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【完結】風と月の永遠~サウザントフェアリー  作者: あんそに


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巨大プール〜月代

◇登場人物◇


ギルド”永遠の風”メンバー


一条風斗~ウインド ギルドマスター。男子高校生

三好月代~ムーン  女子高校生

佐竹咲華~ブロッサム 女子中学生

六角右京~ライト  社会人(営業職)


ギルド”幻の兔”メンバー

尼子夕凪~イブニング ギルドマスター。女子高校生

津軽真琴~トゥルース 宰相。女子高校生

細川翠 ~グリーン  風の将軍。社会人(事務職)

「私の胸を触っちゃって。」

ちょ、ちょっと…夕凪(ゆうな)ったら、風斗ふうとに向かってなんて事を言うの!?


思春期の男の子っていうのはケダモノなの!教科書には載ってないけど、私は知っているわ。

夕凪の冗談を風斗が本気にしたらどうするのよ。


「ちょっと、夕凪、ダメよ!」

そう私が叫ぶも夕凪は笑っている。何?まるで私がおかしな事を言っているかのようだわ。

対して、風斗は顔を真っ赤にしている…うん、こっちは正常な反応ね。風斗が、まともな人間に見えてしまう。


「風斗になら…触って貰っても良いわよ。」

おーーーーい!夕凪さーーーん!

何を言っているのですかーーーー!?

続け様に訳の分からない事を言う夕凪。

もしかして夕凪って、変わってる?って、少し前から感じていたけど今日、確信したわ。

夕凪って…ちょっと、じゃない。だいぶ変わってるわ。


「ダメよ…そんな事を言って甘やかしたら!」

あ、つい怒り口調になっちゃったわ…ごめん、夕凪。


って、怒ったのに…夕凪ってば笑っているわ…『ふふふっ』て何よ。

いったい何を想像しているのかしら?

ちょっと、怖いわ…


そして、風斗…真っ赤な顔して固まってるわね。

ちょっと…気に入らない存在だったけど、夕凪の手にかかればまるで子猫のように見えるわ。

小学生の時は、どちらかと言うと風斗が主導権を握っていた筈だけど…高校生になった今は完全に逆転しているわね。


そう言えば、オンラインゲーム”サウザントフェアリー”でのギルドマスター”ウインド”さんが言っていた。

『ムーンさんは、その人に裏切られたような気持ちを抱いてしまっているのかもね。』

うん、そうね…私と夕凪、そして風斗と遊んでいた小学生の時、風斗はリーダー的な存在だった。

でも…今は、借りて来た子猫のよう。完全に怯えているわね。


「もう!風斗、しっかりして!」

思わず心の声が漏れてしまった…っていうか心の声を全開放して叫んでしまった。


「いや、無理だって…」

情けない声を出す風斗…うん、よく考えたら無理ね。

同級生の女の子に胸を触っても良いよ…と言われて冷静な状態を保てる男子高校生は居ないわ。

本当に触ろうとしないだけ、マシなのかしら…男の子の気持ちなんて分からないから私には理解不能ね。


「ねぇ、次はウォータースライダーに行きましょうよ!」

うん、まったく反省していないわ…夕凪。なんてマイペースなのかしら?

すでに風斗の腕を引っ張っている状態に、私は呆れながら頭を抱えた。

夕凪ってば、もしかして本当に風斗の事が好きなのかしら?


「ちょっ、引っ張らないでくれよ。」

「はやくー、はやくー。」

風斗の腕を引っ張りながら、流れるプールから出ようとする夕凪。

うーん、からかっているだけにも見えるわね…私、女だけど…女心も分からないわぁ。


風斗の腕を引っ張りながら歩く夕凪。

いったい、どういう心境なのかしら…


風斗はたぶん…人間に振り回されている子猫のように怯えているだけね。

夕凪は…すごく楽しそう、あれは心底楽しんでいる顔だわ。

遊びに来たのだから、楽しむのは当然だけど…完全に私の理解を超えた楽しみ方ね。


左手をあごに添え、二人の心境を考えながらプールサイドを歩く。


ん?あれ?


