旅行〜咲華
◇登場人物◇
ギルド”永遠の風”メンバー
一条風斗~ウインド ギルドマスター。男子高校生
三好月代~ムーン 女子高校生
佐竹咲華~ブロッサム 女子中学生
六角右京~ライト 社会人(営業職)
ギルド”幻の兔”メンバー
尼子夕凪~イブニング ギルドマスター。女子高校生
津軽真琴~トゥルース 宰相。女子高校生
細川翠 ~グリーン 風の将軍。社会人(事務職)
「さっきの3人組…なんか面白かったわね。」
「うん…面白いというか…変わった人達だった。」
お姉ちゃんに問いかけられ、あたしはそう答えた。
風斗と呼ばれていた男は完全に二人の女子にヤラれてて…あの姿は確かに面白かったわ。
それよりも月代と呼ばれていたスポーティなスタイルの女の子…どこかで会った事があるような感じがした。
うーん、誰に似てるのだっけか。
もう一人の美人系の女の子は…何だっけ?あー、夕凪だ。まったく掴み所が無い感じ…アレは危険な香りがするわ。デンジャラスね。
昨日から三重県に遊びに来た私達家族。
伊勢神宮に行って美味しい海鮮を食べた。
神社は地元にも沢山あるから新鮮味は無かった…そもそも、あたしは神社仏閣に興味が無い。
それに対して、美味しいと聞いていた海鮮料理は確かに最高だった。
量が多すぎて、お父さんに手伝って貰ったけど。
そして、今日は遊園地に来た。
けど…お母さんがジェットコースター嫌いって事で、早々に切り上げて今は隣接しているプールに居る。
にしても家族旅行なんて久しぶりだわ。
ただ、プールも楽しいけど…問題がある。人が多すぎるって事よ。
「邪魔だわ…ブロッサムに変身して周りの人間共を蹴散らしたいわ。」
「え?何?咲華?」
しまった…心の声が漏れてしまったようで、お姉ちゃんに意味不明な話を聞かれてしまった。
まさか、オンラインゲーム"サウザンドフェアリー"で扱うキャラ"ブロッサム"になって周りの人間共を蹴散らしたい。なんて事は言えずに黙り込む。
姉と共にプールサイドを歩くと、男共からの目線が気になる。
勿論、あたしに向けられている視線じゃない…すべて隣を歩くお姉ちゃんに注がれている。
『おい、おっさん…見るな…』
あたしは頭の中で武道家スキル"暗黒流球"を放った。
『くっ、倒せんか…』
「ねぇ、何か食べようか?お父さんからお金、預かってるし。」
「うん…」
必死に姉を守る為に戦う妄想を繰り広げていると、その守っている姉から言葉を掛けられた。
「時間早いけど、お昼の時間になると混むだろうしね。」
そう言われたけど、まだあまりお腹が空いていない。
「あまりお腹空いてないけど…」
「じゃぁ、焼きそばでも買って二人で食べようか。」
もともと少食気味なあたしは、それで充分。
「うん、それなら。」
他人に対して警戒感が高いあたしも、姉には心を許している。
あたしと違い美人で頭が良く、運動神経まで良い姉に対して嫉妬心を抱いている事は確かだけど、尊敬もしている。
何でも、姉に任せておけば間違いは無い。
「あ…また会った。」
焼きそばを買った後、席を探しているとさっきの3人組に出会った。
「あ、咲華ちゃんだ…一緒に座る?」
「ありがとうございます。席、空いてなくって。」
月代さんの誘いを受け、姉が丁寧にお礼を伝える。あたし達は3人組と相席させて貰う事になった。
ん?この男…今、お姉ちゃんの胸元を見たな…
『武技…暗黒流球!』
うむ…やはり、発動しないか…
「どうしたの咲華?右手を突き出して。」
あっ、しまった…心の中で放った技だったけど、つい…体が動いてしまってたわ。
「あー、ちょっと伸ばしただけ。」
バツが悪かったあたしは、目を逸らしながら小声で答えた。
「自己紹介がまだだったわね…私は三好月代、高校一年生です。」
「ご丁寧にありがとうございます。私は佐竹絢音と言います。私も高校一年生です。」
「あら?同い年だったのですね…私は尼子夕凪。」
お姉ちゃんと同じ高校一年生だったんだ…
「ほら、風斗も自己紹介して。」
「あぁ…一条風斗。男子高校生しています。」
月代さんに促されて自己紹介をする風斗とやら…彼氏って感じでは無さそうな雰囲気。
一体どういった関係なのかしら?
