新たな試み~咲華
◇登場人物◇
ギルド”永遠の風”メンバー
一条風斗~ウインド ギルドマスター。男子高校生
三好月代~ムーン 女子高校生
佐竹咲華~ブロッサム 女子中学生
六角右京~ライト 社会人(営業職)
細川翠 ~グリーン 社会人(事務職)
ギルド”幻の兔”メンバー
尼子夕凪~イブニング ギルドマスター。女子高校生
津軽真琴~トゥルース 宰相。女子高校生
「ブラストアタック!」
モンスターに向かいボクは大剣を振り下ろした。
今までは両手に装備したグローブが相棒だったけど、今はこの大剣が相棒。
せっかくLVを上げた武闘家職からLV1剣士に転職する事は勇気が必要だったけど、ウインドさんと一緒だったから心強かった。
「みんな、ありがとっす。」
モンスターに最後の一撃を与えたメンバーには経験値が多めに入る。
以前は、あまり知られていなかった事だったけど、今はゲームの運営からも公表されている。
「ブロッサムさん、おめでとう!」
剣士レベルが一つ上がった事をムーンさんが褒めてくれた。
「最初のウチはレベルが上がるのが早いっすね、楽しいっす。」
「そうね、でも…私は転職する勇気なんて無いわ。ブロッサムさんは凄いと思う!」
心機一転、新しい事にチャレンジしたいと思ったのは、ゲーム内だけの話じゃなかった。
◇◆◇現実世界◇◆◇
夏休みのある日~あたしは、美術部の活動で学校に向かった。
「うわ、なんで居るのよ…」
校門の前で立つのは、天敵である津軽三佳。
顔を見るのも嫌なのに、どうして夏休みになってまで会う事になるのか。
三佳はバドミントン部に所属しているのは知っているけど、上手いのかどうかは知らない。
そもそも、まったく興味が無い。
「ちょっと、あんた。」
無視して通り過ぎようとしたけど、話しかけられた。
「無視、しないでよ。」
「あたしに用事があるとは思わなかったから。」
そう返事をしたのは本当の話。
こちらから用事は無いのは勿論、三佳からも、あたしに用事があるとは思えない。
「別に用事って程じゃないけど…」
「何?美術部に行くんだけど。」
「知ってるわよ。私もバドミントン部に行く途中よ。」
「話があるなら早く言って。」
あたしがそう言うと三佳は目を逸らした。
何かイライラしている様子にも見える。
「もう…しないから。」
ん?何をしないというの?
話が見えず、頭の中が疑問符で一杯になる。
「えっと…おっしゃっている意味が分かりませんが…」
正直に気持ちを言うと、三佳はさらにイライラした様子となった。
「もう…何もしないからって言ってるのよ!」
チラリとあたしの顔を見ながら言う三佳。
もしかして…
「もう、あたしに”悪さをしない”と言いたいの?」
はっきりと聞いたところで、三佳はあたしに目を合わせた。
「そうよ!そういう事よ!分かった?」
何故、怒り口調なのかは全く分からないが、まぁ…内容が内容だけに良いかな。
「分かったわ…」
よくからないままに、あたしは三佳の主張を受け入れた。
今まで、やられた事を全く水に流す事なんて出来ないけど、これから平和に暮らせるならそれで良し。
「だから…真琴に、要らない事を言わないでよね。」
「お姉さんの事を呼び捨てにするのか…」
「それは…あんたには関係が無い事よ。」
姉妹の事を他人のあたしが関係が無いと言われれば、何も言えない。
「元々、何も言ってないわ。でも、あたしは真琴さんとは友達を続けるから。」
精一杯の反論。
真琴さんと三佳の仲が悪いままなのは、心が引けたけど…そこをどうのする段階ではないし、姉妹の問題に助言できる程の力量はあたしには無い。
「あんたと真琴が友達を続けるのは、まぁ良いわ。でも、学校で私と真琴が姉妹である事は言わないでちょうだい。」
おぉ、三佳があたしにお願い事をするとは…奇跡か?