「夕凪ー。風斗ー。」


しまった…見失っちゃった。

もう、人が多すぎるのよ…平日なのに、何でこんなに人が居るのよ。


まぁ、二人はウォータースライダーに向かったのだから、そっちの方に向かえば会えるわね。

巨大プールの中央にそびえたつ、とてつもなく大きい施設。

そこに向かって歩くだけだから、簡単な話よ。


”サウザントフェアリー”で、”迷いの森”の出口に向かうより、よっぽど簡単だわ。

あぁ、でも…あの時はグリーンさんに助けられたんだったな…私、まだ初心者で下級モンスターにも苦労していた頃だったから。


「はぁ…」

突如、私達のギルド”永遠の風”を脱退して、筆頭ギルドの”幻の兔”に加入したグリーンさんの事を考えたら、ため息がこぼれた。

尊敬して…真似をして…頼りになるお姉さん的な存在で…

「もっと…色々、教えて欲しかったな。やっぱり、まるで役に立たない私に嫌気がさしたのかしら。」

寂しさと悔しさと…様々な感情が入り乱れると…いつの間にか涙がこぼれていた。

怪我をして陸上部を休部してから、私は涙をこぼす日が増えた。

「弱くなっちゃったのかな…私。」


「月代ちゃん?」

気が付くと、目の前には夕凪と風斗が立っていた。

しまった…私、泣いちゃってるわ…


「迷子になって寂しかったのね、ごめんなさい…月代ちゃん。」

夕凪はそう言うと駆け寄り…私の体を抱きしめた。

「ちょっと…夕凪。」

突然、抱きしめられた事に驚く私…夕凪の豊満な胸が私の胸に押し当てられる。


「お、おい…三好、大丈夫か?」

夕凪の後ろに立つ風斗に問いかけられる。

嫌…風斗に同情されるのは嫌…


「違う、違う、目が痛くなっただけ…プールの水が合わなかったのかなー?ハハハ。」

おかしな笑い方をしながら二人にそう伝えると、バッと体を引き離し私の顔を覗き込む夕凪。


「大丈夫?目、洗った方が良いんじゃない?」

心配そうな顔をする夕凪…あら、可愛い…不覚にも、ちょっとドキっとしちゃったわ。


「あ、もう大丈夫、ゴミが入っちゃっただけかも…涙が出たら治ったわ。」

「流れ落ちたのね、良かったわー。」

再び、私の体を抱き寄せてギュっとする夕凪。

もう一度、抱きしめる必要はあったのかしら?と疑問に思うも、これも夕凪の優しさなんだろうな、と感じた。


「良かったな。」

ぶっきらぼうに伝える風斗…うん、こいつは優しさもへったくれも無いわ。さっきの"大丈夫か?"は幻聴だったに違いない。


「夕凪、行きましょ。」

夕凪の優しさには応えないとね、そう思った私は夕凪の手を取り、ウォータースライダーへと向かった。

けど…やっぱり、ここでも長い行列が…


「すごい行列だな…ヤメとくか?」

「別に私はヤメても良いけど…」

風斗の問い掛けに私は、どちらでも良い風に答えたけど、夕凪は違った。


「嫌…絶対にウォータースライダーする。」

小学生の時は、私と風斗の意見に従順だった夕凪が、今では堂々と私達の意見に反論している。

うん…夕凪は強くなったね。


「そうか、じゃぁ…並ぼうか…」

逆に風斗は、夕凪に従順になった…まったくもって情ない。

昔、追いかけっこをしながら、夕凪の事を気遣っていた風斗の姿を思い出す。

運動が苦手な夕凪を気にかけながら遊んでいたよね…風斗は。

それが今では遊ばれているみたいじゃない。あー、何だか腹立たしいわね。


「並びましょ。」

素っ気なく伝えると、私は手に取った夕凪の手を引っ張りながら行列に並んだ。

風斗は、私達の後ろへと並んでいる。

まったく…大人しいわね、小学生の時は率先して前に立って、私達を誘導していたじゃない。


行列に並び、ゆっくりとウォータースライダーへと続く階段を登る。

「あ…!!ちょっと、おしり…風斗、私達のおしりを見てるでしょ!」

私は、振り返ると風斗に向かって叫んだ。


「あら、風斗ってば、おしりフェチだったんだ。」

夕凪がニヤリと笑いながら言う。

ちょっと…今度は『私のおしり触ってみる?』とか言い出さないでしょうね…夕凪。


「ち、違うって。」

夕凪の問い掛けに風斗が焦りながら応える…特に何となくそう思っただけだけど…これは図星だったかも。


「じゃぁ…もしかして足フェチなの?」

追い込みをかける夕凪…うん、ちょっと風斗が可哀想になってきたわ。


「フェチとか、そう言うんじゃないから!」

完全に参ってるわね…風斗。


「じゃぁ…この前、言ってた出会い系サイトの子とはどうなったの?」

風斗が何フェチか?なんて事はどうでも良かった私は、気になっていた質問をした。

恋愛話の方がよっぽど面白いからね。

出会い系サイトで出会った子に想いを寄せる風斗…その後、どうなったのかしら?


「だから…出会い系サイトじゃないって…まぁ、でも、何も進展は無いよ。」

「そりゃ、出会わないと、進展はしなわよね。」

風斗の返答に、私は真顔で答えた。


「出会わなくても…毎日のように、会っているから良いんだよ。」

訳の分からない返答をする風斗。


「勘違いよ…風斗。風斗の運命の人はもっと近くに居るのよ。」

私と風斗のやり取りに横入りした夕凪が言葉を発した。

風斗の運命の人?…夕凪、一体、何を言っているの?

もしかして『私が風斗の運命の人よ。』とか言い出しちゃうのかしら…

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