思い〜真琴
◇登場人物◇
ギルド”永遠の風”メンバー
一条風斗~ウインド ギルドマスター。男子高校生
三好月代~ムーン 女子高校生
佐竹咲華~ブロッサム 女子中学生
六角右京~ライト 社会人(営業職)
ギルド”幻の兔”メンバー
尼子夕凪~イブニング ギルドマスター。女子高校生
津軽真琴~トゥルース 宰相。女子高校生
細川翠 ~グリーン 風の将軍。社会人(事務職)
「ちょっと、どう責任取ってくれるのよ!私の面子が丸潰れになるじゃないの!」
学校から帰ってくるなり妹の三佳が私の部屋へと入り叫んできた。
「え?何かあったの?」
「あなたが私の姉だとバレたのよ!クラス中に広まったらどうしてくれるのよ。」
「ご…ごめんなさい…」
私は小さな声で謝るしか無かった。
三佳とは小さな頃は仲が良かった。
一緒にお人形遊びをするのが好きだった事を思い出す。
"可愛い妹"
三佳の事は、ただ…そう感じていたし、両親から見ても周りから見ても、何処にでもいる普通の姉妹に見えていたと思う。
「どうして、すぐに謝るのよ!」
「え?…ごめんなさい…」
さらに声を強めて怒鳴る三佳に対して、再び謝罪の言葉を口にした。だって、謝らないと終わらないじゃない…
関係が変わったのは三佳が小学3年生くらいだった頃にモデルとして、雑誌に出た時。
仕事って言える程のものじゃ無かったと思う。
ただそれをきっかけにしてお母さんは芸能関係のスクールに三佳を入れた。
三佳は可愛くてスタイルも良い。
しばらくすると読者モデルとして雑誌に載るようになった。
「芸能プロダクションの人が来るから、真琴は部屋から出ないでね。」
ある日、お母さんから伝えられた言葉。
食べる事が好きだった私はどんどんと体重が増え、本当に姉妹なのかと疑わられるような存在となっていた。
『邪魔者扱い?』
最初は疑問形だったけど、三佳からもハッキリと言われた事によって確信へと変わる。
「今日、友達が来るから部屋から出ないでね。」
『あぁ…私は邪魔な存在なのね。』
自分の立ち位置に気づいてからは、ちゃんと目立たないようにしている。家でも学校でも…どこでも…
「うじうじして…気持ち悪い!あの子とは、もう会わないでよね!」
え?あの子?三佳は誰の事を言っているの?
キョトンとしている私に向かい、三佳は続けた。
「佐竹咲華よ!この前、一緒に居たでしょ!」
「え?咲華ちゃんと知り合いなの?」
「たまたま同じクラスなだけよ!」
「えー、三佳と咲華ちゃんって友達だったのね。」
ビックリした…そんな偶然があるのね。
「友達じゃないわよ!あんな気持ちの悪い子。」
気持ちの悪い子?…咲華ちゃんが?
「咲華ちゃんは私と三佳が姉妹だって知ってるの?」
「知ってるわよ!だから今日、教室でマウントを取られたのよ!あの子のお姉さんは、凄く優秀で美人なの!あなたと違ってね!」
「私がブサイクで無能なのは認めるわ…でも、咲華ちゃんは、とても良い子よ。」
だからか…以前、咲華ちゃんに家に来るように誘った時に困ったような表情をされたのは…
「はぁ?咲華のどこが良い子だって言うの?アホだし運動音痴…あぁ、あなたとソックリね。」
ちょっと待って…咲華ちゃんに対してそんな酷い事を思っているの?
「三佳…もしかして学校で咲華ちゃんに、そんな失礼な事を言ってないよね?」
「言っているに決まってるじゃない。事実なんだから。」
私の事はいくら悪く言っても良いわ…運動音痴なのは合ってるから…でも…
「言っちゃいけない事があるのよ!咲華ちゃんに謝りなさい!」
「あなた…大きな声を出せるのね。」
「そんな事、どうでも良いの!それより三佳、学校で咲華ちゃんに酷い事、してないでしょうね?」
「酷い事?してないわよ、ちょっとあの子が描いている絵に落書きしたり、筆箱を隠したりしているだけよ。」
パァーーーン!
