妹探し〜翠
◇登場人物◇
ギルド”永遠の風”メンバー
一条風斗~ウインド ギルドマスター。男子高校生
三好月代~ムーン 女子高校生
佐竹咲華~ブロッサム 女子中学生
右京~ライト 社会人(営業職)
翠~グリーン 社会人(事務職)
ギルド”幻の兔”メンバー
尼子夕凪~イブニング ギルドマスター。女子高校生
津軽真琴~トゥルース 宰相。女子高校生
「あれ?そうなの?」
驚いた事に、イベント初日…私たちのギルドは1位となった。
イベント”迷子になったフェアリーの妹を探せ”
多くのギルドが捜索達成となったけど、最短の1時間で探し出したのが私たちのギルドだった様子。
ギルドマスターのウインドさんが、
「しまったなぁ。また筆頭ギルドの”幻の兔”に目を付けられてしまう。」
と言ったけど、その通りだと思った。
2日目となった今日は私たちのギルドは全員でフェアリーの里へと来た。全員と言ってもムーンさんだけは試験中との事で来ていない。
「なんか凄いプレイヤーの数っすねぇ。」
「初日のヒントがここだったからなぁ。」
ブロッサムさんとウインドさんが言うように、フェアリーの里はプレイヤーで溢れ、ごった返していた。
「手分けしてヒントを探しましょ。」
私はそう伝えると、まずは初日にヒントを得たおばあさんフェアリーの元へと向かった。
とりあえず…孫が見つかった事で安堵した姿を見たかったから。
「おばあさん、こんばんわ。」
「あぁ、この前の…」
多くのプレイヤーにヒントを伝えてきた、おばあさんフェアリー…私の事なんて覚えているのかしら?
と、不思議に思う気持ちもあったけど、おばあさんの笑顔を見ると、そんな事はどうでも良いと感じた。
「あ、お姉さん!」
そう声を掛けてきたのは初日の捜索対象だった"家出した妹フェアリー"だった。
「こんにちは。もう家出なんかしちゃダメよ。」
そう伝えると妹フェアリーはムスッとした顔になった。
「おばぁちゃんが悪い事をしなければ、大丈夫なの。」
そう言われてしまった、おばあさんフェアリーを見ると苦笑いを浮かべている。
「はいはい、私が悪うございました。」
そうやって謝るおばあさんフェアリー。
あぁ、私もおばあちゃんに色々と迷惑をかけちゃったな。
両親が共働きだった私は、いつも近所に住むおばあちゃんの所に遊びに行っていた。
そして毎日のように我儘を言って困らせる。いつものパターンだった。
中学校になり部活や勉強で忙しくなった私は、病気で入院していたおばあちゃんとは疎遠になっていた。
たまに両親に連れられてお見舞いには行ったけど…頭の中は他の事で頭が一杯だった。
ある日…おばあちゃんが危険な状態だと両親に告げられた。
でも…私は一緒に病院に行かなかった。そして、その日の夜、おばあちゃんは息を引き取った。
「明日…部活で朝、早いから。」
そう言って、病院に行くのを断ったけど…違う。
怖かった…ただ、怖かった。
大好きだった、おばあちゃんが居なくなってしまうのが怖かった。
もう会えなくなるなんて…そんな事、耐え難かった。
今でも後悔している。
どうして最後の日に、私は病院に行かなかったのだろう。
入院中…お見舞いに行っても、どうしてちゃんと話をしなかったのか。
そもそも、どうして、もっとお見舞いに行かなかったのか。
あんなに好きだったのに…
どうして…どうして…どうして…
私は"家出した妹フェアリー"に向かい直して言った。
「おばぁちゃんを大事にしてね。」
膨れっ面だった妹フェアリーが…私の顔を見た。
「そんなの…」
とてもプログラムされた存在だとは思えない口調で続きを答えた。
「…当たり前じゃない。」
私は安堵すると、ついPCの前で目頭を押さえた。
隣に座る右京が慌てている。
「約束ね。」
そう伝えると、私は二人が住む家から離れた。
「翠どうしたんだ?何かあったのか?」
右京が心配そうに聞いてくる。
「何でも無いわ…ゲーム中は本名、禁止ね。」
しばらくフェアリーの里を歩いていると、突然背後から声を掛けられた。
「あなたは"永遠の風"の方ですね。」
振り向くと黒いマントを身に纏った高身長の男性の姿があった。
あれ?この姿…どこかで見たような…
記憶を辿るもの思い出せない。
「申し遅れました。自分はギルド"幻の兎"にて宰相をしております、トゥルースと申します。」
右手を自身の胸に当て、丁寧な挨拶を行う堂々とした立ち振る舞い…この姿勢も見た事があるような気がする。
だけど、私は筆頭ギルド"幻の兎"との接点など無い…気のせいかな?
