温度差〜風斗
◇登場人物◇
ギルド”永遠の風”メンバー
一条風斗~ウインド ギルドマスター。男子高校生
三好月代~ムーン 女子高校生
佐竹咲華~ブロッサム 女子中学生
六角右京~ライト 社会人(営業職)
細川翠 ~グリーン 社会人(事務職)
ギルド”幻の兔”メンバー
尼子夕凪~イブニング ギルドマスター。女子高校生
津軽真琴~トゥルース 宰相。女子高校生
うーん…なんか誤解されちゃってる?
尼子夕凪…いや、イブニングと言うべきか。
俺の事「ウィンド」、俺が運営するギルド「永遠の風」の事を"怪しい"と言う。
いや…違うから。
たまたま、今回のイベントのターゲットである『アースドラゴン』の居場所も倒し方も知っていただけで不正とかした訳じゃないから。
「…絶対に運営側の人間が入っているのよ。」
と言う台詞に対して、強く否定する事も出来ずにいる。
強く否定したら、どうして風斗が否定するの?何か知ってるの?と、なるからだ。
当然、ウチのギルドに運営側の人間なんて居ないが…"穏便にな"…と、尼子をなだめた。
それにしても朝から、とんでもない魚雷にぶち当たってしまったものだ。
流石、筆頭ギルドのマスター、ゲームに対する執念が凄い。と、感じる。
「ねぇ、風斗が居るギルドはどうなの?アースドラゴンの捜索は進んでる?」
笑顔で尋ねる尼子。
俺が所属しているのは永遠の風であり、俺がウィンドだとは絶対に言えない状況に追い込んだ上で聞かないでくれ。
「あ、あぁ…もう、してないかな。」
「何?一日で諦めちゃったの?もう!風斗のところもヤル気ないわねぇ!」
いや、諦めた訳じゃなく、終わったからなのだけど…
ん?風斗のところも?ってのは何だ?
「月代ちゃんとこのギルドも捜索してないんだって!」
あー、三好が所属しているギルドの事か。俺の心の声が聞こえたかのように尼子は返事をした。
三好と二人の時はサウザントフェアリーの事を話さないので、すっかり三好がプレイヤーだという事を忘れていた。
アースドラゴンは、なかなか手強い相手だけれども、今回は一ヶ月という長丁場。
そのうち多くの攻略情報が出てくるだろうから、多くのギルドは頑張れば倒せるだろう。
「三好、頑張れよ。」
ウチのギルドから話題を遠ざける為に、俺は三好に話を振った。
「え?私?私はギルドマスターでも何でもない庶民だから…皆さんの指示に従うだけなの。」
どこか苦笑いのような…少し額に汗を滲ませながら言う三好。暑くないよな?むしろ寒いぐらいだか。
「もう、ヤル気の無い人ばっかり!せっかくサウザントフェアリーの話が出来るのにっ!」
尼子夕凪は、プンプンとお怒りだ。
「三好が居るギルドは。何人くらいなんだ?」
「ウチは…5人よ。」
何とかアースドラゴンの話題から離れようと思い、適当に尼子のギルドの話に持っていったが、まさかのウチ『永遠の風』と同じ人数とな。
「5人って…少なっ。」
超大型ギルドを運営する尼子が驚いたような口調で答えた。
「だから、イベントの捜索が億劫になるのねー。月代ちゃん、そこのギルドに愛着があるの?」
「うん、とても楽しい人たちだから。」
尼子の質問に答える三好の顔がパッと晴れるのが分かった。
三好は、なかなか良いギルドに所属しているようだ。
「うーん、そうだ!そのギルドを私が吸収合併してあげるわ!そうしなさいよ、きっと今よりも充実する筈よ。」
「あー、ありがとう、夕凪。でも…多分、ウチのギルドマスターは断ると思う。」
少し困った表情になりながら、三好は、そう返事をした。
「大丈夫!ウチにはね、優秀な宰相が居るの。きっと、月代ちゃんとこのマスターを説得しちゃうわ。」
あー、あの黒ずくめの宰相か。
確かに、あの宰相さんは優秀だな…一時、事情はともかく、ウチのグリーンさんも引き抜かれちゃった事もあったからなぁ。
「ははは、トゥルースさんね、それは怖いなー。」
「あら、ウチの宰相をご存知?」
笑いながら言う三好に対して、ご存知?と言う尼子。
そりゃ、超有名人だからプレイヤーなら、誰でも知っているだろう。
「うーん、話した事は無かったと思うけど…知ってるわ。黒い服装の方よね。」
「そうそう、彼は優秀なのよ!聞いてくれる?一回、"永遠の風"のエースを引き抜いた事があるのよー。」
「へー、そうなんだ。」
興奮気味に話す尼子に対し、どこか冷めたような口調で答える三好。
そうだな…三好が興味がある訳は無いわな。
「でもね…また戻っちゃったのよ。あの"憎き"永遠の風に!」
えー?"憎き"って何だよ。俺、そんなに恨まれる事したかなぁ?
