思い~咲華
◇登場人物◇
ギルド”永遠の風”メンバー
一条風斗~ウインド ギルドマスター。男子高校生
三好月代~ムーン 女子高校生
佐竹咲華~ブロッサム 女子中学生
六角右京~ライト 社会人(営業職)
ギルド”幻の兔”メンバー
尼子夕凪~イブニング ギルドマスター。女子高校生
津軽真琴~トゥルース 宰相。女子高校生
細川翠 ~グリーン 風の将軍。社会人(事務職)
「どうせ…あたしなんか。」
いつも、そう考えていた気がする。
「あ、お姉ちゃん…ありがとう。」
先日の家族旅行の後、私と姉との関係が変わった。
いや…違う。
変わったのは、もう少し前からだ。
そもそも、あたしは家族旅行に誘われても、そう簡単に行く人間では無かった。
『お父さんもお母さんも、お姉ちゃんと一緒に旅行に行きたいのよね。あたしは、ついでに誘っているのでしょ?』
今までは何の疑いも無しにそう思ってきた。
何故?あたしには、こんなに優秀な姉が居るんだろう?
比べられたあたしが残念な妹になってしまうじゃない。
お父さんお母さんも優秀なお姉ちゃんさえ居たら良いでしょ?
そんな考えがあたしの頭の中を占領していた。
けど、それは天敵である同級生、津軽三佳の言動によって変わった。
知らない間にあたしは津軽三佳の姉である津軽真琴さんと出会った。
真琴さんは優しくて面白い方…それなのに妹の三佳は毛嫌いしている。
『真琴さん…あんなに優しいのにどうして?』
真琴さんの悪口を言う三佳に対して腹が立ち、学校で揉め事を起こしてしまったのは数週間前の話。
『お姉さんである真琴さんを、そんなに嫌ったら可哀想じゃない。』
あれ?あたしと同じ?
いや…津軽三佳なんかと同じになりたくない。
三佳は真琴さんの事をまったく見ていないのでは?と感じた。
そして、あたしもお姉ちゃんの事を…見ていない。
見ていない。と言うか、見ないようにしていたのでは?
家族旅行中、あたしは思い切って自らお姉ちゃんに、べったりとくっついた。
最初は不思議そうに思っていたお姉ちゃんだったが、すぐに嬉しそうにあたしに構うようになった。
”コンコン”
「お姉ちゃん、居る?」
「どうしたの?咲華。」
「えーっと…何をしているのかな?っと思って…」
お姉ちゃんの部屋に入るのは何年ぶりだろうか?
「あの旅行から、咲華、変わったわね。」
なんだろう?同じ家とは思えないくらいに良い匂いがする部屋だ。
「迷惑?」
「いーえ、嬉しいわ。昔に戻ったみたい。」
そう、あたしとお姉ちゃんとの関係は以前は良好だった。
険悪な関係になったのは、あたしが中学校に入学してから。険悪な関係というより、あたしが一方的に距離を置いたのだけど…
優秀な生徒、佐竹綾音の妹の入学…まず、期待を寄せたのは先生方。
入学時の一学期で、あたしのポテンシャルの低さに期待値マックスだった先生方の心が折られたわ。
対してあたしは、お姉ちゃんがそんなに優秀な生徒だったとは知らなかった。
残念がられても迷惑なだけの話。
クラスメイト達もあたしとお姉ちゃんを比べるようになって…肩身が狭くなるまでの時間はそう長くは無かった。
「何してたの?勉強?」
「勉強してないわよ。今は、小説を読んでいたの。」
小説なんて読むんだ…そう思い、部屋の本棚を見渡すとかなりの量の本が並んでいた。
「なんか難しそうな小説ばかりね。」
「そんな事ないわよ…ミステリーものが多いから、ちょっと頭を使うかもだけど。面白いわよ。」
ミステリー小説が好きだったのね…一緒に住んでいるのに全然知らなかった。
「あれ?これ?」
1巻から5巻まで並んだ本のタイトルに目が止まった。
「ん?咲華、知ってるの?」
「うん…あたしが持っている漫画のタイトルと同じ。」
