試験中〜月代
◇登場人物◇
ギルド”永遠の風”メンバー
一条風斗~ウインド ギルドマスター。男子高校生
三好月代~ムーン 女子高校生
佐竹咲華~ブロッサム 女子中学生
右京~ライト 社会人(営業職)
翠~グリーン 社会人(事務職)
ギルド”幻の兔”メンバー
尼子夕凪~イブニング ギルドマスター。女子高校生
津軽真琴~トゥルース 宰相。女子高校生
「何を言ってるの?」
期末試験初日が終わると隣に座る風斗が訳の分からない事を言ってきた。
「だから…ネットで知り合った人と付き合ったり出来るものかな?って聞いているんだよ。」
「あー、出会い系サイトの事?あんた…そんなのに登録してるの?」
「違うって…そういうんじゃなくて。」
「まぁ…別に良いと思うわよ。あんた…そういうんじゃなくちゃ彼女とか作れそうに無いし…」
ちょっと、聞きたい事がある。と言われたので話を聞いてみたけど…試験中に出会い系サイトの事を聞いてくるとは随分と余裕をかましていて、なんだか腹立たしいわね。
「初日終わったねー。月代ちゃん、どうだったー?」
「うーん、中間試験の時よりは出来たかなー。」
隣のクラスから夕凪が来て試験の手応えを伝え合う。夕凪も問題なく初日を終えたみたいで安心した。
「ん?風斗…何を怖い顔してるの?」
夕凪が不機嫌そうにしている風斗に気づいた。
「あぁ…風斗ったら出会い系サイトで出会った子を好きになっちゃったんだって。」
私は夕凪に説明してあげた。
「ふふふ…風斗が好きな子って出会い系サイトで知り合った子だったのね。」
顎に手を添えながら夕凪が小さく笑いながら言う。
「だーかーらー、違うって言ってるだろ。」
完全に不機嫌な様子の風斗。
何が違うのかはよく分からないけど、せっかく私に相談してきたのだから、怒らせないようにしてあげようかな。
風斗の恋話なんて…面白いし。
「ごめん、ごめん…で、その、知り合った女の子とは、どうなりたいワケ?」
「どうなりたいか?って…うーん、ただ気持ちを伝えたいって言うか…」
頑張って相談してきた割には、なんだが歯切れの悪い答えね。
「ところで風斗は、その子と実際に会った事があるの?」
あーそうか、まだ文字だけのやり取りしかしていない可能性があるわね。夕凪の問い掛けると、私はつい前のめりになった。
「いや…会った事はない。」
「なんだ、無いんだ…風斗ってば、その子に幻想を抱いているだけなんじゃない?」
夕凪がグイグイと攻めている。
「幻想か…確かにそうかもしれない。」
風斗がうつむき気味に答えた。
「ほら、やっぱり。風斗、現実世界を見て…近くに、こんなに可愛い女子が二人も居るのよ。」
え?ちょっと夕凪…何を言い出すの?
「元気出して…」
あー、元気づける為に言ったのね…ドキッとしたわよ。
「そうだよな、会った事も無い相手におかしいわな。」
風斗は、顔を上げたけど、暗い表情は変わらないままね。
「いつも暗いけど、今日はさらに暗くなっているわよ…」
思わず本音を言ってしまった私。
「月代ちゃん…ダメよ。」
夕凪に怒られてしまったわ。そうね、風斗と言えども悩んでる友人を追い詰めちゃダメね。
「じゃぁ、そろそろ帰るわ。」
気がつくと教室内に残っているのは私たちだけだった。
ゆっくりと立ち上がる風斗。
「風斗、一緒に帰ろうよ。」
夕凪か誘った…まぁ、落ち込んでいるみたいだし仕方ないか。私達が慰めてあげよう。
「あー、オレ一人で帰りたいから。」
ちょっと…夕凪の誘いを断るなんて、どういう神経をしているのよ。私は思わずガタリと椅子を跳ね除けて立ち上がった。
「尼子と一緒に居ると尼子親衛隊が面倒なんだ。」
確かに…嫉妬の的になるわね。にしても尼子親衛隊って…いつの間に出来たのかしら?
