理想〜月代
◇登場人物◇
ギルド”永遠の風”メンバー
一条風斗~ウインド ギルドマスター。男子高校生
三好月代~ムーン 女子高校生
佐竹咲華~ブロッサム 女子中学生
六角右京~ライト 社会人(営業職)
細川翠 ~グリーン 社会人(事務職)
ギルド”幻の兔”メンバー
尼子夕凪~イブニング ギルドマスター。女子高校生
津軽真琴~トゥルース 宰相。女子高校生
待って待って、ウィンドさんと会っちゃうの?
リアルで会っちゃうの?
「本当に?」
ゲームの音声入力を切ると同時に大きめの独り言を言ってしまった。
京都から3人で来るって?一体、何なの?何がどうなっているの?
もしかして…これがオフ会っていうヤツ?
「ちょっと落ち着いて、私。」
これも独り言。
ハァハァハァ
走ってもいないのに息切れがしてきたわ。
えっと…どうしたら良い?
明日は…まったく予定が無いから行けてしまうわ。
名古屋駅に集合…
どうする?行く?行かない?
うーん。
会ってみたい。
ウィンドさんに会ってみたい。
けど…リアルの私は、ムーンと違って色黒で、ショートカットで…目も大きくない。
全然違うじゃないの!
誰?ムーンのキャラクターを作ったのわ!
…私…だな。
そうだ!夕凪に相談しよう!
スマホをとり出して…
って、待てよ。
夕凪は何故か私と風斗をくっつけたがっているのだったわ。
最近、露骨にそれを出して来ているし…
「この浮気者!」
なんて訳の分からない事を言われかねないわね。
ダメね、相談したら最後、「行くな」って言われるに違いないわ。
うーん、他にこんな事を相談出来る友達なんて居ないし…
そもそも私が"サウザントフェアリー"をしているなんて、知っているのは…あー、あと風斗か。
って、なんで私が風斗に相談しないとならないのよ!
あ、呼ばれているみたい。
完全に固まっていたムーンを、あわてて動かす。
「おーい、ムーンさーん。来れるー?ウィンドさんは来れるってー。」
無邪気な感じで呼びかけているグリーンさん。
なんて呑気な…こっちとしては一大イベントなのよ。
そもそも知らない人と会う事に抵抗が無いのかしら?
大人の女性、分からないわぁ。
とにかく…今、考えているから、ちょっと待って。
ムーンを操作して考えているポーズを取らせる。
明日の話だから、今日、返事しないとだよねぇ。
「ムーンさん、予定が無いなら来て欲しいな。」
「あ、はい…行きます。」
しまった、ウィンドさんに誘われちゃったから、即答しちゃったじゃないの!
「やったー!」
ライトさんとブロッサムさんがハイタッチして喜んでいる。
あちゃー、こうなったら行くしか無いわね。
この緊張感は…まるで大会前のようにドキドキしてきたわ。
それにしても…
ウィンドさん、一体、どういう気持ちで私を誘ったのかな。
軽い気持ちかな?
むしろ…その方が良いかも。
もし、可愛い子が来るって期待されちゃっていたら、きっとガッカリされるわ。
あぁ…今日は眠れるな.。。。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
しまったー!
寝過ごしたー!
早めに起きて準備万全にしようと思っていたのにぃ〜。
あぁ、昨日、なかなか寝付けなかったからだわ。
もう!
って、自分に怒っても仕方ない、とにかく急いで準備しなくっちゃ。
えっと、服装は夜に決めといたから…
「ちょっとうるさいわね。」
バダバタと騒ぎながら支度をしていたら、お母さんに怒鳴られてしまった。
「ちょっと、急いでるのー!」
「あら、どうしたの?スカートなんか履いて、珍しいわね。」
急いでいるって言っているでしょ。
人を珍獣でも見るような目で見ていないで、そこをどいて。
「朝ごはん、いいから!」
「あら、もしかしてデート??」
「ち、違うわよ!」
「ふふふ…頑張っていらっしゃい。」
違うって言っているでしょ!
まさか顔も知らないオンラインゲーム仲間と会うなんて事は言えず。
しかも、その中の1人の男の子の事が気になっている。なんて事は、絶対内緒!
あー、いつものこの靴はスカートに合わないじゃないの!