「ほら、咲華…あなたも。」
あー、そういう流れになるわね。
「佐竹咲華っす…中学二年生っす。」
「"っす"って何?おかしな口調ね。」
笑いながらお姉ちゃんが言う。
確かに…普段、こういう口調はしない。けど、ゲーム内でギルドメンバーと話す時は何故かこうなる。
ここにはギルドメンバーなんて居ないのに何故、この言葉遣いになっちゃったのか…不思議だ。
「うん、可愛い…」
月代さんに可愛いと言われる。
ぶっちゃけ不細工なあたし…可愛いなんて言われた事、無いわ。
「咲華、良かったね。さ、先に好きなだけ焼きそば食べて。」
「あ、ありがとう…」
お姉ちゃんに言ったのか、月代さんに言ったのか。
どちらか分からないように感謝の気持ちを伝えた。
「お二人は仲が良いですね。羨ましいです。」
夕凪さんがゆっくりとした口調で話す。
じっと見つめながら話すその姿は、まるであたしの心の中を探られているかのように感じた。
この美貌で見つめながら話されたら…あたしが男だったらイチコロだわ。
「尼子さんは、ご姉妹は?」
見つめられていたのはあたしだったけど、姉が夕凪さんに問いかけた。
「私は兄が居るけど歳が離れているので、あまり仲は良く無いの。兄はもう家を出てるし。」
夕凪さんに続いて月代さんが自分の事を話した。
「私と風斗は一人っ子よ。」
風斗さんは黙ってソフトクリームを食べている。
どう見ても、一人だけ浮いているわ。
「3人は、お友達…ですよね?」
あたしは気になって、関係を聞いてみた。
「友達っていうか…夕凪とは親友。風斗とは単なる幼馴染ね。」
「友達というか…月代と風斗とは親友同士であり、恋人同士よ。」
夕凪さんの台詞にポカンとした顔をする月代さんと風斗さん。
それに対してニコリと笑う夕凪さん。
何だろう?聞いてはいけない事を聞いてしまったのかな?
「夕凪…さっきから、おかしいわよ。」
「ちょっと早まっちゃったわね…気にしないで。」
涼しい顔をする夕凪さんに対し、月代さんと風斗さんはどう見ても焦っている。
「俺たちも昼ごはんにしようか…俺、適当に買ってくるよ。」
逃げるのね…風斗さん…
「幼馴染なんですねー、私はそういった友人が居ないので羨ましいです。」
流石、お姉ちゃん…この凍りついたような場面を和ませたわ。
「そ、そうなんです。幼馴染でして。」
優しい感じの月代さん…今はオドオドして、ちょっと間の抜けた雰囲気もあるわね。
あー、この雰囲気…月代さんに似た人を思い出した。
ギルド"永遠の風"のムーンさんだわ。
ムーンさんも優しいけど、間の抜けた所もあるのよねー。
「ん?咲華?何、笑ってるの?」
しまった…思わず笑ってしまってたみたいだわ。
「うん、ちょっと…月代さんが知り合いに似てたもので。」
見た目はまったく違うけど、雰囲気はそっくり…そういえば、ムーンさんの見た目は夕凪さんに似てるわね。
「え?私に似た人が居るの?京都に?」
「うーん、どこかに…」
ムーンさんが、どこに住んでいるかなんて知らないから、あたしは適当に答えた。
「どこかに…って、咲華ちゃんって面白いのね。」
フフフと笑う夕凪さん…夕凪さんの発言も突拍子もなくて十分に面白いですけどね。
「お待たせ〜。」
そこに大量の食べ物を抱えた風斗さんが戻ってきた。
友達の為に、良いところもあるじゃない。
「ちょっと…買いすぎよ。」
うん、月代さんに怒られてるわね…風斗さん。
「あの…良かったら佐竹さん達も食べてください。」
あー、私達にも気を使ってくれたのか。
いや…もしかしたらお姉ちゃんに下心があるのかも…
「風斗さん、ありがとうございます。」
ダメよお姉ちゃん、気を許したら。
お姉ちゃんに感謝の言葉を告げられ、デレ顔となる風斗。
うん、もう敬称略で良い。
あぁ、男っていう生き物はホント、美人に弱いわねぇ。
でも、ギルドマスターのウインドさんだったら…こんなデレ顔とかしないんだろうな。
そういえば…ウインドさんも高校生だったか。
どういう人なのか…気になる。
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