手が痛い…体が熱い…涙が抑えきれない。
三佳は驚いた顔をしながら、私に叩かれた頬を抑えている。
あぁ…三佳をぶってしまった…人に暴力を振るうなんて事をしたのは生まれて初めて…
三佳は何も言わずに振り返り、部屋を出て行った。
「あぁ…」
溜め息なのか言葉なのか分からないものを口から発し、私はゆっくりと座った。
どうして、こんな事になっちゃったのかしら?
三佳…いつから、あんな子になっちゃったのかしら?
お母さんに相談すべき?
分からない…分からない…
「咲華ちゃん…ごめんなさい。」
両手を合わせ、咲華ちゃんへの謝罪を口にする。
会うなと言われたけど…あわせる顔なんてないわ。
誰かに相談したいけど、私には相談する相手なんて居ない。
こんな時、『閃光の執事は悪事を許さない。』のトゥルースなら、どうするかしら?
漫画、閃光の執事は、私が大好きな漫画…その主人公であるトゥルースは、何でも問題を解決する。
『お嬢様に…相談してみようかな。』
私はオンラインゲーム"サウザントフェアリー"にログインして、トゥルースへと成り変わる。
ただ、私は偽物だから、問題を解決出来ない。
でも…ここに居る"お嬢様"なら…
「イブニング様…少しご相談があるのですが。」
「あら、相談?何かしら?」
私が所属するギルド"幻の兎"のマスター"イブニングさん"
中身は私と同じ女子高校生だとの噂だけど、とてもそうは思えない程の力量を持っている。
「友人同士がトラブルを起こしましてね。」
「へー、あなたがリアルの話をするなんて珍しいわね。」
妹の事を友人に例えて相談を持ちかける。
「片方が一方的にもう片方を責め立てているのですが、止めようとしないのです。」
「そんなの、強引に止めさせたら良いだけでしょ?」
確かにそうだけど…三佳が私の言う事なんて聞く筈がない。
「うーん…それが、なかなか偏屈なヤツでして。」
「じゃぁ、責め立てられている方を強くする事ね。」
咲華ちゃんを強くする?
そんな事…出来るかな?
「何か強くする方法はありますかね?」
「そうね、例えば責めている方の弱味を責められている方に伝える…とか。」
三佳の弱味を咲華ちゃんに伝えるって事ね…流石はイブニングさん、相談相手の事をまったく知らないのにアドバイスするなんて。
でも…顔もスタイルも良い三佳に弱味なんてあるかしら?
三佳の弱味…私?
「イブニング様…ありがとうございました。」
「いーえ、あなたには世話になっているから。上手く行かなかったら、また教えてちょうだい。」
咲華ちゃんには私の存在を利用して貰おう。
困った事があったら、私の名前を出して貰う。そう、三佳はきっと嫌がって咲華ちゃんに近づかなくなるわ。
私は翌日、LIMEでメッセージを送った。
妹から話を聞いた事…妹が咲華ちゃんに悪さをして申し訳無かった事。
色々と文章を考えていたら1日かかってしまった。
すると…思いがけないメッセージが咲華ちゃんから返ってきた。
「今日、三佳さんから"もう何もしない。"って言われました…真琴さんが何か言ってくれたのですね?」
え?どういう事?私は、ただ三佳の頬を泣きながら、ぶっただけ。
「いえ…私は…ただ悲しかっただけ。」
「悲しかっただけ?」
確かに、訳の分からない返答だったわね。自分でもよく分からないけど、そう感じたのは確か。
「うん、三佳に手を上げちゃっただけなの。」
「なるほど…お姉さんに叱られて、嬉しかったのかもしれないですね。」
嬉しかった?あの出来事が?
「そんな事…あるかしら?」
「三佳さんは、真琴さんにお姉さんを求めていたのかな?って、ちょっと思いました。」
確かに…三佳には、お姉さんらしい事なんて最近はまったくしてなかったわね。
「咲華ちゃん…ありがとう。」
「え?あたし?お礼を伝えるのは、こちら側かと。」
目に涙が溜まってきたので…それ以上、メッセージを送る事が出来なかった。
イブニングさんのアドバイス…"責められている方を強くする。"は、関係無かったけど、結果オーライね。
ん?責められている方…もしかして"私を強くすれば解決"って事になったのかな?
うん…ほんの少しだけ強くなったのかも…
あぁ、妹と…三佳と…昔みたいに仲良くなりたいな…
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