告白〜月代
◇登場人物◇
ギルド”永遠の風”メンバー
一条風斗~ウインド ギルドマスター。男子高校生
三好月代~ムーン 女子高校生
佐竹咲華~ブロッサム 女子中学生
右京~ライト 社会人(営業職)
ギルド”幻の兔”メンバー
尼子夕凪~イブニング ギルドマスター。女子高校生
津軽真琴~トゥルース 宰相。女子高校生
『あーぁ、グリーンさん、どうして抜けちゃったのかしら。』
オンラインゲーム"サウザントフェアリー"で、私が所属するギルド"永遠の風"から仲間だったグリーンさんが脱退した。
心の中で何度も呟き、考えたけど…抜けた理由はさっぱり分からなかった。
だって…毎日、楽しく一緒に遊んでいたんだもの。
抜けた前日も一緒にイベントをクリアしたわ。
『どうして…』
「月代ちゃん…どうかしたの?」
一緒に歩く親友の夕凪が私の顔を覗き込みながら話してきた。
私は暗い気持ちになっちゃっているけど、夕凪は…何だかご機嫌ね。
いつも明るい感じだけど、今日はさらに輪をかけてご機嫌な様子だわ。
「何でもない…夕凪はご機嫌ね。」
そう私が返事をすると夕凪は満面の笑みを浮かべる。
「分かるー?とっても良い事があったの。」
これは…聞いて欲しいという雰囲気だわ。
「へー、どんな良い事?」
「うーん…詳しくは言えないけど…ずっと欲しかった子が手に入った…って感じ…かな?」
「欲しかった子??」
コテンと首を傾げて夕凪に疑問を投げかける。
「うん、5本の指に入るくらいのお気に入りの子…もしかしたら1番になる可能性もあるわ!」
無邪気に笑う夕凪だけど…ほんと何を言っているのかサッパリ分からない。
「ふふ…嬉しそうね。」
分からないけど、親友が喜んでいる顔を見ていると、落ちていた私の気持ちも少し軽くなった。
夕凪は少し子供っぽいところがある…どうせ両親に大きな熊のぬいぐるみでも買ってもらえたのだろう。
でも…それなら私に隠す事なんてしないか…部屋に行った時に見せて驚かせるつもりなのかな?
「ん?あれは、月代の先輩じゃない?」
夕凪に言われて校舎脇を見ると、陸上部の小早川先輩がこちらち向かって手を上げているのが見えた。
「何だろう?ちょっと行ってみるわね。」
「うーん…私、待ってるわ。」
何となく夕凪の顔が曇ってきたのが分かった。ころころと感情が移り変わる子ね。
校舎脇まで駆けて行く。
「やぁ、三好さん…少し良いかな?」
「あ、はい…良いですよ。でも、友達が待ってるから手短にお願いします。」
スラリと長い足をした小早川先輩、インターハイ予選でも良いところまで行ったんだけど残念ながらブロック予選で敗退してしまったらしい。
走り高跳びの事はよく分からないけど、集中力が持たなかったと聞いていた。
ゆっくりと校舎裏へと歩く先輩の背中を見つめながら言った。
「全国、ダメだったんですね…先輩、頑張っていたのに残念です。」
すると先輩は立ち止まり…振り向いて私に向き直した。
「あぁ、本当は全国への切符を手に入れてから言おうと思っていたんだ。でも…ダメだった。」
「え?」
「俺は君の事が好きなんだ…付き合って欲しい。」
「えー?」
まっすぐに目を見つめて伝えられた言葉。
これが…告白というヤツなのね。私には縁のない事だと思っていたけど、今、現実に行われているわ。
動揺を隠せず、思わず先輩から目を逸らしてしまった。
真剣に伝えて貰っているのに、申し訳ない事だけど…顔が、全身が熱くなって立っているのも、やっとの状態になる。
そのまま下を向いてしまった私に対して先輩は続けた。
「三好さんは…俺の事を…どう思っているのかな?」
「あ…あの…」
小早川先輩の事は、たしかに憧れていた。
もしかしたら"好き"という感情だったのかも知れない。
けど…それは以前の話。今は違う。
もう、何とも思っていない。
はっきりと答えないと…そう思うも口の中がカラカラになって、背中には汗が流れた。
「ごめん…困らせちゃったかな。」
あぁ…先輩は優しいな。
「すみません…私…好きな人が居て…」
ゆっくりと、そう答えた。
告白を断る事がこんなに大変な感情になるだなんて思ってもいなかった。
「うーん、そうか…その人とはお付き合いしているのかい?」
「いえ…付き合ってはいないのですが…凄く優しくて…凄く強くって…凄く頼りになる人なんです。」
そうね…コレ、ウインドさんの事ね。