もう、これ…絶対に正体を明かせないヤツじゃないか。
ここで、あ、俺がウィンドです。なんて言っちゃったら殺傷事件発生にならないか?
想像しただけで、背中が寒くなった。
「ははは…も、戻っちゃったんだねー。まぁ、そんな事もあるよー。」
明るく笑う三好の表情も少し曇ったように見える。
まったく関係が無い話だといっても、"憎き"なんて言葉を聞いたら…引くかも知らないな。
「おい、のんびりし過ぎると遅刻するぞ。」
サウザントフェアリーの話に夢中になり過ぎている尼子に対して言い、俺たちは早足にて学校へと向かった。
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さて、早々にイベントも終わらせた事だし、強い相手を探して挑もう。
昨日、アースドラゴンを倒した後、みんなとそう話をしていた。
小高い丘から降り、アースドラゴンが住む洞窟のエリア付近。
他にも強いモンスターが出現するエリアだという事に気づいた俺たちは、今日はそこで遊ぶ事にしていた。
「ムーンさん、こんにちは。早速、あのエリアに向かいましょう。」
一瞬、今朝の尼子の話をしようかと思ったがヤメた。
どう話してもリアルイブニングと知り合いだとバレてしまう。
さらに彼女から嫌われちゃってるなんて伝えても不快な気分にしかならない。
「新しいモンスター、出ないかなー。」
楽しそう話すムーンさん、ほんと可愛い。
あぁ、この前の名古屋オフ会…来てくれていたらなぁ。
急に来なくなった理由を聞きたかったけど、リアル事情をあまり深く聞くのはタブーだ。
「うっす!ブロッサム、参上っす!」
少し進んだところでログインしてきたブロッサムさん。京都在中の女子中学生だ。
やはり、あの小さな女の子が、このゴリゴリマッチョキャラというギャップが笑える。
「ん?ウィンドさん、何が面白いの?」
思わず、PC前で笑ってしまった事が、ムーンさんにバレてしまったようだ。
マイクで話した言葉をアバターキャラで話す事が出来る、音声入力システムは便利だが、ここが困った部分でもある。
「ウィンドさん、ブロッサムの姿を見て笑ったっすね!」
勘づいたブロッサムさんが、俺に向かってパンチを繰り出す。
プレイヤー同士の戦闘が認められていないので、パンチは当たらない。
が…それが何だか面白くて、さらに笑ってしまった。
さらに怒るブロッサムさん。
ムーンさんは、キョトンとした雰囲気で俺たち二人の絡みを見ている。
「ごめん、ごめん…」
謝ると、ブロッサムさんは、ようやく落ち着いた。
「さ、急ぐっすよ。」
目的のエリアに辿り着くと、早速3人でモンスター狩りを始めた。
やはり新エリア、見慣れない強い敵が出てくる。
「ちょっと3人ではキツイ相手が多いな。」
マジックポイントの回復がてら少し待機していると、グリーンさんとライトさんが現れた。
「ごめん、ごめん…遅くなっちゃって。」
ライトさんは、背が高く、知的な感じの男性。
「ちょっと…私の用事が終わらなくって。」
グリーンさんは、大人の雰囲気が漂う女性。
どちらも"ザ・都会の人"って感じだ。
「あ、どうも…こんばんは。」
「こんばんはっす。」
俺とブロッサムさんが、挨拶をする。
「なぁに?リアルで出会ってから、ちょっと固いわよ。」
グリーンさんが、笑いながら文句を言う。
二人とは実際に会って、改めて歳上の大人だと感じたのは事実。
なので、どうしても大人に対して話す口調になってしまう。
「ウィンドさん、ここはゲーム内だから気にせず、今まで通りに接して欲しいなー。」
ライトさんも、そう言ってくれるが。
何というか…クセというか…俺があまり大人慣れしていないってのもあるだろう。
「じゃぁ…遠慮なく…グリーン!ライト!行くっすよ!」
隣に居たブロッサムさんが叫んだ。
おぉ、ブロッサムさん…いきなり呼びつけとは、やるな。
「ちょっと、豹変しすぎ!」
「せめて…"さん"を…」
グリーンさん、ライトさんが困惑しながら言うが…すぐに笑い声へと変わった。
「ごめんっす!」
リアルでは、凄く大人しいブロッサムさん…このギルド"永遠の風"では、頼もしいムードメーカーだ。
強いモンスターが多く出現するエリアだが…俺たちの笑い声で包まれた。
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