妹探し〜咲華
◇登場人物◇
ギルド”永遠の風”メンバー
一条風斗~ウインド ギルドマスター。男子高校生
三好月代~ムーン 女子高校生
佐竹咲華~ブロッサム 女子中学生
右京~ライト 社会人(営業職)
翠~グリーン 社会人(事務職)
ギルド”幻の兔”メンバー
尼子夕凪~イブニング ギルドマスター。女子高校生
津軽真琴~トゥルース 宰相。女子高校生
イベント"迷子になったフェアリーの妹を探せ"
あたしが聞いた情報だとフェアリーは鳥型のモンスターによる誘拐って事だったけど、さらに情報収集を続けると誘拐じゃなくて駆け落ちだという事が分かった。
「あぁ、今日の捜索対象である"妹"の親友を見つけて、聞いたんだ。」
ウインドさんが新たに掴んできた情報は、どうやら"妹フェアリー"の親友からとの事。流石はギルドマスター…とても頼りになるわ。
「それは信憑性が高い情報ね。」
「だとすると…誘拐だと思い込んだプレイヤー達はとんだ勘違いをしている訳だ。」
グリーンさんとライトさんはそう言うとニヤリと笑った。
他のギルドが慌てて、間違った考えで行動をはじめた事を面白いと思ったのかな?なんか楽しそうに見える。
この二人はボクがギルド"永遠の風"に参加した際に先に所属していた、言わば先輩だ。
よく口論をしているけど、とても仲良く感じる。何よりも似た者同士ね。
「でも…他のプレイヤーが探している"誘拐した鳥型のモンスター"も、"駆け落ちした鳥型のモンスター"も、同じ"鳥型のモンスター"であって、探し出すのは同じじゃない?」
ムーンさんの話に、ボクも同調した。
「そうっすよ。鳥型のモンスターなんて沢山居るっす。一体、どこを探せば良いんすか!?」
ボクはブロッサムに頭を抱えるコマンドを押しながら、そう叫んだ。
「うーん…今回のイベントは"6時間以内に完結"いう事にヒントがあると思うんだ。」
「え?ウインドさん…どういう意味っすか?」
「6時間以内に終わる事が出来るイベント内容って事だよ。だから、ターゲットはそんなに遠くない所に居るし、よく考えたら絞り込める筈だ。」
ウインドさんの台詞にあたしは固まった。
確かに…開始して6時間で終了するイベントだから、そんなに難しく考える方が間違いだったわ。
自分はゲーム慣れしていると思っていたけど、ウインドさんには敵わないな。
隣を見るとグリーンさんとライトさんも同じように考えている事が分かった。
あぁ、この先輩方には敵わないや。
「えっと…じゃぁ…イケメンの鳥を探せば良いんですか!?」
うん、ムーンさん、ありがとう。ボクに自信を取り戻させてくれて。
「うん、フェアリーが惚れた相手だから、おかしな鳥では無いと思う…もしかしたらモンスターじゃ無いかも。」
「モンスターじゃない鳥って事かな?そんなの居たかしら?私は"魅了スキル"待ちの鳥型のモンスターじゃないかな?って思うの。」
ウインドさんとムーンさんが、お互いの考えをぶつけている。
「"魅了スキル"待ちの鳥型のモンスターだとすると、かなり絞り込めるな。」
ライトさんがグリーンさんの考えを補足した。
「あっ!モンスターじゃない鳥…ボク、心当たりがあるっす。ラムナスの街にある道具屋さんの店主さんは…確か鳥だったっす。」
そう…割と早い段階で訪れる事になる街"ラムナス"。その街にある道具屋さんの店主は確か黒い羽根を持つ鳥だった。鳥と人とのハーフっぽいかもしれない。
「あー、あの街の道具屋の店主さんね、確かに鳥だったわ…でも…おじさんじゃなかったかしら?」
ムーンさんも思い出してくれたようだけど、疑問を持ったようだ。
「時間が惜しい…手分けして探そう。ライトさんとグリーンさんで、魅了スキル持ちの鳥型のモンスターの捜索を。」
ギルドマスターのウインドさんが指示を出す。
「オレとムーンさん、ブロッサムさんでモンスターでは無い"鳥"の捜索を。」
「分かったわ…ライトさん、行きましょう。」
「あぁ、まずはサイクロバードが居るテッサーラ草原に向かおう。」
グリーンさんとライトさんが先に動き出した。
「オレ達は、まずはラムナスの街に向かおう。あの道具屋の主人に聞き込みだ。」
「えぇ、分かったわ…行きましょう。」
ボクはウインドさん、ムーンさんと共にラムナスの街へと歩きだした。
「ところでムーンさん、試験勉強は良いんすか?」
「うん…本当は少しだけ様子を見に来たつもりだったんだけど…無理だわ。もう、楽しくって。」
ボクの問い掛けにムーンさんが笑った。何だろう?リアルでどんな方なのかは分からないけど、同性のボクが見てもムーンさんの雰囲気は可愛く感じる。
