初~咲華
◇登場人物◇
ギルド”永遠の風”メンバー
一条風斗~ウインド ギルドマスター。男子高校生
三好月代~ムーン 女子高校生
佐竹咲華~ブロッサム 女子中学生
六角右京~ライト 社会人(営業職)
細川翠 ~グリーン 社会人(事務職)
ギルド”幻の兔”メンバー
尼子夕凪~イブニング ギルドマスター。女子高校生
津軽真琴~トゥルース 宰相。女子高校生
名古屋駅…来た事あったかな?
いや…見覚えが無い。
こりゃ初だわ。
ライトさん、グリーンさんの後ろをキョロキョロとしながら歩く。
「あれじゃないかしら?」
グリーンさんが指差す方向を見ると金色に輝く時計台があった。
「あー、きっとアレだ。確かに分かりやすいな。」
ライトさんが待ち合わせ場所で間違い無いと賛同している。
昨日…丸一日、二人に京都市内の観光案内をした。
色々な場所を巡ったのだけど…そこで気づいたのはグリーンさんにライトさんは逆らえない。と、言うこと。
そんな、尻に敷かれているって訳じゃないけど、なんとなくそう思った。
なんて言えば良いのかな?自然とグリーンさんが思うように誘導されている感じ?
人間観察って、面白いな。
「すみません、遅れてしまいました。」
ニヤニヤしたがら、ライトさんの顔を見ていたら背後から声がかかる。
恐る恐る振り向いてみると、そこにはどこかで見た事がある男性の姿があった。
「えーーーー!?」
「えーーーー!?」
一瞬、先に声を発したのはボクの方だ。
うん、この反応…間違いない、夏の家族旅行の際に巨大プールで会った3人組のウチの1人だ。
まさか…この男がウィンドさんだったとは…複雑な心境だ。
あれ?どうして…複雑な心境に??
自己紹介を行うウィンドさんの姿をじっと見つめた。
あ…思い出した、ウィンドさんと一緒にプールに来ていた3人組のウチの1人が、この前、掲示板で写真をアップされていた女性だ。
ウチのお姉ちゃんに負けないくらいの美人さんだと見惚れた事を思い出す。
ウィンドさん、知っているのかな?
こういう事は言わない方が良いのだろうか?
「ブロッサムさん?」
考え事をしていたら、声を掛けられている事に気がつかなかった。
「あ、はい…名古屋めし、食べるっす。」
早速、ランチに移動するとの事。
ムーンさんも来るって聞いていたけど、急用が出来たらしい。
会うのが急に怖くなっちゃったとか?
だとしたらムーンさんもボクと同じ人見知りな可能性があるかも。
「うう…人が多いっす。」
地下鉄の駅に向かうと…さらに人が増えた。
この人たちは一体どこに行くのだろうか?
一人一人に行動する目的があって、一人一人に様々な事情があるのだろう。
初めて会って、今後は会うことが無いだろう人達…なんだか感慨深い。
「おー、味噌煮込みうどん。」
確かにザ・名古屋めしって代物だわ。
「名古屋って感じだよねー。」
「やっぱり、ウィンドさんも味噌好きなのかい?」
「うーん、普通だと思うけどなぁ。」
3人の顔を見ながら、ゆっくりと味噌煮込みうどんをいただく。
今、あたしは本名も知らない人達と、知らない場所でお昼ごはんを食べている。
すごく不思議。
だけど…思ったより違和感は無い。
咲華じゃなく、ブロッサムとして、ここに居るからなのかな?
これもゲームの延長?
