温度差〜月代
◇登場人物◇
ギルド”永遠の風”メンバー
一条風斗~ウインド ギルドマスター。男子高校生
三好月代~ムーン 女子高校生
佐竹咲華~ブロッサム 女子中学生
六角右京~ライト 社会人(営業職)
細川翠 ~グリーン 社会人(事務職)
ギルド”幻の兔”メンバー
尼子夕凪~イブニング ギルドマスター。女子高校生
津軽真琴~トゥルース 宰相。女子高校生
あきらかに、みなさんの雰囲気が変わっている。
なんて言うか…より一層、仲が良くなっている気がする。
「ムーンさん、右のモンスターをお願い。」
「あ、はい!ディア・ザ・グラビティ!」
ぼぉっとしていた所にグリーンさんの指示を受けて、慌ててスキルを繰り出した。
私の右拳から放たれた黒い球体が渦を巻きながらターゲットのモンスターへと向かって進む。
小型の恐竜型のモンスターは、私が放った球体へと向かい、大きな口を開けると炎を吐き出した。
黒球と炎が正面からぶつかり合う。
そして…黒球は炎を音もなく吸い込んだ。
まるで意識を持っているかのように、そのまま黒球はモンスターへと近づいていく。
そして…一瞬、モンスターの動きが止まったと思った矢先…黒球の中へと顔から吸い込まれた。
黒球は、大きく膨らみ…弾けるように破裂。
それは、まるで黒球がモンスターを捕食し、そして自爆したかのようにも見えた。
うん、そういうスキルなのだろう。
「凄いねー、その新スキル。」
そうライトさんに声をかけられ、ふと我に帰った。
「ほんと、自分でもビックリしちゃうわ。」
上級職、魔道戦士へと進化して、しばらくは使い方がよく分からず、格闘家時代と同じように近接戦闘をしていた。
格闘家との違いは、その拳に魔法の力を付与出来る事ね。
そんな中、昨日…入手した新武具"グラビティグラブ"を装備すると同時に使えるようになったのが、このディア・ザ・グラビティだった。
「まるで小さなブラックホールだな。」
ウィンドさんのその言葉を聞き、背筋が寒くなるのを感じた。
ブラックホームって…よい例えね、ほんと怖いスキルだわ。
「さっきの恐竜型のモンスター、ヴァルムテットって言う名前だったっすね。」
サーチ魔法を使っていなくても、倒す事でモンスターの名前が分かるようになるシステム。
「あー、小さい割に強いモンスターだったな。まるでブロッサムさんみたいだ。」
ん?小さい割に強いモンスターが何故ブロッサムさん?
ライトさん、何を言っているの?
「もう、からかわないで欲しいっす!」
ブロッサムさんがライトさんに向かって怒り出すと、周りの皆んなが笑っている。
あー、またリアルの話か。
この前のオフ会で、みんなが出会い、お互いのリアルの姿を知っている。
その集まりに参加出来なかったのは、私一人。
みんなが楽しそうに笑っているけど…私だけが何について笑っているのか分からないわ。
ブロッサムさんって、リアルでは小さな男の子なのかしら?
そんな事、聞けないしな…
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
「月代ちゃん、どうしたの?朝から浮かない顔して。」
覗き込みながら聞く夕凪。
うん、朝からちょっと近い。
「うーん、ちょっと色々あってねぇ。」
少し離れつつ、答えると夕凪はふたたび距離を詰めた。
「なぁに?勉強の事?それともサウザントフェアリーの事?何でも相談して。」
夕凪の優しさは有難いけど…相談したい事はサウザントフェアリーの事。
私が所属するギルド"永遠の風"の事を夕凪に相談するのは、ちょっと面倒な気がする。
なんせ、夕凪は私たちのギルドを嫌っている。
だから…バレちゃったら困るので、詳しい話は出来ない。
「うーん、新しいスキルが怖くって。」
本当に相談したいのは、リアルで会った私以外のギルドメンバーと話が噛み合わない事だけど…違う話にしておいた。
「へー?何のスキル?」
「えっと…ディア・ザ・グラビティってスキルだけど…」
「ん?ディアザ…?」
「ディア・ザ・グラビティよ。」
「ちょっと待って…そんなスキル、私、知らなんだけど。」
筆頭ギルドのマスターであるイブニング様が知らない?
何?てっきり何でも知っているものかと思っていたわ。
「えっと…なんか…黒い球が飛んでいって…ギュンってなって、バンってなるの。」
「…月代ちゃん、サッパリ分からないわ。」
ちょっと説明が下手だったかしら?
「そもそも…月代ちゃんって、職業何なの?」
「えっと…魔導戦士。」
正直に答えると、さっきまで近かった夕凪が一気に後ずさりして距離を取った。
「ちょっと…何で上級職なのよ?」
「え?何でって?ユニティに転職して貰ったから?」
夕凪は何を驚いているのかしら?
サウザントフェアリーの世界、もう結構、上級職になっているプレイヤー、多いんじゃないの?
「筆頭ギルド"幻の兎"なんて、全員、上級職になっているんじゃないの?」
口を開けて固まっている夕凪に質問を返した。
「そ、そんな訳、ないじゃない。まだ、1/5も達成していないわよ。」
「え?」
しまったな…余計な事を言っちゃったかも。
「私は…たまたま…上級職になった感じかな?」
「たまたまな訳、無いでしょっ!」
何故、夕凪は怒り口調なのかしら?
「月代ちゃん、適当にプレイしているって言ってたよね?」
「えっと…そんな事、言ったかな?あー、私は適当なんだけど、周りの人達が色々と教えてくれて…」
「そう、ギルドのみんなのおかげで上級職になれたの。」
そう答えると夕凪は頭を抱えた。
「ウチのギルドも必死にメンバーを上級職にと頑張っているって言うのに…月代ちゃんとこのメンバーは何人上級職なの?」
「えっと…5人全員…」
そう答えると夕凪は急に私の両肩を掴んで、ガシガシと降り出した。
「ウチが一生懸命に頑張っているのに、どうして適当にやってるギルドが全員、上級職なのよー?」
「ちょっと夕凪、声が大きいよ…通学途中に、みんなに聞かれるよ…」
何故か半泣き状態で私の肩を揺らし続ける夕凪。
「おぅ、お前ら…何、朝から漫才してるんだ?遅刻するぞ?」
「あー、風斗〜。酷いんだよ、適当にやってる月代ちゃんが上級職なのよー。」
後ろからやってきた風斗が巻き添えを喰らっている。
「そうだ?風斗は…上級職じゃないよね?」
「あ…あぁ…上級職だな。」
「何でよー。何で、風斗まで上級職なのよー?」
「俺は…結構、頑張ってるから…」
「あ、そうなのね…納得。」
「よ、よかったよ…納得してくれて。」
うん、どう見ても、今度は夕凪と風斗の二人が漫才をしているわ。
「さ、二人とも…早く行きましょ。」
私は笑いながら、先に走り出した。
「ちょっと月代ちゃん、待ってよー。」
「尼子、転ぶなよー。」
まぁ、いいか。
私には、夕凪が居るし…ついでに風斗も。
ギルド"永遠の風"のみんなとは、ちょっと距離を感じちゃっているけど…
今、この高校生活は楽しまないとね。
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