あ、このゲーム内だと異性だったわ。
「さぁ、着いたぞ。行こう。」
ウインドさんに続いて、ボクとムーンさんは道具屋さんへと入った。
案の定、画面右上に居るサポートフェアリーの反応は無い。
ここには捜索対象の"妹フェアリー"は居ないという事。
改めて見ると、道具屋の店主さんは、おじさん…鳥である事は間違いないけど…このおじさんと駆け落ちなんてしないわよね。
「あの…最近、フェアリーを見ませんでしたか?」
ウインドさんが問いかけると、ご主人さんは答えた。
「はて…フェアリーとな?何じゃったかのぉ。」
うん…おじさんと言うより、おじいちゃんね。
こりゃ、ダメだわ。他を探さないと…あたしがそう考えた時、ムーンさんが、おじいちゃん鳥に聞いた。
「あの…店主さんには息子さんは居ますか?」
ハッとした思いでムーンさんと店主さんを見つめる。
「あぁ、おるよ。息子は孫と一緒にテンポロスの森で暮らしておるわい。」
「テンポロスの森ですね!ありがとうございます!」
ムーンさんはゲーム初心者だと思っていたけど、全然、あたしより凄いわ。
「ムーンさん、やったね!テンポロスの森なら、すぐ近くだ。」
「ムーンさん、凄いっす!」
テヘヘと照れ笑いコマンドで、あたし達のコメントに答えるムーンさん。
「まだ分からないわ。急ぎましょ。」
「そうだね、今から会う"鳥"が正解とは限らない。行こう。」
ウインドさんと共に道具屋の主人にお礼の挨拶をし、店を後にした。
テンポロスの森…ここも初期に訪れたきり入っていない。
特に何の変哲もない森だったという記憶。
「ここも久しぶりだね。」
森へ到着するなりウインドさんは、高くそびえ立つ木々を仰ぎ見ながら言った。
「久しぶりっすね。でも…この森に居る"鳥"って、やっぱりモンスターなんじゃ無いっすか?」
「えー、あの、おじいちゃんの息子さんとお孫さんを倒すなんて無理よ。」
ムーンさんが、あたしが言いたかった事を代弁してくれた。
「うーん、森の中に村なんて無かった筈だし…やっぱりモンスター?」
そう話しながら森の中を彷徨い歩いていると、何体かのモンスターが現れた。
どのモンスターもランクは低くあっさり討伐していく…鳥型のモンスターは、出て来なかった。
「あれ?向こうにある…アレは何かな?」
ムーンさんが指を刺す方向を見る。
少し上の方…見上げるという表現が正しいかな。
「家…すっかね?」
「あぁ、家だな。」
木の上に建てられた家…ツリーハウスは、遠目から見てもとてもお洒落な雰囲気だった。
「こんな家、以前は無かったよね?」
「うん、無かった。」
「無かったっす。」
ムーンさんの質問にウインドさんとボクは答えた。
「これは正解だな…グリーンさんとライトさんに連絡しよう。」
発見した家に向かって歩きながら、ターゲットである"鳥"が居ると思われる家を発見した事をウインドさんが二人に伝えた。
「あれ?先客が居るわね。」
ムーンさんの言葉で前方を見ると、ツリーハウスの下に黒いローブを纏ったプレイヤーが居るのが分かった。
「あれは…」
ウインドさんは、そう言うと足を止める。
「お待たせ!」
「こっちのルートが正解だったのね!」
ライトさんとグリーンさんが現れた。が…すぐに黒いローブの存在に気づく。
「あの人は…」
グリーンさんは、黒いローブのプレイヤーを知っているようだ。
その方はこちらに向かい歩いてきた。
「これはこれは永遠の風の皆様…自分はギルド"幻の兎"の宰相をしているトゥルースと申します。以後、お見知りおきを。」
丁寧に挨拶を行う姿…ボクはその姿をどこかで見た事があるような気がした。
一歩、前に出たウインドさんが口を開く。
「もう、今日のイベントはクリアーしたのですか?」
「はい…たった今。今日は先に上がらさせていただきました。」
深々とお辞儀をし、堂々とした立ち振る舞いはとても気品を感じる。
あ…この容姿に服装…そしてこの立ち振る舞い。思い出したわ。
漫画『閃光の執事は悪事を許さない。』に出てくる執事のトゥルースにそっくりじゃない。
そういえば…この前、友達になった津軽真琴さんと一緒にコラボカフェに行く約束をしたところね。
「ウインドさん…グリーンさん…皆様、それではまたお会いしましょう。」
トゥルースさんは、そう告げるとスッと姿を消した。
立ち去り方まで『閃光の執事のトゥルース』そっくりだわ。
「さっきの人…どうしてグリーンさんの名前を知っているんだ?」
ライトさんが不思議そうに呟いた。
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