衝撃~風斗
◇登場人物◇
ギルド”永遠の風”メンバー
一条風斗~ウインド ギルドマスター。男子高校生
三好月代~ムーン 女子高校生
佐竹咲華~ブロッサム 女子中学生
右京~ライト 社会人(営業職)
ギルド”幻の兔”メンバー
尼子夕凪~イブニング ギルドマスター。女子高校生
津軽真琴~トゥルース 宰相。女子高校生
イベント「フェアリーの妹を探せ」が終了し、オレが運営するギルド"永遠の風"は18位に終わった。
「あぁ、序盤は調子良かったのにな。」
ギルドメンバーのグリーンさんが突然脱退した後、一気に順位が落ちた。
グリーンさんが居なくなったから…力が落ちた?
うん…確かに重要な戦力が抜けてしまったのは大きい。
ただ、それだけじゃない…明らかにメンバー全員のモチベーションが落ちた事が最大の要因だった。
「はぁ…これからどうしようかな。」
一人、モンスター狩りをしながら呟いた。
「あぁ…つまんないな。ムーンさん、ログインしているみたいだし、行ってみるか。」
オレは"ギルドメンバーと合流する"ボタンを押して、ムーンさんが居る森へと飛んだ。
「あ、ウインドさん、こんばんわ。」
「ムーンさん、こんばんわ。」
「レベル上げですか?」
一人でこの森に居るという事は火魔法レベルを上げようとしているのかな?と予想する。
「はいー、グリーンさんが戻って来た時に褒めて貰いたくって。」
「あ…あぁ、そうだね。」
ムーンさん、てっきりグリーンさんが居ない分、"私が頑張らないと"と考えているのかと思ったけど…グリーンさんが戻ってくるって信じてくれているんだな。
「この森でレベル上げって事は、"トロントウッド"を倒して火魔法レベルを上げているんだね。」
「はいー、あと嫌な事があったんでストレス発散も兼ねているんです。えいっファイアーアロー!」
話しながらもムーンさんは、火魔法をぶっ放している。
「嫌な事?」
「えーっと…今度、ちょっと性格が合わない人と遊びに行く事になっちゃって…」
ムーンさんも、色々と悩みがあるんだな。
「性格が合わない人か…確かに居るね、そういう人。」
そういえばオレも今度、三好とプールに行かないとならないんだった。三好が怪訝な顔をこちらに向けてくる姿を思い浮かべながら言った。
「あ、分かります?ウインドさんにも、合わない人って居るんですねー。」
「あー、居る…何かに付けて突っかかってくるんだ。こっちは何も悪い事をしていないのに。」
「そんな、悪い事してないのに…ひどい人が居るんですねー。」
ムーンさん、分かってくれるんだ…嬉しいな。
ほんと、ムーンさんは優しい…三好とは全然、違うな。
「ムーンさんが合わない人というのは、どういった感じなのですか?」
ムーンさんと性格が合わない人がどういう人なのか?…とても気になる。今後の参考になればと思い尋ねた。
「うーん…何だろう?」
そう言うと、ムーンさんはしばらく動きを止めた後、答えた。
「多分、私、その人の事、昔は尊敬してたんですよ。でも、最近はその人から覇気を感じられなくなっちゃって。なんかもう見たく無いんですよねー。」
軽い気持ちで聞いたけど、なかなか複雑な理由だった。
それにしても覇気が無いって…大丈夫なのか?その人。
「そうなんだ…ムーンさんは、その人に裏切られたような気持ちを抱いてしまっているのかもね。」
「あー、そういう事か。だから私はあの人の事が嫌いなんだ。」
はっきりと嫌いと言われてしまったその人を少し同情した。どこの誰だか知らないけど…
「ここもちょっと飽きてきたし…場所、変えましょうか。」
飽きるほどに、ここのモンスターを倒していたのか。一体何時間、ここに居たんだろう?と思いつつも返事をする。
「了解、もう少しだけ強い所に行きましょう。」
オレはそう誘うと、相談してアシトラの山へと行く事にした。
アシトラの山は、凄く強いモンスターが居る訳では無い。多種多様な属性のモンスターが生息しているのが特徴のエリアだ。
「色んなタイプのモンスターが出るから、それぞれの弱点を狙った魔法を仕掛けよう。」
「はい、ウインドさん。」
オレがアドバイスを送ると、ニコニコとした表情と共に素直な返答が帰ってくる。
「”ヌートリアラス”だ!ムーンさん、行ける?」
「はい…えっと、このモンスターは水属性だから、雷系の魔法が有効ですね。」
「うん、合ってる!頑張って!」
「はい…頑張りますっ!サンダー!」
ムーンさんは所持する武器”星屑のワンド”を天高く掲げると共に雷系の呪文を唱えた。
バババッと閃光が走る。
が、モンスターに対し、ダメージをあまり与えられなかった。
「あぁ、雷魔法レベル…低すぎますね。」
「雷魔法はグリーンさんに任せっぱなしだったからね、仕方ないさ。」
オレはそう伝えると、ヌートリアラスに向けて走り出す。
ザンザンザン!
