提案〜右京
◇登場人物◇
ギルド”永遠の風”メンバー
一条風斗~ウインド ギルドマスター。男子高校生
三好月代~ムーン 女子高校生
佐竹咲華~ブロッサム 女子中学生
六角右京~ライト 社会人(営業職)
細川翠 ~グリーン 社会人(事務職)
ギルド”幻の兔”メンバー
尼子夕凪~イブニング ギルドマスター。女子高校生
津軽真琴~トゥルース 宰相。女子高校生
「秋だねぇ〜。」
「秋ねぇ〜。」
暑い夏も終わり、秋という季節がやってきた。
足で売上を稼ぐ営業マンの俺にとって、夏の暑さは特に堪える。
9月になっても暑い日が続いていたが、最近、ようやく収まってきた印象だ。
今日は涼しさを感じる…秋の到来はとても嬉しい。
同棲している彼女の翠も暑いのは苦手だ。
二人して安堵しながらまったりとした休日を過ごしていた。
「ねぇ、たまには旅行にでも行かない?」
俺と同じくインドア派の翠から想定外の言葉を投げかけられた。
正直に言うと休みの日は家でゲームをして、まったり過ごす方が好きなのだが…"たまには"という台詞を読み解くと、そういえば二人で旅行に行ったのは一年程前だったな。と思い返した。
「あぁ、たまには…良いか。どこか行きたい場所でもあるのか?」
涼しくなってきた事だし、旅行も楽しいかと思い直して翠に希望の行き先を尋ねた。
「うーん…特に希望は無いかな。」
その答えに本当に旅行に行きたいのか?と疑問に思いつつ彼女の横顔をチラリと見た。
「じゃぁ…草津温泉にでも行くか?」
観光と言えば温泉かな?と思い…何となく提案してみる。
「うーん…どうせなら、もうちょっと遠くが良いかなー。」
だったら自分で決めてくれと思いつつ、プレイ中のオンラインゲーム"サウザントフェアリー"にて、技を繰り出した。
上級職、魔法剣士となり一気に強くなって楽しい。
ただ、新しく覚えた上級職の技は消費MPが大きい事が問題だ。
「とりあえず…そろそろギルドに合流しようか?」
二人でモンスター狩をしていたが、飽きてきたので翠にそう伝えると、翠は操作しているキャラクター"グリーン"の腕で大きく○印を使った。
隣に居るのだから話せば良いものを…翠の言動は、たまに面倒に感じる。
「皆さん、こんばんわー。」
ウィンドさん、ムーンさん、そしてブロッサムさんと挨拶を交わす。
と…その時。
「そうだ、ブロッサムさんって京都だったよね?今度、遊びに行っていい?」
え?翠…突然、何を言い出すんだ?
以前から突拍子のない事を言い出すのは分かっていたが、今回の台詞にはいつもよりも驚いた。
旅行に行く事には賛同したが、京都に行くなんて話は全く出ていないぞ。
「え?ボクに聞くんっすか?」
そりゃ、ブロッサムさんも驚くわな。
「うん、だって…ブロッサムさんにも会いたいから。」
いやいや、ゲームの規則で”出会いを目的とした発言の禁止”ってあるだろ。
って、以前「ダメだ」と言って翠と喧嘩になったんだな。
「ボ、ボ、ボクに会うんっすか!?」
「うん、せっかく京都に行くんだから、会わないと損でしょ。」
注意すべきか、どうしようかと悩んでいるうちに話が進んでいる…で、俺達は本当に京都に行くのか?
チラリと翠の横顔を見ると、ニヤニヤとしているのが分かった。
「あのぉ~、ボクに会っても何も良い事なんて無いっすから。」
ブロッサムさんは、完全に困っている様子だ。対する翠は、完全に楽しんでいる。
「グリーンさん、ちょっと落ち着いて。」
ブロッサムさんが困っている事を察したウィンドさんがストップをかけてくれた。
流石ギルドマスター、ナイス助け舟。
「あ、そうだ!ウィンドさんと、ムーンさんも一緒に京都に行こうよ。」
ちょっと待て翠…何故、そういう話になるんだ?
「え?京都??」
ウィンドさん…完全に巻き込まれたな。
「え?私もですか?」
静観していたムーンさんも巻き込まれている。俺は少し頭痛がしてきた。
「二人は愛知だったよね?近いっしょ。」
関東住の俺達から見ると確かに愛知⇔京都は近いが…そんなに気軽な距離では無いぞ。
無理に止めて、また翠と喧嘩になってしまう可能性を考えてしまい、何も口を出せずにいる。
「愛知ですけど…京都、すごく遠いです。」
ウィンドさんと、ムーンさんは声を揃えて答えた。確かに、高校生の二人にとっては大した距離だろう。
「じゃぁさ…私達が京都に行った後、愛知に寄ろうか?」
ここでやっと翠は俺の方に顔を向けて問い掛けて来たが…ちょっと待て。一体何日、旅行に行くつもりだ?
「いや、そんなに休みを取れないと思うが…」
完全に翠のペースになっているので、なんとか食い止めようと現実を伝えた。
「うーん、じゃぁ、とりあえず今回は京都ね。ブロッサムさん、良い?」
とりあえず今回は…って事は、愛知旅行にも今後、行くという事なのか?
安堵したのか、オロオロとしていたウィンドさんとムーンさんの動きが止まった。
「京都旅行は良いっすけど…ボクはちょっと…」
「えー、良いじゃん、京都を案内してよー。」
困惑し続けるブロッサムさんに対し、翠はさらに追い込みをかける。
確かに、現地の方に案内してもらえれば良い飲食店などにも巡り合えそうだが…
「おい、翠…ブロッサムさん、困ってないか?」
俺はゲームの音声入力機能をオフにして、隣にいる翠に問いかけた。
「困っていそうだけど…会えば、きっと楽しいよ。」
音声入力機能をそのままにして答える翠…当然、ゲーム内からも同じ返答が聞こえている。
「ボクに会うと…驚くかも…ちょっと考えさせて欲しいっす。」
ブロッサムさんは、そう答えると翠も納得したようで、5人でモンスター討伐へと向かった。
普段は大人しい翠だが、ゲーム内では大胆になる。言葉も行動もだ。
翠とグリーンとは別人かのように時々、思う。
リアルでブロッサムさんと会ったら、翠ではなくグリーンの方で話す事が出来るのだろうか?
「ねぇ、いつ行こうか?早めに決めてブロッサムさんに伝えないと。」
「そうだね、宿の状況を見て決めようか。」
いつの間にか、旅行先が京都に決まっていたな…翠は完全にブロッサムさんに会う気でいるが、会えなかったとしても旅行を楽しみたいところだ。
「翠…最初から京都に行こうとしていたのか?」
「いーえ、ブロッサムさんを見て、思いついたの。」
少し疑問に思ったので京都という行先をいつ決めたのか問いかけたが、どうやら思いつきだったようだ。
「ブロッサムさんに無理やり会うのは無しな。」
「そうね、学生さんだから…お酒も無理だなー。誘惑しちゃおうかしら?」
「おいおい、彼氏の前で中学生を誘惑するなよ。」
「ふふふ、冗談よ。でも…なんとなく、可愛らしい男の子な気がするわ。」
「自称、中学生だから…もしかしたらオッサンかもよ。」
「そういえば、”ボクに会うと驚くかも”って言ってたわね。ホントにオッサンかも。」
そう言いながら翠は笑っている。
モンスターを討伐しながら、そんな会話をしていると”俺もブロッサムさんに会ってみたいな。”と思うようになった。
京都旅行、楽しみだ。
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