「お母さん、なんか…可愛い靴、無い?」
「そんなのある訳ないじゃ…あ、随分、前に買ったのなかった?ほら、親戚の結婚式の時に買ったヤツ。」
「あ!あれ、いいかも!」
「えーと、確かこの辺に…はい、あったわよ。」
「ありがとう!いってきまーす!」
「はーい、気をつけてね。」
うん、この白いパンプスならスカートに合うわ。
お母さん、ナイスー!
待ち合わせの時間は…うん、バスにさえ間に合えば大丈夫ね。
「あー、さらに緊張してきたー。」
あえて声に出して緊張を和らげる。
よし、バス停が見えてきた。
って…
しまった…この感覚は…
春に体験した足の感覚…スローモーションとなって目の前が暗く歪む。
ダメ…嫌…
陸上部の顧問の先生の顔、両親の顔、仲間の顔。
みんな…ガッカリしていたあの顔が頭をよぎる。
「クッ痛っ…」
声に出して、その場にうずくまった。
ううう…そんなに速く走っていなかったのに。
靴?慣れない靴を履いたから?
あー、もう!
治ったのかと思っていたのに!
情けない、情けない、情けない…
心の中で何度もその言葉を繰り返した。
「大丈夫ですか!?」
「あ、はい…ちょっと足を痛めて。」
って?風斗?
声がした方を振り返ると、そこには風斗の姿があった。
「三好?どうしたんだ?大丈夫か?」
「あ、うん…ちょっと大丈夫じゃないかと。」
悔しいけど、風斗に頼るしかないわね。
「救急車…呼ぼうか?」
「そこまでは大丈夫。春と同じ感じだから、痛めた場所は分かってる…悪いけど、ウチに行ってお母さんを呼んできてくれないかな?」
あーぁ、お母さんも、またガッカリするだろうな。
「とにかく、あの縁石まで行って座ろうか。」
「うん。」
風斗の肩を借りて、歩道の横にある植え込みに腰を降ろした。
「じゃぁ。呼んでくるからな。」
「うん、ごめんね。ありがとう。」
風斗が走る背中を見つめる。
すると…あれ?何か風斗が小さく見えてきた。
なんだろう?これ…小学生の時にも見たような光景だわ。
あー、そうだ。
小学生の時も私が怪我をして、風斗が走ってお母さんを呼びに行ってくれたんだったな。
あの時は…たしか膝を擦りむいたんだっけ。
夕凪が大騒ぎして…私より先に泣いちゃって、そしたら何だか私まで涙が出てきて。
風斗は「待ってろ!」って一言だけ言って走って行ったんだ。
色々と忘れちゃってるな。
さて…グリーンさん達に連絡しないと。
って、ゲーム内にメッセージを残すしかないわね。
スマホから"サウザントフェアリー"にログインして、メッセージを残す。
日曜日だけど、当然…ギルドのみんなは誰もログインしていない。
みんな…近くまで来てるのに。
グリーンさん、ライトさん、ブロッサムさん…ウィンドさん。
「はぁ。」
ため息をつくと、ウチの車が走ってくるのが見えた。
「ちょっと、大丈夫?」
お母さんは車から降りると同時に心配そうな顔をした。
やっぱり、その顔になっちゃうわね。
「うん、先生のところに連れてってくれる?」
「俺が肩、貸すから…立てるか?」
助手席から降りて来た風斗がしゃがんで背中を向ける。
「風斗くん、お願い。」
お母さんもそう言いながら後部座席のドアを開ける。
私は風斗に支えられながら車に乗り込んだ。
「風斗、ありがとう…今度、お礼をするわ。」
作り笑いをしながら、手を降った。
心配そうな顔をする風斗に、何でもないって顔を見せたかったから。
「残念だったわね…せっかくの風斗くんとのデートが。」
ん?お母さん…何を言ってるの?
「ち、違うわよ…たまたま会っただけよ!誤解よ、誤解。」
思い返してみると、確かに誤解されるシチュエーションだったわ。
車に揺られながら、外の風景を眺める。
そういえば風斗、オシャレな格好してたな。
デートに行く所だったのかしら?
って、あの風斗よ…まさかデートの訳、無いじゃない。
グリーンさん達、メッセージに気がついてくれたかな?
行くって言っておいて、行かないなんて…ごめんなさい。
あーぁ、ウインドさんに…会いたかったな。
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