理想〜風斗
◇登場人物◇
ギルド”永遠の風”メンバー
一条風斗~ウインド ギルドマスター。男子高校生
三好月代~ムーン 女子高校生
佐竹咲華~ブロッサム 女子中学生
六角右京~ライト 社会人(営業職)
細川翠 ~グリーン 社会人(事務職)
ギルド”幻の兔”メンバー
尼子夕凪~イブニング ギルドマスター。女子高校生
津軽真琴~トゥルース 宰相。女子高校生
「ちょっと待ってくれ。いきなり過ぎるだろ。」
夜、サウザントフェアリーにログインしてくると同時にグリーンさんが言い出した言葉に対し、すぐに反応を返した。
「うん、急に予定を変更する事にしたんだ。」
ライトさんが、ごく普通に言う。
京都旅行に行っているグリーンさんとライトさん。
急に"明日は名古屋に行くから、集合で。"
なんて事を言い出した。
確かに明日は日曜日だから行けるのだけど…
大人ってこんなに突拍子の無い事を言い出すものだったか?
「ウインドさん、ムーンさん、ばんわっす!」
少し遅れて来たのはブロッサムさんだ。
3人は京都で会っているんだったよな?
「今、3人で一緒にネットカフェに来てるのよー。」
いやいや、せっかくの京都旅行なんだから、もっと違う場所に行くべきかと思うんだけど…
「ブロッサムさんも一緒に名古屋に行くから。」
えー、ライトさん達、ブロッサムさんまで巻き込んだのか…これはモンスター狩りしている場合じゃないな。
「あの…私も行くんですか?」
オドオドとした様子で会話に入るムーンさん…そりゃビックリするわな。
急な展開に俺も動揺を隠せない。
「そうよー、是非是非。」
「絶対、ムーンさんも驚くから。」
グリーンさんとライトさんは完全に乗り気だ。
グリーンさんはともかく、ライトさんはこんなに強引な感じじゃ無かったと思うのだが…
「二人が新幹線代を出してくれるって言うから…思い切って行くっす。」
ブロッサムさんは、二人と会う事も躊躇してた筈なのに、一体、どうしちゃったんだ?
「で、二人共、名古屋まで出て来れる?」
グリーンさんの強引な台詞に勢いを感じる。
今日一日で、何があったのだろうか?
「まぁ、名古屋は近いんで問題ないですが…」
特に用事もなく、あわよくば明日はずっとログインしようかと思っていたくらいなので、素直に行ける事を伝えた。
「私も…名古屋は近いんで行けますけど…」
ムーンさんも行けるって…
その言葉に急に動悸が激しくなるのを感じた。
え?ムーンさんに会えるって事?
それは…嬉しい…
かもしれないけど、俺はどこにでも居そうな地味な人間だ。
きっとムーンさんは可憐な方…どこかのお嬢様か何かに違いない。
ムーンさんが、俺のリアルの姿を見たら…ガッカリしてしまわないだろうか?
「じゃぁ、決定ね!」
「よっしゃ!オススメの名古屋メシ、教えてくれ。」
「うっす、明日、楽しみっす!」
3人が揃って歓喜の声をあげた。
「あ、はい…」
「わかりました。」
対して、俺とムーンさんは微妙な反応を見せる。
「何よ、暗いわねー。テンション上げてきましょうよ。」
いや、グリーンさん達、3人のテンションについていく自信がないです。
「それじゃぁ、俺達、祇園の街に繰り出すから。」
名古屋駅の集合場所と時間だけ決めた後、ライトさんの言葉と共に、3人はログアウトした。
「何だったんだろう?」
「ですねぇ。」
ムーンさんと二人、取り残されてしまい、急に静かな空間が広がった。
風に吹かれて草木が揺れる光景がゲーム内での平穏を感じる。
「えっと…集合時間は、お昼前だからランチに行く場所を決めないとですね。」
「あ、はい…やはり名古屋名物が良いのでしようか?」
取り残されたムーンさんと共に明日の行動予定を話し合った。
会うのか…ムーンさんと…ついに会うのか。
ずっと…惹かれていたムーンさん。
会うのは嬉しく思う。
だけど…ガッカリされないかと不安にも思う。
嬉しさと不安…半分半分といった所だろうか。
「名古屋コーチンのお店なんてどうかな?このお店とかどう思う?」
「ランチの後、名古屋城に行くのはどうだろう?」
ゲームはそっちのけとなり、ムーンさんと二人で名古屋観光の提案を模索する。
「あー、いいかも。それだとこのお店は遠いから、こっちお店はどうかな?」
「へー、そんな店、あるんだ。ムーんさん、詳しいね。」
「名古屋市内在中じゃないから、そんなに詳しくは無いよ。友達と行った事があるだけ。」
「いや、俺はまったく知らないから、助かる。」
ムーンさんと二人でプランを考えるのは、とても楽しかった。
こんなにもドキドキした感情は、いつ以来かな?
