再出発~夕凪
◇登場人物◇
ギルド”永遠の風”メンバー
一条風斗~ウインド ギルドマスター。男子高校生
三好月代~ムーン 女子高校生
佐竹咲華~ブロッサム 女子中学生
六角右京~ライト 社会人(営業職)
細川翠 ~グリーン 社会人(事務職)
ギルド”幻の兔”メンバー
尼子夕凪~イブニング ギルドマスター。女子高校生
津軽真琴~トゥルース 宰相。女子高校生
「第一小隊は、右側に展開して!」
今日は将軍不在の風部隊を指揮して、”孤高の谷”へと来ている。
ここが、今回のイベント『炎竜の卵を探せ!』の最終目的地点に違いないわ。
「トゥルース、他の将軍からの連絡は、まだ来ない?」
「はい、イブニング様。未だ発見の連絡は来ていないです。」
あらゆる情報を入手し、宰相であるトゥルースが導き出した答え。
私は、この地に的を絞りギルド4部隊すべての戦力を注力した。
「うわぁ~」
風部隊の一人が大きな叫び声を上げる。
「トゥルース!フォローを!」
まったく情けない。たかが、オオトカゲ型のモンスター”タルボロス”3体に何を手間取っているのよ。
「御意。」
トゥルースは答えると大きく槍を振りかぶった。
「スカイエンドハリケーン!」
槍を回転させることで嵐を巻き起こす、上級職”竜騎士”のスキルが轟音を響かせてモンスターに迫る。
襲われていた部下は巻き込まれたけど、一撃で一頭の”タルボロス”を打倒した。
部下は吹き飛んだが、このゲーム”サウザントフェアリー”はプレイヤー同士の戦闘を認めていないのでノーダメージとなる。
「イーグル!奥に居る”タルボロス”を!」
私の声を聞いた召喚獣”イーグル”が”タルボロス”に向かって急降下する。
「キュイー!」
爪を向けながらモンスターに向かうイーグルは、私の上級職”獣使い”によって召喚された獣だ。
敵である”モンスター”と使役する”獣”との大きな違いは分からないけど、私が”獣たち”を愛おしく思っているのは確か。
『ザンッ』
イーグルの鋭い爪が”タルボロス”の背中へとヒットしたが、一撃で倒すには力不足。
「ウォーウルフ!行け!」
イーグルと共に出現させていた”ウォーウルフ”2体の鋭い牙が”タルボロス”の首へと食らいついた。
「よしっ!よくやった!」
”タルボロス”1体は膝から崩れ落ちると共に、その姿を消した。
「さて、もう一体ね。」
最後に残ったモンスターを見ると、すでに部下達が取り囲んでいる。
「トゥルース、あとは任せましょ。」
「ですね、華を持たせてあげるのも良いかと。」
モンスター1体vs20人以上の構成員では、時間の問題ね。
「風の将軍候補、まだ見つからない?」
「申し訳ございませんイブニング様。」
「謝らなくても良いのよ。グリーン将軍の後窯ですもの、どれも見劣りしてしまうのは仕方ないわ。」
「我が隊の中から育ってくれるのが一番良いのですがね。」
トゥルースの意見も最もだわ。
わざわざ他のギルドから勧誘しなくても、身内から良い人材が育ってくれれば一番リスクが低いわね。
「はぁ~。」
身内から育ってもらえれば…そうは思ったけど、部下達が戦う姿を見てため息が出た。
「お気持ちは察します。」
トゥルースも私と同意見のようで、頭を抑えながら言う。
20人がかりでも、オオトカゲ型のモンスターに手こずる風部隊のメンバー達。
「先に進みましょう。」
私は部下を置いてトゥルースと二人で、『炎竜の卵』を探す事にした。
「炎の将軍の配下に優秀な人材が育ってきているようです。その方に風魔法を習得させるのはどうでしょう?」
「それは良いアイデアだけど、炎の将軍が納得するかな?」
トゥルースの提案は良いアイデアだけど、せっかく育てた人材を将軍が手放すとは思えないし、部下である本人も、きっと将軍を慕っている事だと思う。
”ドドーーーン!”