「うーん、仕方ないわね。じゃぁ、期末試験が終わった次の日曜日は反省会をしましょ。」
「あー、そうだな。三好の試験結果も気になるし、集まるか。」
どれだけ心配されてるのよ…私。
まったく自信が無いから何とも言えないけど…
「じゃぁ、月代ちゃん…二人で帰ろっ。」
「そうね…早く帰って明日の科目の勉強をしなくっちゃ。」
私と夕凪はいつものように並んで帰った。
いつもと違うのは、少し前を歩く風斗の背中を見ながら歩いている事。
「ねぇ、月代ちゃん…もし、風斗がその出会い系で知り合った子と付き合ったらどうする?」
「え?どうするって…そりゃ、応援するわよ。」
「ふーん…私は嫌だな。」
「え?夕凪…嫌なの?」
「うん…風斗は私と月代のモノよ。」
「え?」
思わず私は歩みを止め、立ち止まった。
同じく立ち止まった夕凪が振り返りながら言う。
「私は風斗の事が好きよ…月代ちゃんも一緒に好きになろうよ。」
夕凪の言葉に頭の中が混乱する。
「え?え?」
まず第一に夕凪が風斗の事を好きだという事。
美人で人気の高い夕凪が何の取り柄もない、ごく普通の男子高校生である風斗の事が好きって一体どういう訳?
次に『月代ちゃんも一緒に好きになろうよ。』と言った台詞。
私も風斗の事を好きになるって事?
どうしてそうなるの?夕凪も風斗の事が好きって言ったわよね。
女子二人で一人の男の子を好きになるなんて事…ダメな筈よね?
「どうしたの?面白い顔して。」
「面白い顔にもなるわよ。変な冗談はヤメて。」
恋愛経験の乏しい私には夕凪の言葉を理解出来ない。
「ふふふ…私は本気よ。」
笑顔で言う夕凪…まったく意味が分からない。
「なんか…頭が痛くなってきたわ。」
私は思わず額を抑えた。
「あ、ごめんなさい…試験中にこんな話は不味かったわね。今の話は忘れちゃって。」
風斗の事が好きだとあっさり言ったかと思ったら、今度はあっさりと、すぐに忘れてと言う。
「う…うん。」
小さく返事をした後、私達は再び歩き出した。前方を歩いていた風斗の姿はもう無い。
「明日は数学と日本史ね。あー、苦手科目だわ。」
そう呟く夕凪の姿をチラリと横目で見た。
夕凪はよく分からない事をたまに言うけど…改めて不思議な子だな。と感じる。
帰宅後、カップラーメンを食べながら数学の教科書を開いた。
「えーっと、風斗が教えてくれたポイントは…」
と風斗の事を思い返すと、夕凪の顔が頭に浮かぶ。
「あーダメ…全然、集中出来ないわー。あんな話、忘れられる訳無いじゃない。」
ブンブンと首を横に振った後、ゆっくりとノート型のPCを開けた。
「ちょっとだけ…気分転換するだけ。」
毎日、ログインしていたオンラインゲーム"サウザントフェアリー"
もう3日もログインしてなかったのね。と思いながら、相棒のフェアリーと挨拶を交わす。
画面上には、日曜日から始まるイベントの案内が表示されている。
ギルドメンバーは誰もログインしていない様子だった。
ちょっとだけ…レベル上げしよ。
「よしっ!」
「えいっ!」
「やった!Bランクモンスターを一人で倒したわ!」
って、あーダメ…もう一時間もプレイしちゃったじゃない。
慌ててログアウトして、机に突っ伏した。
「これは…風斗が悪いのよ。きっと…多分…そうよ。」
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