「あ、はい…ギルド"永遠の風"のグリーンです。どこかでお会いした事がありましたか?」
私は名乗ると共に、自分の記憶を探るように質問した。
「メルメド火山で一度…自分が勝手にお見かけしただけとなります。」
そう言われてハッと思い出した。
この方は筆頭ギルドのギルドマスター"イブニングさん"と一緒に居た男だ。
「あぁ〜、そう言えば…」
私が何となく思い出した風に言うと、筆頭ギルドの宰相と名乗る男は続けた。
「覚えていていただけていたとは光栄です。」
ん?光栄?何を言っているのかしら…この方は。
「それにしても、筆頭ギルドの宰相様が私なんかに何の用事かしら?」
光栄という言葉を無視して私は尋ねた。
出来る事なら早くこの場を離れて、今回のターゲットの捜索に出たい所。
「特に用事と言う訳でもありませんが、一度、ご挨拶をと思っていた所に、今、偶然お見かけしたもので。」
とても丁寧に言葉を告げる宰相さん。
「すみませんが、今は急いでいますので。」
いくら丁寧に挨拶をされても、2日目のイベントが始まったばかりの今はそれどころじゃないわ。
「お忙しい所を引き留めてしまい申し訳なかったですね。お互いに切磋琢磨して頑張りましょう。」
筆頭ギルドの宰相…名前はトゥルースさんだったかな。
もっと上から目線で話されるのかと思ったけど、とても感じの良い方で親近感が湧く。
お互いに切磋琢磨して…だなんて筆頭ギルドの方から言われると何か嬉しいわね。
「いえ、こちらこそ…でば、また。」
そう言って別れた後、情報を探す為に再び歩き出した。
フェアリーの里の家と家との間隔は大きく、各家を訪問するのは意外と時間がかかる。
「ふぅ…確かこの先には、木の上に家があったわね。」
プレイヤーには里の家は小さすぎて入る事が出来ない。なので、フェアリーの方から出てきて貰う事になる。
木の上に住むフェアリーも呼べば出てきてくれた。
が…その時、ライトからコメントが入った。
「みんな、こっちに情報がありそうだ!」
私は慌てて話しかけていたフェアリーに断りを入れ、"ギルドメンバーと合流"ボタンでライトが居る家の前へと飛んだ。
「え?何?この渋滞は?」
見上げると細い階段に一列になって並ぶ人だかりがあった。
「どうやら、この先にある家に情報があるらしくて、行列が出来ているんだ。」
「これは…運営側も想定外じゃないかしら?」
隣に座るライトと言葉を交わしながら、思わずため息が出た。
ウインドさんとブロッサムさんも合流したので状況を説明する。
「これは…並ぶしかないっすね、ボク、行ってくるっす。」
「あぁ、すまない。ブロッサムさん、頼んだ。」
ウインドさんの後押しを得て、大きな体を持つブロッサムさんが列に並ぶと、周囲に威圧感を与えているかのように見える。
「か…代わろうか?」
私がそう言ったけど、ブロッサムさんは首を横に降った後、親指を立てて微笑んだ。
「ブロッサムさん、何故か楽しそうだね。」
笑いながら言うウインドさんの前の空間が歪んだ。
「こ…こんばんわ…」
突然、姿を現したのは、しばらくログイン出来ないと言っていたムーンさん。
「あれ?試験…大丈夫なの?」
私が言うと、ムーンさんが答える。
「まだ試験中なんですけど…どうにも気になっちゃって。少しだけ来てみました。」
テレ笑いをしながら言うムーンさん。
「来てくれて嬉しいよ!ムーンさん!」
本当に嬉しそうね…ウインドさん。
これ、どうしようか…ウインドさんを応援すべきかしら?
ムーンさんも、多分だけどウインドさんの事が気になっているわね。
あー、高校生カップルの誕生かー、なんだか羨ましいわね。って、これは流石に早すぎるか。
「だから…キミ達、試験だとかリアルの事はゲーム内で言わないように。」
ライトが、また堅苦しい事を言う。
うーん…ライトは頼りにならないわ、二人の恋路の為には私が一肌脱ぐしか無さそうね。
「そうだ、今度、オフ会しましょうよ!」
そう、私が言うとライト、ウインドさん、ムーンさんは固まった。
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