「あー、そう言えば漫画化されたって、どこかで見た事があるわ。これは咲華の持ってる漫画の原作ね。」
えーーー、あの漫画って、小説を漫画化したものだったんだ。
「そんな事あるのね。」
「小説が漫画化されたり、ドラマ化されたりって、よくある事よ。あ、そうだ…この小説の漫画、読んでみたいわ。咲華、貸してよ。」
「いいよ…、でも…あたしも、あの漫画の原作小説っていうのを読んでみたい。」
「いいね、貸し合いっこだね。」
そう言って微笑むお姉ちゃんの笑顔は眩しい…あたしにとっては眩しすぎる。
お姉ちゃんに借りた本…汚さないようにしないと。
ミステリー要素が多いその小説を読み出すと止まらなかった。
たまに読めない漢字があったりするけど、漫画で読んだ内容だったから、なんとなく分かった。
小説で読むのも面白い…漫画より深みがあるというか…登場人物、それぞれの特徴や心情などが細やかに書かれている。
あれ?もうこんな時間?お風呂に入らないと。
読書に夢中になっていたおかげで”サウザントフェアリー”にログインするのを忘れてたわ。
グリーンさんも居なくなっちゃったし…まぁ、いっか。
にしても…小説って、面白いのね。
あたしは、そう思いながら一日を終えた。
翌朝、鞄の中にお姉ちゃんから借りた小説を入れかけたけど…ヤメた。
もし、学校で津軽三佳に見つかったら取られかねない。
あぁ…朝からアイツの顔を思い出すなんて憂鬱だわぁ。
「咲華〜、途中まで、一緒に行こ。」
普段は、あたしより早く家を出るお姉ちゃん、夏休み中だからか今日はゆっくりなのね。
「うん…」
一緒に家を出るなんて…すごく久しぶり。
「ねぇ、咲華…学校生活、楽しい?」
「うん…楽しいよ。」
楽しい訳が無い。
今朝も天敵の津軽三佳の顔を思い出してしまったばかり。
けど…お姉ちゃんに心配を掛けたくは無かったので自然と"楽しい"と口にした。
「じゃぁ、私はこっちだから。部活、頑張るのよ!」
笑顔で手を振る姉とは、そこで別れた。
「はぁ…頑張る…か。」
何をしても優秀な姉は、簡単に言えるよな。
美術部で無心に絵を描くのは楽しい、けど…当然、あたしに才能なんてある筈が無い。
『どうせ、あたしなんか…』
いつもの台詞が頭をよぎった。
でも…あたしは首を横に振った。
少しだけでも…頑張ってみようかな。
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「聞いたわよ。あなた、朝から出来の良いお姉さんと一緒だったようね。」
うげっ…朝から絡まれるとは…はぁ、めんどくさっ。
校門に入った途端に津軽三佳から話しかけられた。
いつものように上から目線の横柄な態度だ。
『頑張ろう』と誓ったばかりなのに、テンション下がるわぁ。
「あなた達、顔も脳みそも全然違うし、本当に姉妹なの?あ、分かった…あなたは拾われた子なんじゃなくて?」
よくもまぁ…ペラペラと朝から口が回ることで。
無視しながら、美術室へと向かい歩く。
そう思っていたけど…頭の中に三佳の姉である真琴さんの顔が浮かんだ。
どうして真琴さんは、あんなに優しいのに…こいつはこんなのなんだろうか?
「あんたも優しいお姉さんが居るじゃない…良かったわね。」
無視するつもりが、つい言葉を発してしまった。
本当は『あんたも優しいお姉さんとは全然違って性格が悪いわね。』と言いたかったところだったけど、言葉を選んだ。
「私に…そんな姉は居ないわよ!」
急にキレ口調になった三佳は、そう言葉を投げ捨てると、あたしから離れた。
一体、真琴さんのどこが気に入らないのか…
とりあえず、離れていった事は有り難いと思っておこう。
もう、ずっと…近づいて来ないでくれ。
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