう伝えた。
「ありがとう、みんな…健康には気を使う事にするよ。」
ライトさんが、そう返事をすると…ピロンっという音が鳴り響いた。
「まったく…私が居ないと、一体、どういう生活をしているのよ!」
「グリーンさんっ!!」
思わず声を出すと共に、私はムーンを動かしてグリーンさんに抱きついた。
突如、現れたグリーンさんにウィンドさんとブロッサムさんが歓喜の声を上げる。
「お…おかえり。」
ライトさんだけは、静かにそう言葉を入力していた。
「みんな、ごめんねー。もう、忙しくって。」
「えっと…今はご実家ですか?」
笑顔で忙しい事を伝えるグリーンさんに対して私は質問した。
「そうなのよー。私の実家、岐阜の山奥で旅館を経営しててね。お母さんが倒れちゃったから、代わりに私が臨時女将しているのよ。」
「えー!女将ですか!?」
「めっちゃ、カッコいいっす!」
ウィンドさん、ブロッサムさんが興奮気味に言葉を放つ。
確かに、グリーンさんの女将姿を思い浮かべるとカッコいい。
「それが…全然、女将の事が分からなくてね…今、猛特訓中。」
そう言いながらもグリーンさんは、アバターの衣装を和装へとチェンジさせた。
「グリーンさんなら、きっと大丈夫だと思います。」
「絶対、似合うっす!グリーンさんの女将!」
ウィンドさん、ブロッサムさんは、完全にグリーンさんの応援団と化している。
「ふふふ…ありがとう。」
「グリーン…もう東京には帰らないんだな。」
そんな中、ライトさんだけは真面目な顔をしながら質問を投げかけた。
途端…グリーンさんの動きが止まる。
「うん…来週、東京の会社には辞表を待って行くと伝えたわ。ライト…悪いけど、私の荷物、そのままにしておいてくれる?落ち着いたら取りに行くから。」
「あぁ…分かった。」
突然、大人の会話をし始める二人。
私はどうする事も出来ずに黙りこんだ。
それは、ウィンドさんもブロッサムさんも同じ…中高校生には、分からない話よね。
「グリーン…これからも、今までと同じ気持ちで居てくれるか?」
「何言ってるのライト…距離が離れても同じよ。」
えーーーー。ここでそんな事、言っちゃう!?
何だか顔が熱くなるのを感じて、手で顔を仰いだ。
もう…冬も間近なのに、暑いじゃないの。
「えっと…遠距離恋愛ってヤツっすか!?」
しばらく続いた沈黙の空間をブロッサムさんがかき消した。
女子中学生が、この発言をしていると思うと何だか面白いわね。
「お二人さん…いつまでも仲良く。」
私は、ライトさん、グリーンさんの未来を応援したくって、そう言葉に表した。
私も将来、グリーンさん、ライトさんと同じような素敵な関係になる方を見つけたいな。
ウィンドさんは…一体どう思っているのかな?
「グリーンさん、女将になってもログインは出来そう?」
そう繰り出すウィンドさん…いや、違うでしょ。そんな事より今は二人の事を応援すべき時よ。
「うーん、最新型のPCはあるけど…時間がね。ちょっと、まだ分からない状況ね。」
「そうですか…待ってますので、落ち着いたら、またお願いします。」
「ウィンドさん、ごめんね。」
静かな状況で交わされる二人のやり取り。
確かに…ギルドの運営の事を第一に考えるのはギルドマスターであるウィンドさんの職務だけど…なんか、違うかな。
今はまだ、ライト達の恋愛の行く末。グリーンさんの女将業の成功。の事を願うのが、先決じゃないかしら?
ウィンドさんは、もしかしてリアル恋愛に興味が無い?
リアルよりもゲーム内の方が大事!?
そういえば、近くにもそういう人間が居たな…風斗とかいう名の…ダメ男。
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