「何?」
「向こうから爆発音がしたようです。この辺りに我が軍は居ない筈ですが…」
「とにかく行ってみましょう。」
そう言いながら、私は偵察の為に”イーグル”を先に行かせた。
空高く舞うイーグルの後に続いて歩き出す。
「新陰流!」
そう声がした方向を見ると、”永遠の風”のギルドマスターであるウィンドの姿があった。
「新陰流?そんなスキル、あった?」
「いえ、聞いた事が無いです。」
「ブルックスクリュー!」
何?あの武器は?”永遠の風”に所属する大柄のプレイヤー~以前、見た時とは雰囲気が違う。
「あの技も見た事が無いですね。」
トゥルースは静かに言う。
「ねぇ、もしかして…あの二人って私達と同じ上級職なのでは?」
「おそらく…いえ、間違いないでしょう。」
私の疑問に対し、トゥルースは”間違いない”との返答。
このゲーム内で私達二人だけと思っていた上級職保持者。
「まさか、永遠の風のギルドマスターが上級職を習得していただなんて…」
「イブニング様、状況が変わりました。上級職の習得方法を我が軍内にて広め、永遠の風の追撃を引き離す事が賢明かと。」
「永遠の風も”神官ユニティ”にまで辿り着いたって事ね。仕方ないわ、まずは将軍達から上級職に転職してもらいましょう。」
「同意見です。」
トゥルースはそう言うと左胸に手を置き、ゆっくりと頭を下げた。
「で、あの二人の上級職は何かしら?」
「申し訳ございません、まったく見当もつきません。」
「分からない事は仕方ないわ、私の”獣使い”でも貴方の”竜騎士”でも無い事は確かね。」
「どういう組み合わせなのか…探ってみる事にします。」
「まずは作戦会議ね、一旦、ホームに戻りましょう。」
「イベントはよろしいのですか?」
「それどころじゃ無くなったわ。あとは”林””火””山”の将軍に任せましょ。」
「分かりました。では、戻って相談しましょう。」
まったく…上級職は私達二人だけだったのに…
にしても、私達が偶然辿り着いたあの神殿、よく辿り着いたわね。
「はぁ…我がギルド”幻の兔”の再出発ね。」
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「はぁ…もう秋かぁー。」
ため息交じりに言いながら月代はうな垂れた。
「この前まで、”夏は暑すぎるわー。”って言ってたじゃない。」
「涼しくなるのは良いけど、夏が過ぎるとちょっと寂しい感じがあるのよねー。もしかして私ってわがまま?」
「うん、とってもわがままだよ。」
月代ちゃんは我儘だけど、可愛から問題無し…まだ残暑が残っているけど可愛いわ。
この前、夏の思い出にと"花火大会”に風斗と月代と一緒に行ったけど…それで夏は終わってしまった。
「あー、もっともっと、一緒に遊びたかったな。」
まったく、なんて夏は短いのかしら?
「大丈夫よ夕凪、秋は秋できっと楽しい事があるわ。」
あら?月代ちゃん、嬉しい事を言ってくれるわね。
「そうね、きっと秋も楽しい事が多いわ。どこに行こうか?」
「夕凪って、切り替えが早いわねぇー、凄いわ。」
切り替えが早いって、きっと誉め言葉ね。
「秋といえば…フルーツよ、何かフルーツ狩に行きましょうよ。」
「あー、ぶどう狩りとか、桃狩りとか?良いわね!」
「じゃぁ、風斗も誘うわね。」
「あー、やっぱりかー。」
あれ?私、月代ちゃんと同じくらい、風斗の事も好きって言わなかったっけ?
でも…月代ちゃんと風斗は付き合えないって言ってたわね。
将来、3人で一緒に暮らすという私の夢…花火大会の日の二人の反応を思い出すと少し寂しくなった。
「私、月代ちゃんの事と同じくらい風斗の事も好きだから。」
改めて、はっきりと自分の気持ちを言葉にする。
「う…うん…。」
月代からは、歯切れの悪い返答を返される。
「あのね、私も考えるから、夕凪も、もう少し考えてみて。」
「ん?何を考えるの?」
「ほら、私達って女同士であって…あと風斗の事も…」
もう決まっている事なのに、何を考える事があるのかしら?
「月代ちゃんも…風斗も…私の夢よ」
そう答えると、月代は私から目を逸らし、真っすぐに前を向いて歩いた。
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