「ブロッサムさんって、ゲームの中でより大人しいわね。」
「何?まだ緊張している?」
グリーンさん、ライトさんから突っ込みを入れられた。
「今が普通っす…ゲーム内の方がおかしい…」
ボソリと言葉を返す。
「にしても夏にプールで会った子がブロッサムさんだったとはねぇ。」
ウィンドさん、よく地味キャラのあたしの事を覚えていたな。
「こっちも、驚きっすよ。一緒に居た…女性2人はお元気ですか?」
気になっていた、あの掲示板の女性の事を聞いてみた。
「あー、2人共、元気だよ。そちらも、お姉さんは元気?」
あー、お姉ちゃんか…なるほどお姉ちゃんとセットだったから覚えていたのね。
思わず口元がニヤリとしてしまったじゃない。
「何?一緒に居た女性って?ウィンドさんの彼女?」
「なんてこった、ウィンドさんには彼女が2人も居るのかー?」
グリーンさんが前のめりになり顔を近づけ、ライトさんが額に手を添えて天井を見上げている。
ふふふ、面白い…
「ち、ちがうって…ただの幼馴染だよ。」
慌てて答えるウィンドさん。
そう、ウィンドさん…はっきり言って、あたしと同じ地味キャラ。
一緒に居た2人。美人さんと元気っ子は不釣り合いだな。
「ふふふ。」
「あ、ブロッサムさんが笑った。」
思わず笑ってしまった事をグリーンさんに指摘された。
でも…笑っても良いよね。
「あー、ウィンドさんにあの2人は勿体ないっすね。」
思った事を口に出す…ウィンドさん、歳上だけどな。
「ウィンドさん、言われちゃってるよー。」
ライトさんが、笑いながら言う。
「ちょっと、ブロッサムさん…まぁ、事実だけどな。」
頭を抑えながら答えるウィンドさん。
ゲーム内のウィンドさんは…何というかもっと威厳のある感じで、こんな事は言えない雰囲気だったけど。
実際に会うと、話しやすい感じだ。
初めてのオフ会…ゲーム内での会話とは全然違う。
でも、これはこれで楽しい。
「あの…この前、サウザントフェアリーを騒がせてた、幻の兎のギルドマスターの写真って、ウィンドさんの幼馴染っすよね?」
聞いちゃいけないと思って黙っていたけど…どうしても聞きたくなって、聞いてしまった。
あたしの言葉を聞いて、グリーンさん、ライトさんが動きを止めた。
しまった…めっちゃ空気悪くなったやん…
ウィンドさんも固まってしまった…
「あ、やっぱり…今の話は無しで。」
空気に耐えかね、思わず前言を撤回する。
「うーん…」
ウィンドさんは暫く考えたかのようで、唸ったあと…
「そうだよ、ブロッサムさんの記憶で合ってる。」
やっぱりか…でも、なんであの美人さんの写真が使われたのかな?結局、デマだったって話が広まっていたけど。
「そうなんだ…あの美人さんがウィンドさんの彼女かー。」
「だから違いますって。」
ライトさんが、まだ、からかっている。
「で…本当なんでしょ?あの美人の子が幻の兎のギルドマスター"イブニング"って話は。」
え?本当だったの?
笑いながらウィンドさんに詰め寄っていたライトさんも驚いた顔となった。
ウィンドさんからも笑顔が消えた。
「流石、グリーンさんだな…隠し事が出来ないじゃないか。」
そう返事をしたウィンドさんの顔をじっと見つめる。
「間違いだったという情報は、幻の兎の宰相が広めたらしい。」
あの漫画『閃光の執事』の主人公にそっくりな宰相さんか…凄い人だな。
一体、どういった方なのだろうか。
「それで…あの噂が本当の話だったって事はくれぐれも内密にして欲しい。」
ウィンドさんはバッと両手を机に広げて置いて頭を下げた。
「当然よ。」「あー、約束する。」
グリーンさんとライトさんは返事をし、あたしも全力で首を縦に振った。
「それにしても筆頭ギルドのマスターと、ウチのギルドのマスターがリアル知り合いだなんて、面白い事があるものね。ウィンドさんは知ってたの?」
「いや、あの写真流出事件で初めて知ったんだ。あと、俺が"永遠の風"のギルドマスターって事はイブニングさんには伝えてないんだ。」
「あら、どうして?内緒にしているの?」
「俺は幻の兎に所属していたけど…脱退した経緯があるかな。実際、どのように俺の…えっとウィンドの事をどう思っているか分からないから、なるべくゲームの事は話さないようにしてるんだ。」
「なるほど…賢明な判断ね。」
グリーンさんとウィンドさんの話をじっと聞いていたライトさんが声を出した。
「まぁ、イブニングさんが、とっても可愛い子である事には違いない。ウィンドさん、狙っちゃえよ。」
まだ言うか…この人は…
「だーかーらー、俺とは釣り合わないでしょ!」
ウィンドさんが否定すると、みんなで笑った。
あー、ちょっと堅苦しい雰囲気が和やかになった。
ライトさんが、空気を変えたのね。
大人の人間って…凄いわ。
「ふふふ…意外と行けるかも知れないわよ。」
グリーンさんが言うと真実味があるのが不思議。
ゲーム内での会話は楽しかった。
それは…"ゲーム内だから"かと思っていたけど、違った。
この仲間との会話が楽しいんだ。
オフ会、そして名古屋にまで、来て良かったな。
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