掲示板〜夕凪
◇登場人物◇
ギルド”永遠の風”メンバー
一条風斗~ウインド ギルドマスター。男子高校生
三好月代~ムーン 女子高校生
佐竹咲華~ブロッサム 女子中学生
六角右京~ライト 社会人(営業職)
細川翠 ~グリーン 社会人(事務職)
ギルド”幻の兔”メンバー
尼子夕凪~イブニング ギルドマスター。女子高校生
津軽真琴~トゥルース 宰相。女子高校生
私の親衛隊の一人から手渡されたスマートフォンの画像を見て息が詰まった。
何コレ。昨日、ネット掲示板で見た"私の写真"とまったく同じじゃないの!
私は思わずスマホの持ち主の顔を睨みつけた。
この子が、あの掲示板にこの画像をアップした?
「これらの写真を今すぐに消しなさい。」
私の声を聞き、震えながら頷いている。
と…その時、隣にいた風斗が制止した。
「待て。その画像をネット掲示板にアップしたのは誰だ?」
え?どういう事なの?
何故…風斗が、オンラインゲーム"サウザントフェアリー"の掲示板の事を知っているのよ。
「水野、お前だな…」
じっと見続けていた風斗の口から出た言葉。
はっと我に帰り、親衛隊の方に目を向けると、スマホの所持者では無く、後ろにいた眼鏡の子が動揺しているのが分かった。
この子は…この前の花火大会の時にバスで居合わせた子ね。
「おい、水野…どういう事なんだ。ちゃんと説明してくれ。」
風斗は少し声を荒げながら言う。
他の親衛隊の子達は、よく分かっていない様子でオロオロとした態度を取っている。
「水野君…説明しなさい。」
私が静かに…そして強めに言葉を発すると、その子は口を開いた。
「あ、あの…俺、どうしても夕凪さんに振り向いて欲しくって…」
とても小さく、弱い声…私が嫌いな態度ね。
「掲示板に私の写真をアップしたら…私が振り向くとでも思った?」
「だって…こんなに一生懸命なのに、まったく気にもかけてくれないじゃないか!名前さえ覚えてくれていない。なのに…どうして一条とは、親しいんだ!?」
さっきまでの小声から一転、震えながらも大きな声となる。
あら?大きな声…出せるじゃない。
「おい、水野…掲示板に画像をアップしても、お前の事を気にかける訳無いだろ?」
風斗が、ため息混じりで意見を伝えた。
「いや…一体、誰が?と…考えてくれた筈さ。俺の事を考えてくれた筈さ…」
そう言いながら、水野とやらは笑い出した。
何故、笑うの?一体、何が面白いの?サッパリ分からない…むしろ背筋に寒気が走った。
パシンッ
乾いた音が教室内に響き渡る。
「え?」
さっきまで笑っていた水野が頬を抑えて静かに立っていた。
「あんたみたいな卑怯者、夕凪が好きになる訳無いじゃない!ネットに載せた画像、消しなさいよ!」
水野の頬をぶったのは月代ちゃんだった。
え?月代も…知っているの?あの掲示板の事を知ってる?
