花火大会〜風斗
◇登場人物◇
ギルド”永遠の風”メンバー
一条風斗~ウインド ギルドマスター。男子高校生
三好月代~ムーン 女子高校生
佐竹咲華~ブロッサム 女子中学生
六角右京~ライト 社会人(営業職)
細川翠 ~グリーン 社会人(事務職)
ギルド”幻の兔”メンバー
尼子夕凪~イブニング ギルドマスター。女子高校生
津軽真琴~トゥルース 宰相。女子高校生
「風斗!勘違いしちゃダメだからね!」
三好月代からの言葉。
あぁ、分かってるよ…学校イチのマドンナである尼子夕凪が俺の事を好きな訳が無い。
尼子が俺のおふくろのことを"お母さん"と呼んだのは冗談だ。
確かに浴衣姿の尼子は美しく、思わず見とれてしまいそうになる。ついでに三好の浴衣姿もまぁまぁだ。
「あら、月代ちゃんたら…やきもち?」
「なんで、私がやきもちを焼く必要があるのよ!」
プンプンと怒りながら歩く三好の後ろを俺と尼子が歩く構図となった。
そもそも、この二人と花火大会に行く予定なんて無かった。
が…先日、尼子が突然、家に来て脅されたのだ。
『一緒に花火大会に行ってくれないなら、プールの時の写真をバラ撒くわよ。』
そう言いながら尼子が見せたスマホ画面には、俺と尼子が一緒に歩く姿が映されていた…しかも水着姿。
ヤバい…これはヤバい。
SNSが発達してした今の社会、少しでもこの画像が世に出されれば、一瞬にして"尼子夕凪親衛隊"の目に届くのは間違いない。
そして俺の命は風前の灯となる事が予想される。
にしても、いつの間にあの写真が撮られたのだろうか?
チラリと三好の姿もあるので三好が撮影者では無い。
あのアングル…そうか!あの京都から来たという姉妹が撮ったのか!?
佐竹だったかな?…妹の方のニヤニヤとした顔が頭をよぎった。
「風斗…どうしたの?青い顔して…」
「いや、何でもない。」
首を横に振りながら答える。
お前が原因だよ…と言いたかったが、心配そうに見つめてくる尼子の顔を見ると文句を言えなかった。
「こらー、もっと早く歩けー。」
いつの間にか随分と先を歩いていた三好が振り向きながら叫んでいる。
「ふふふ、小学生の頃みたいね。」
「あぁ…そうだな。お前が走るの遅かったからな。」
幼馴染である俺たち3人…確かに、このような光景を思い出した。
この道も、よく走ってたな。
「うん…月代ちゃんが凄い勢いで走って行っちゃって。でも、風斗は途中で止まって、振り向いて待っててくれたよね。」
「そんな事もあったかな。」
思い出した…息を切らせながら苦しそうに走る子供の頃の夕凪の姿が頭に浮かんだ。
月代は放っておいても大丈夫だと思っていたけど、夕凪は置いていっちゃうと泣いちゃいそうだから、俺はコイツのペースに合わせて遊んでいたんだ。
「嬉しかったんだよ…私。」
「そりゃ…放って置けないだろ。」
「あれ?青い顔してると思ったけど、今度は赤くなったわ。」
「うるさい、さっさと行くぞ。」
ダメだ、月代が言うように、勘違いしちゃダメだ。
現に夕凪は、今も面白そうに笑っているじゃないか。
それに…俺が好きなのは、ギルド"永遠の風"の仲間であるムーンさんだ。会った事は無いけど俺が好きなのは…あの子だ。
優しくて…素直で…頑張り屋。
近くに、ムーンさんのような女子は居ない。
きっと聡明な子なんだろう…あぁ…会ってみたい。
見た事もない女子の姿を想像しながら歩き、バスへと乗車した。
「お…おい。一条。」
混み合うバスに乗ると直ぐに背後から声をかけられた。
げっ…振り返るとそこには同じクラスの水野が座っていた。
「お前…何故、尼子さんと一緒に居るんだ?」
そう、コイツは尼子夕凪親衛隊のウチの一人。
「ま、まぁ…」
幼馴染だという事は以前に伝えた事があるが、まさか一緒に花火大会に行くとは言えない。
「たまたま、さっき会ってだな。」
咄嗟に出た言葉だった。
「なんだ…たまたまか。」
水野は安心したように、そう言うと椅子から立ち上がった。
「尼子さん、浴衣姿…素敵っす。良かったら、ここ座ってください。」
こいつ、こんなに満面の笑顔が出来たのかと感心する。
