新生〜翠
◇登場人物◇
ギルド”永遠の風”メンバー
一条風斗~ウインド ギルドマスター。男子高校生
三好月代~ムーン 女子高校生
佐竹咲華~ブロッサム 女子中学生
六角右京~ライト 社会人(営業職)
細川翠 ~グリーン 社会人(事務職)
ギルド”幻の兔”メンバー
尼子夕凪~イブニング ギルドマスター。女子高校生
津軽真琴~トゥルース 宰相。女子高校生
「え?」
思わず、驚きの声が漏れる。
フェアリーの里で見たのは、神官ユニティが住む教会へと続くプレイヤー達の列だった。
「こんなにも上級職への転職希望者が居るのか…」
隣で並ぶライトもため息混じりで言葉を発する。
「これだと、時間がかかっちゃいそうね。」
同じく転職希望者であるムーンさんも困った様子で列に並んだ。
「時間がかかるも何も、さっきからまったく進んでいない。」
「あら、確かあなたは…火の将軍の参謀の…」
前に並んで居たのは私が筆頭ギルド"幻の兎"に所属していた時に知り合った方だった。
「あぁ…カイロだ。元、風の将軍よ。」
「ちょっと、風の将軍はヤメてよね。」
「ちゃんと"元"と呼んだだろう…風のは…確かグリーンという名だったか。」
「まぁ、いいわ…で、カイロさん、進んでないって一体どういう事?」
「言った通りだ…俺は1時間程前に、ここに来たが一人も転職が終わっていない。」
「えー、1時間も並んでいるの?」
「そうだ…」
イライラしているのか、ただでさえ怖い風貌がさらに怖く感じる。
「ユニティさん、居ないのかな?」
列の前の方を覗き込むように見るも、まったく分からない。
「俺が様子を見てくるわ。」
そう伝えるとギルドマスターのウィンドさんが前方に向けて歩き始めた。
「あ、僕も行くっす。」
ブロッサムさんがウィンドさんの後へと続いた。
確かに、この二人はすでに上級職なのだから、上級職へと転職する為のこの列に並ぶ必要は無い。
「よろしくねー。」
並ばないといけない私とライト、ムーンさんは見送った。
「あれが"永遠の風"のギルドマスターか。」
火の将軍の参謀、カイロがボソリと呟いた。
「そうよ、"幻の兎"のギルドマスターのイブニングさんとは、違うタイプのマスターね。」
「うむ…俺には彼の良さが分からないな。」
「そうね、分からないと思うわ。どちらがマスターに適しているとは断言出来ないからね。」
ギルド"幻の兎"において、火の将軍率いる軍は一軍と言っても過言じゃない。
その参謀として君臨していたカイロは、きっとイブニングさんの運営方針に疑問を抱いた事は無いのでしょうね。
ほどなくするとウィンドさんとブロッサムさんが戻って来た。
「ダメだ…一番前の人に聞いたけど、2時間待ってても教会が開く気配が無いらしい。」
「あらら…2時間も待てないわねぇ。」
せっかく来たけど、諦めて今日は帰ろうかと思う。
「ユニティさん、どうしちゃったのかしら?大丈夫かな?」
「ねぇ。病気とかじゃなければ良いんたけど。」
ライトとムーンさんからは心配する声を聞いた。
「うーん、大丈夫だと思うよ。」
「そっか…大丈夫かぁ…ってユニティさん!?」
あっけらかんとした顔で背後から声を掛けて来たのは、神社の主であり、転職を司るフェアリーであるユニティだった。
「ちょっと…何やっているんですか?」
「どうして列に並んでいるんですか?」
ライトとムーンさんが驚きの声を上げながら疑問を投げかけた。
「いや…なんか疲れちゃって。」
「疲れちゃってじゃないですよ…みなさん、ユニティさんを待っているんですよ。
前に並んでいる"幻の兎"のカイロさんは、"なんだ騒がしいなぁ"といった感じでこちらを振り返った。
初めて上級職への転職に訪れたのだからユニティの事は知らないのだろう。
「とにかく…仕事をしてくださいよ。」
ウィンドさんが依頼すると、ユニティは膨れ面になった。
「上級職の事が解禁になってから、毎日のように沢山のプレイヤーが来るのよ…運営め…こっちの身にもなれっつうの。」
いや…どちらかと言えばユニティも運営側よ。
「みんな並んでるっすよ。」
困ったようにブロッサムさんも伝えた。
並んでいるみんなの思いを代弁した形だ。
「嫌よ…嫌。私だって休みは欲しいわ!」
まぁ、確かに…これだけの列を見れば嫌になる気持ちも分からなくも無い。
「ユニティさん…大変なのは分かるけど、これはユニティさんにしか出来ない仕事なの。」
ムーンさんも必死な様子で訴えかけた。
「うーん。」
困ったような声を出すユニティ。
「そうだよ、ユニティの能力は凄いんだ!キミは立派なんだよ。他の誰にも出来ない仕事だ!」
これが営業マンのトーク力か?ライトも必死にユニティを持ち上げている。
「うーん。」
唸りながらも、ユニティの口元は少し笑ったような気がした。
「そう、ユニティさんは、やれば出来る人よ!流石よ!」
やれば出来る…すぐ暗くなりがちなウチの部署の上司にいつも投げかける言葉だ。
「じゃぁ…ちょっとだけ。」
よし…上手くいったわ。
てか…案外、簡単だったわね…
同じ部屋でPCに向き合うライトと共にガッツポーズを作った。
ユニティが教会に戻ってから、しばらく順番を待って、私たち3人は無事に転職を成功させた。
グリーン〜魔法使い+棒使いにて、上級職"賢者"
ライト〜剣士+魔法使いにて、上級職"魔法剣士"
ムーン〜魔法使い+格闘家にて、上級職"魔導戦士"
「やったわ、ついに上級職よ!」
ライトとムーンさんと共に喜びを分かち合った。
「3人とも魔法を使える上級職のようだね。」
ウィンドさんの質問を受け、改めてステータスを見ると、確かにマジックポイントが高い事に気づき、答える。
「確かに、魔力量が半端なく高いわ。」
ライトは、どうやら違う様子。
「俺は攻撃力と魔力が半々みたいだな。」
ムーンさんは少し首を傾げながら言う。
「私は、魔力の方が少し高いわね。これからの成長でどうならのかしら。」
「僕は、全然、攻撃力重視っす!」
まったく聞いてなかったブロッサムさんが叫んだ。
「そりゃ、ブロッサムさんは"狂戦士"だからな。」
ウィンドさんが言うとその場は笑いに包まれた。
「ウィンドさんが"侍"…バランスの良いパーティになったかもね。」
ライトさんが言うと、ウィンドさんが頷いた。
「あぁ…新生"永遠の風"…一緒に楽しんで行こう!」
「おー!」
「おー!」
「おー!」
「おー!」
ウィンドさんの掛け声にみんなが応えた。
「おー!」
って、どうしてユニティまで居るのよ!
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