スキル”サイクロンソード”を発動して、オレはモンスターを倒した。
「ウインドさん、ありがとうございます。」
「ムーンさん、お疲れ様。」
よく考えたら二人きりだな…ムーンさんの姿を見つめながら思う。
「あ、”デニマラス”だわ。」
ムーンさんの声で背後を振り返ると火属性の鳥型のモンスターが翼を広げていた。
「ムーンさん、頼んだ!」
「はい…フレイムバースト!」
「お、上級魔法!」
魔法は火、水、土、雷と4つの属性があり、それぞれの熟練度に応じてレベルが上がり、そのレベルに応じて使える魔法の幅が広がる。
ムーンさんの上級魔法により、デニマラスは煙を上げて倒れた。
「おぉ、凄い…一撃だ。」
「へへーん。」
ムーンさんが自慢気にポーズを作った。
短期間の間に上級火魔法を使えるようになったムーンさん…初心者だと思っていたけど、凄く努力しているんだな。もう初心者とは言えないレベルだ。
「ムーンさん、沢山、頑張ってるからね。凄いと思う。」
「そんなに褒められると照れちゃうわ。」
モジモジポーズを取りながら言うムーンさん…可愛いなぁ。
その後も二人でモンスターを討伐していると、少し離れた所で閃光と地響きが響いた。
「他のギルドかな?」
「ですね、雷魔法かしら?」
強力な魔法を使った戦闘が行われているようなので、音が鳴る方へと行ってみる事にした。
「あ…あれは…グリーンさん。」
久しぶりにグリーンさんの姿を見てオレは固まった。
「一緒に居る人って…」
「ああ、イブニングさんだな。」
ムーンさんの質問に答える形となったが、グリーンさんが共に居たのは、筆頭ギルド”幻の兔”のギルドマスターであるイブニングさんだった。
「あの、黒い人も居るわ。」
「確か、宰相のトゥルースさん…だな。」
「どうして、グリーンさんが”幻の兔”の首脳たちと一緒に居るのかしら?」
ムーンさんの声が聞こえたのか、トゥルースさんがオレ達の存在に気が付く。
「これはこれは”永遠の風”の方々。」
トゥルースさんとイブニングさんが、オレ達の方へと向かってきた。
その後ろにはグリーンさんが続く。
「紹介しますわ。私たちの新しいメンバー、グリーンさんです。」
イブニングさんの台詞に衝撃が走る…3人で一緒にここに居たという事は、と思ったが。
「え?グリーンさん、”幻の兔”に入ったのですか?」
ムーンさんが問い掛けるも、グリーンさんは二人の後ろに立ったまま、何も答えなかった。
「はい…グリーンさんは、私どものギルドで”風の将軍”として活躍していただく事になりました。」
グリーンさんは言葉を発しなかったが、代わりにトゥルースさんが答えた。
幻の兔は4つの組に分かれている…将軍とは、そのリーダー的な存在の事だ。何人ものメンバーを指揮する立場になったという事だ。
グリーンさんは何も言わなかったが、無表情のままオレとムーンさんに向かって頭を下げた。
「そんな…」
ムーンさんは、少し後ずさりしながら小さな声を出した。
「前回のイベントでは、そちらは残念な結果だったみたいですわね。」
イブニングさんが、勝ち誇ったような言い方をするが、こちらとしては筆頭ギルドに敵うとは最初から思っていない。
「いえ、オレ達は…オレ達なりに楽しんでいるだけですので。」
「イブニング様、ホームに帰還するお時間です。」
「あら、もうそんな時間?グリーンさんと一緒だと時間の経過を早く感じますわね。トゥルース、行きましょ。」
イブニングさんがそう言うと”幻の兔”の3人はフッと姿を消した。
「グリーンさん…」
取り残されたオレとムーンさんは、静かになったアシトラの山で立ち尽くすしかなかった。
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