「手遅れだよ…ネットの世界はスピードが早いんだ。」
水野の声は…また小さくなった。
「それでも…消すんだよ。投稿者なら消せる筈だ。」
毅然とした態度で諭す風斗…流石ね、昔と変わらずカッコいいわ。
「あぁ。」
水野はコクリと頷くと、頬を抑えながら振り返る。
「あ、待って…どうして、私が…その…私の正体を知っているの?」
疑問に思っていた事を問いかける。
「あぁ…夕凪さんのSNSの投稿を見たんだよ。チラってPCの画面が写っていてね…それで俺も"幻の兎"に加入したんだ。」
「え?もしかして…あの呟きサイトの事?」
どうしてそのSNSが私だって分かったのよ。
「夕凪さんのSNSを見つけたのは俺だよ。調べたんだ。その掲示板ってのは、まったく分からないけど…」
スマートフォンを見せてきた子が伝えた。
「調べるって…君たち、もうストーカーの域じゃないの。」
月代ちゃんの声は怒りに震えている。
にしても…あのSNSまでバレていたなんて。
今回の件、私も軽率だったかも知らないわね。
「あの…失礼します。スミマセンでした。」
事情をよく分かっていなさそうな残りの親衛隊二人も頭を下げ、足早に教室から出て行った。
「ふぅ…」
なんか、どっと疲れが出たわ。
と、ここで我に帰り周りを見渡すと、クラスメイト、お客さんの全員が私達の方を見ている事に気づく。
「あ、スミマセン…お騒がせしましたー。ちょっと、休憩、いただきまーす。」
私はそう叫ぶと、風斗と月代を連れ出して、休憩スペースに使われていた教室へと入った。
「はぁ…一体、どういう事なの?」
ゆっくりと椅子に座りながら呟くように言う。
「水野が掲示板に画像をアップした犯人だったって事だな。」
風斗…それは言われなくても分かっているわよ。
問題は、他にもあるのよ。
「えっと…風斗も月代ちゃんも…サウザントフェアリーをプレイしてるって事?」
こうなったら聞くしか無いわよね…
「あ、あぁ…」
「う、うん…」
二人も顔を見合わせながら、答えている。
「二人はお互いにプレイしていた事は知っていたの?」
なんだか尋問のようになってるわね。
「いや、三好までプレイヤーだとは思わなかった。」
「まったく知らなかったわね。」
お互いに驚いた様子…なんだか不思議な感覚。
「で…プレイヤー名は何?」
「いや、それは…答えられない。」
私の問いに、すぐさま反応する風斗。
「私も…内緒にしたい。」
月代ちゃんもか…
「ちょっと、私が誰かは分かっちゃってるのよね?」
確認の意味もあり、聞いてみた。
「あぁ…イブニング様。」
「えぇ…イブニング様。」
息を揃えたかのように答える二人。
「なんで…様付けなのよ。フフッ。」
思わず吹き出しちゃったじゃないの。
「そりゃ、筆頭ギルドのマスター様だからな。」
「うん、私、結構…憧れてるのよ。」
「はぁ…お願いだから普通に呼んで。えっと…二人は私のギルドメンバーじゃないわよね?」
「あぁ、俺は違う。」
「私も…違うギルドに所属しているわ。」
「にしても…いつも一緒に居たのに、気づかず同じゲームをしていたなんてね。」
3人で顔を見合わせると少し笑顔になった。
「ねぇ、二人とも私のギルドに来なさいよ。幹部にしてあげるわ。」
思いつきで言ってみたけど、二人はすぐに返事をする。
「俺…今のギルドが気に入っているから…」
「私も…今のギルドが落ち着くの。筆頭ギルドになんて、私なんかが行ける実力も無いしね。」
フラれちゃったわねー。
まぁ、芯が強いところが風斗がカッコいい所。
謙虚な所が月代ちゃんの可愛い所。だから許してあげるわ。
「まぁ、それぞれで楽しもうや。」
風斗の言葉に私は頷いた。
確かに…ギルド"幻の兎"は私にとって大切な居場所。
思いっきり素の自分を出せる唯一の場所かもしれない。
誰もリアルの私の事を知らないから、楽しめるのかも。
「あ、さっきの…水野とやらをギルドから追い出さないとだわ。」
「そうね…でも、誰だか分かるの?」
確かに…プレイヤー名を聞いておくべきだったかしら。
「自ら出て行くんじゃないかなぁ。」
「有能な部下が居るから調べさせるわ。」
風斗の予想に私がそう答えると…
「流石、イブニング様。」
と、二人は口を揃えた。
「もう、勘弁してー。やっぱり二人のプレイヤー名、教えてよ。私だけバレてるなんてズルいわー。」
「えー、嫌だよ。」
「私も嫌よ…恥ずかしいわ。」
「その恥ずかしいのが今の私じゃないの!」
「イブニング様は、いいんだよ。」
「そうよ、イブニング様はカッコイイから良いのよ。」
他に誰も居ない教室で三人は笑い合った。
あぁ…なんだか、あの頃に戻ったみたい…懐かしい、小学生だった頃。
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