私、オンラインゲームで知り合った顔も本名も知らない人を好きになっているんだわ。
「凄く…か。残念だけど…仕方ないね。あ、でも…怪我が治ったら陸上部には戻ってきてくれよな。」
優しく笑う先輩…きっと凄い勇気を持って告白してくれただろうに。
私なんか…先輩の横を歩けないよ。
こんな私の事を好きになるなんて…先輩、おかしいよ。
怪我は、本当は酷くって、ふたたび陸上部に戻るなんて出来ないのに…まだ両親にも先生にも言えていないなんて…
「私…私…」
「ちょっ…三好さん、どうしたの?泣きたいのは俺の方なんだけどっ。」
全然、泣くつもりなんて無いのに、次から次へと涙が溢れでてくる。
ダメ…かっこ悪い…止まってよ…涙。
「ちょっと先輩!月代ちゃんを泣かせないで!」
夕凪の声…あれ?夕凪って、こんなに強い口調で話せたんだ。
「いや…普通なら、泣くのは俺の方で…」
私の体を抱き寄せる夕凪…優しく甘い香りに包まれる。
「ありがとう、夕凪。でも違うの…私が悪いの。」
良かった…涙が止まったわ。
「俺…三好さんに告白したけど、断られたんだ。」
小早川先輩が夕凪に状況を説明すると、夕凪は私の頭を撫でながら答えた。
「月代ちゃんは好きな人がいるのよ。残念だけど諦めてね。」
え?夕凪ってばウインドさんの事、知らないわよね。
私は思わず顔を上げて、夕凪を見つめた。
いえ…知る訳ないわ…一体、誰の事を言っているのかしら?
「あぁ、好きな人が居るって言われたよ…じゃぁ、俺、行くわな。」
颯爽と去って行く小早川先輩の後姿を夕凪に抱き抱えられながら私は見送った。
「じゃ、帰ろっか。」
ニヤリと笑いながら言う夕凪。
何だろう?私が告白を断った事が嬉しいように見える。
「夕凪…あんたって凄い子だったのね。」
夕凪は、よく男の子に告白されて、その度に断っている…改めて思った事を口にした。
「え?何の事?」
私が尊敬の眼差しを送るもまったく伝わっていない様子。
「えーっと…告白を断るのって大変なんだな、って思ったの。」
「あー、それね。月代ちゃんになら、こう言っても問題無いと思うから言うわね。"慣れよ…慣れ"。」
「はー、やっぱり凄いわ…夕凪様。」
「なんで"様"を付けるのよ。」
夕凪は明るく笑った。
が…次に真剣な表情を浮かべながら言った。
「怖いのは…告白してくる男の子じゃなくて、それを見た女子達よ。」
夕凪のその表情は今までに見た事もなく…寒気を感じる程に冷酷な印象を受けた。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
帰宅後、私は両親に告白した。
「実は…お医者様に、陸上への再起は難しいと言われたの。」
やはり…両親は私より落ち込んでしまった。
気丈に振る舞っているのが分かる。
「それで…日常生活には支障は無いのかい?」
「陸上部の顧問の先生には言ったのかい?私から言おうか?」
いくつか質問された事に対して淡々と答えていく。平静を装って、まるで何でも無いかのように。
ただ…お医者様に言われてから、だいぶ時間は経っていたので、冷静では居られる。
両親も、もしかしたら勘づいていたのかもしれない。
なんせ、もう二ヶ月以上も部活に行っていないんだから。
「でね…私、勉強を頑張ろうって思うんだ。スポーツ推薦で入学したのに走れなくなったなんて伝えたら退学になっちゃうかもだからね。」
「それは…良い事ね、どうする?塾とか行く?」
「うーん、それはまだ良いかな。夕凪と風斗が勉強を教えてくれるから、しばらくはそれで頑張ってみるよ。」
「そうか、あの子たちか…そう言えば小学生の頃は3人でよく遊んでいたな。でも、塾や家庭教師が必要になったら遠慮なく言うんだぞ。」
「うん、ありがとう。じゃぁ、部屋に戻るね。」
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
「ファイアアロー!」
サウザントフェアリーにログインした後、私はギルドメンバーとは合流せずに一人でモンスターを倒しまくった。
何となく…グリーンさんが居ないギルドに顔を出す気にはなれなかったから。
あー、これから、どうなっちゃうのかしら。
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