「言わないわ。」
真琴さんの良いところを何個並べ伝えた所で、容姿にこだわる三佳には伝わらないだろう。
「なら、良いわ…じゃっ。」
何故、いきなり、あたしへの嫌がらせを止める事を伝えてきたのか。
その事は翌日の真琴さんとのLIMEでのやり取りで、なんとなくは分かった。
三佳は真琴さんに怒られたのだ。
あの三佳が、怒られただけで素直に謝るなんて…って、謝ってはいないか。
三佳と同じ”妹”である、あたしの立場から考え…もしかしたら、三佳は真琴さんに”お姉さんらしい事をして欲しかったのかもしれない。”、真琴さんに、そう伝えると、メッセージのやり取りは終わった。
うーん…三佳があたしに対して無害になった事は嬉しい事だけど。
真琴さんは、まだ…ないがしろにされたままね。
姉妹か…あたしも、まだお姉ちゃんと完全に仲直りした訳じゃない。
けど…心機一転、”お姉ちゃんとの関係を良くしていきたい。”と思った。
もし、あたしがお姉ちゃんと仲良くなれたら、仲良くなる方法を真琴さんにアドバイス出来るようになるかも…
”三佳と真琴さんを仲良くさせる”作戦、ちょっと頑張ってみようかな。
まずは、あたしがお姉ちゃんと仲良くしなくっちゃね。
意外と小説が面白い事に気が付いたし…もっとお姉ちゃんに面白い小説を教えてもらおう。
まずは、そこからのスタートね。
こうして現実世界での、あたしの”新たな試み”が始まった。
◇◆◇仮想世界◇◆◇
「この新しい剣技スキルは、どんな感じっすか?」
「あー、そのスキルは火に弱いモンスターに最適だよ。」
疑問を投げかけると、すぐに元剣士のウインドさんと剣士のライトさんが答えてくれる。
流石、二人とも長い事、剣士をしているだけの事はある。
だけど、ウインドさんは違った。
狩人を選択したウインドさんは、ギルド内に狩人経験者が居ない為、誰にも質問出来ない。
自分一人で狩人を極める必要となる。
「シャインアロー!」
ウインドさんが覚えた狩人スキルが上空から降り注いだ。
この人、どうして誰にも教えて貰えないのに狩人スキルを使いこなせるのだろう?
「ウインドさん、良い技、覚えたっすね!」
「あー、上からの攻撃だと的中率が高まって良いね!」
ゲーム慣れしているのかな?
あたしもだけど、他のゲームからの移籍組は”的中率”や”発動率”など、ゲームに必要な要素が分かっている。
逆にムーンさんのようなゲーム初心者だと、闇雲に”火力”を求めがちになってしまう。
ズーン…ズーン
突然、大きな地響きが近づいて来るのが分かった。
「ギガンテスよ!気を付けて!」
いち早くAランクモンスターの接近に気が付いたのはグリーンさんだった。
「陣形を!」
ウインドさんが指示を出す。
前衛にボクとライトさんの二人が前に出る。
中央にグリーンさんが立ち、その背後にウインドさんとムーンさんが並んだ。
ボクとウインドさんが転職を終えてから、新しく考えた陣形だ。
「うぉぉぉぉぉ」
ボクは気合を入れながら、ライトさんと共にギガンテスに向かって走った。
「先制攻撃だ!」
ライトさんの掛け声と共に、覚えたての剣技を繰り出す。
「剣技…エレメントアタック!」
相手のモンスター”ギガンテス”は火に弱い訳では無いけど、これしか使えないので仕方ない。
「剣技…ハーディクトストライク!」
ライトさんはギガンテスのような”固い敵”に対して有効な剣技を繰り出した。
ズドーーーン!
大きな音と砂煙が立ち込める。
「あ、しまった…」
目の前に現れたのは、ギガンテスの大きな腕!
「ぐはっ」
ボクはギガンテスのスキル”ギガラリアット”を喰らって吹き飛んだ。
「くっ」
HPが大きく削られると共に、ステータス画面に”混乱”が表示され行動不能となる。
「クソ…マウスが反応しない!」
「ブロッサムさん、ポーションを!」
HP回復の為にポーションを手渡してくれたのはウインドさんだった。
「ギガンテス相手では、やっぱり厳しいな…3人に任せよう。」
「天より来たれし光の化身…建御雷神よ…我に眩い光を与えたまえ…サンダーボルト!」
久しぶりに見た、グリーンさんの上級魔法…以前よりも威力が増したように感じだ。
「凄い…」
一つ目のギガンテスの弱点でもあったのだあろう、苦しそうに肩を落とし、HPを一気に減らした。
「古の火神イフリート!我に荒ぶる炎を…フレイムバースト!」
ムーンさんも上級魔法を放つ。
ズドドーン!
「よしっ!」
”チャララーン♬”高ランクモンスターを倒した時に流れる音楽が鳴り響いた。
「やったね、二人ともレベル上がったね!」
ムーンさんが両手を合わせて喜ぶ。まるで自分がレベルアップしたかのように。
あれ?ウインドさん、攻撃を当てたっけ?
「はいー、実は、こっそりと矢を一本だけ。」
テヘヘと笑うウインドさん…流石だわ。
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