もしかして…初めてなのかも。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
翌日、俺は集合場所へと向かった。
集合場所は有名な時計の前にした。新幹線からなら分かりやすいだろう。
が…道中、少しトラブルがあって遅れてしまった。
「すみません、遅れてしまいました。」
前日に、グリーンさんとライトさんの服装を聞いていた為、何となくこの方々かな?という事が分かった。
が…あれ?
遠目に、あの子がムーンさんかな…
と思っていた子が、間近に見るとどこか見覚えのある子である事に気がついた。
「えーーーー!?」
「えーーーー!?」
お互いに叫びあうと、隣に居たグリーンさんとライトさんであろう二人は驚いた様子だった。
「何?二人は知り合いなの?」
女性の方の問い掛けに、思わず口がパクパクとする。
「夏にプールで会った。。。子だよね?」
やっとの事で声にする事が出来た。
「うっす…会ったっす。」
もしかして、この子が…ムーンさん?って、この言葉使いは…
「もしかして、ブロッサムさん?」
「うっす、ブロッサムっす。」
やり取りに対して、隣でニヤニヤと笑う男女二人。
これは…驚かされた。
ゲーム内では、ゴリゴリマッチョキャラで、てっきり男性だと思っていたブロッサムさんが、女の子だったなんて…
しかも夏に行った巨大プールで会った事のある女の子。
そうだ…美人のお姉さんと来ていた女の子。
京都から来ていると言っていた事を思い出した。
それにしても、この子がブロッサムさんだったなんて…なんて、世間は狭いのだろうか。
「あのぉ〜、見すぎっす。」
不機嫌そうに睨まれてしまう俺。
そうだ…この子、こんなキャラだったわ。
「君がウィンドさんかー、はじめまして。ライトです。」
「もう、分かってると思うけど、グリーンよ。」
そうだった、ちゃんと挨拶をしないと。
「はい、ウィンドです。いつもお世話になっています。」
すると、グリーンさんからお土産を渡された。
「京都土産よ、良かったら食べてね。」
「ありがとうございます。」
お土産を受け取ると丁寧に返した。
なんだろう?俺の近くには居ない感じの方だな…とても清楚で感じの良い女性だ。
「なんか、思ったより真面目そうな青年だな。」
そう伝えるライトさんは、思ったより不真面目そうな印象だった。
ゲーム内では、めっちゃ真面目な感じだからだろうか。
それとも、今回の急な話で違った印象が定着してしまったのだろうか?
「…。」
そして、ブロッサムさんは相変わらず俺を睨みつけている。
何か悪い事をしたのだろうか…何となく目を合わせる事が出来ない。
「あとは、ムーンさんの到着を待つだけですね。」
俺はそう伝えると、3人に昨日の夜にムーンさんと計画した名古屋観光プランを提案した。
が…何分待ってもムーンさんが登場しない。
「ちょっと、サウザントフェアリーにログインしてみるわね。」
グリーンさんは、そう言うとスマートフォンを取り出してログインした。
オンラインゲーム、サウザントフェアリーはスマートフォンからもログイン出来る。
ただ、操作性が悪すぎてバトルには適さない。
せいぜい様子を見る事くらいに使える程度だ。
「あ、なんかコメントがあるわ。来れなくなったんだって。謝ってるわ。」
グリーンさんがゲーム内に残されたムーンさんからのコメントを確認してくれた。
「えー、何かあったのかなぁ?残念だけど、4人で行こうか。」
「残念っす。」
ライトさん、ブロッサムさんも残念そうだ。
昨日の夜の雰囲気だと、来る気があったようだけど…ムーンさん、どうしちゃったのかな?
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