「あら、ありがとう…親切な方ね。でも、良いわ…風斗の友達なら風斗が座って。」
こら…風斗と呼ぶな…親しげすぎるだろ。
慌ててジェスチャーで伝えるも不思議そうな顔をする尼子。
「あ、あの…尼子さん。花火大会っすか?良かったら俺も友達と落ち合うんで一緒にどうっすか?」
大人しい水野にしては頑張っている。はっきりと誘うなんて、やるじゃないか。
「ごめーん、今日は月代ちゃんと風斗と3人で行くから。」
おぅ…言ってしまったか、俺も一緒だと、はっきり言ってしまったか…
俺は思わず片手で顔を覆った。
「あ、そうっすか…そうっすよねぇ。」
そう言いながら、横目で俺の顔を見る水野。
ギロリと光る目が、怖い。
「そうだ、水野達も一緒に…なんてどうだ?」
苦肉の策として提案するも、今後は尼子の顔が険しいものとなった。
「風斗…バラすわよ…」
ダメだ…あの写真だけは勘弁してくれ。
「こ…今回は3人で行く…との事だ…水野。」
ヤバい…これはヤバすぎる…
「そ、そうか…お互いに楽しもうな…花火大会。」
ダメだ、完全に目がイカれている。
「風斗、水野君たちのグループに行っても良いよ。友達だったんだねー。」
いや、三好よ…俺が水野達のグループ"尼子夕凪親衛隊"に加われば、確実に今日で俺の命は終わる。空気を読んでくれ。
「いや…約束だったから、俺はお前達と一緒に行く。」
しまったー!約束していた事を自らバラしてしまったー。
「たまたま…約束していたのだな…一条よ。」
『ひぃ〜。』
水野から、肩に手を置かれた瞬間、背筋が凍りついた。
「後ろの方が空いてそうだ…」
俺はボソリと呟くと、水野から離れるべく後方へと移動した。
再び席に座った水野を見ると、スマートフォンを懸命に操作している。
おそらく…先程のやり取りが"尼子親衛隊"に伝えられているのだろう。
今日の花火大会で出会わないように祈るとしよう。
夏休み中で、学校での事を考えなくて良いのが幸いだな。
バスを降りると、花火大会の会場の目の前だっだ。
「わぁ、屋台がいっぱ〜い、私、何か食べたーい。」
やはり三好は花火より食い気か。
「おぅ、色々と見て回ろう。」
とにかく…水野からは離れようと思い、俺は二人を連れて早々に歩き出した。
「待って…私、焼きそば、食べたい。」
三好、決断が早いな…
目の前にある焼きそばの屋台に向かい走り出す。
「月代ちゃんたら、はしゃいじゃって可愛いわね。」
尼子がまるで子供を見るような目をしながら言う。
「子供みたいだな。」
「違うよ…月代ちゃんは私達の子供じゃないよ。」
「あぁ…勿論、そうだが…」
急に何を言い出すのだろうか?尼子は…。
「風斗、月代ちゃんと私の子供を、ちゃんと愛してね。」
ん?何を言っているんだ?
二人が結婚して子供を産む?
いやいや…女性同士でどうやって子供を作ると言うんだ?
「ちょっと、返事は??」
まったく訳が分からない…
「いや、何の話を言っているのか分からないのだが…」
正直に言うと、尼子は怒った口調になった。
「将来の話よ!」
尼子と三好は将来、結婚したいと言うのか…
まぁ、今はそういう事もあるらしいが、実際に身近な存在となると、何だか複雑な気持ちになる。
「まぁ…よく考えて結論を出すんだぞ。」
急な話で的確なアドバイスなど出来なかったが、俺は精一杯の言葉を伝えた。
「まったく…他人事みたいに。風斗もちゃんと考えておいてよね。」
他人事とは…言わないが、俺もそんなに考えないとダメなのか。
まぁ、重要な事だからな。
「あぁ、相談に乗るよ。」
「ただいまー。」
焼きそばを買いに行った三好が戻って来たが、人形焼きも手にしていた。
「おかえりー。」
嬉しいそうに迎える尼子。
三好も…尼子の事を好きなのかな?
って、この状況だと俺はお邪魔なのでは?
何で、尼子は俺を脅してまで花火大会に連れ出したんだ?
2人きりの方が良かったんじゃないのか?
頭の中が、グルグルと回り…混乱するだけで答えは出なかった。
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