ある日の下校時〜咲華
◇登場人物◇
ギルド”永遠の風”メンバー
一条風斗~ウインド ギルドマスター。男子高校生
三好月代~ムーン 女子高校生
佐竹咲華~ブロッサム 女子中学生
右京~ライト 社会人(営業職)
翠~グリーン 社会人(事務職)
ギルド”幻の兔”メンバー
尼子夕凪~イブニング ギルドマスター。女子高校生
「はぁはぁはぁ…」
突然、息を切らしながら、あたしの前に現れたのは津軽さん。
「さ、咲華、ちゃん…こんにちは。」
驚くあたしに向かい、息絶え絶えに挨拶の言葉を告げる。
おそらく、あたしの姿を見つけて走って来たのだろう…そして目の前に回り込んで話しかけた。
「津軽さん、こんにちは。」
遠くから、あたしの名前を叫ばず、目の前に来てから話しかける。自分が目立ちたく無いし、相手が目立つ事も避けたい。だから相手の視界に入ってから声をかける。
あたしと同じ行動パターンだから、よく分かる。
「もう…私の事も下の名前で呼んでよね。」
小さくて小太りの津軽さん…知り合ったばかりだし、年上だと思うから、いきなり下の名前で呼ぶなんて出来ないな。
困惑した表情を浮かべていると…
「真琴よ…忘れちゃった?」
忘れたから名前を口に出さなかった訳じゃない。けど、どうやらそう思っている様子。
「真琴さん、こんにちは。」
下の名前で挨拶を交わすと、津軽真琴さんは満面の笑みを浮かべた。何だろう?変わった方だな。
漫画"魔法使いのサナサ"を二人共好きだった事で仲良くなった真琴さん。LIMEアドレスを交換して、時々メッセージを送り合うようになっていた。
お互いに好きな漫画を教えあったり、アニメの話だったり…"魔法使いのサナサ"以外にも共通の話題が沢山あって、とても楽しい。
ただ…もう一つの趣味のオンラインゲームの話はしないようにしている。そこはあたしにとって大切な場所、そこの仲間とだけの空間にしたかったから。
「ねぇ、今度あのアニメのコラボカフェアが始まるんだって。一緒に行かない?」
「え?あたしとですか?」
どうして、一度しか会っていないあたしの事を誘うのかな?SNS上の友達と言っても良いぐらいの間柄なのに…
「うん…咲華ちゃんと行きたいの…」
もしかして…真琴さんって友達が居ないのかな?
あたしと同じで…
「あの…時間が合えばで…」
真琴さんは、友達が居ない…そう考えると合点がいく。
同じく友達が居ないあたしだけど、警戒心も残っていて手放しで一緒に行きたいとは言えなかった。
「ありがとう、また連絡するね。」
笑顔となった真琴さんの背後を見ると、あたしの顔は引きつった。
津軽三佳と、その取り巻き達がこちらに向かって歩いてくる。
あたしに気が付いたようで、その中の一人が指を差した。
ゆっくりと近づいてくる集団…全員がいやらしくニヤニヤと笑っている。
が…
津軽三佳は、驚いたような表情を浮かべると…目を逸らして、そのまま通り過ぎた。
取り巻き達はあたしの前で立ち止ったが、津軽が先に行くと慌てて追いかけていく。
「え?なに?」
あたしは思わず驚きの声を上げる。すると、隣に居た真琴さんが言葉を発した。
「あの子…私の妹なの。」
「………。」
「全然、似てないでしょ。」
あたしに笑顔を向けて言う真琴さん…でも、さっき見せた笑顔とは明らかに違っていた。
「あ、妹さんなんですか。」
あたしは、真琴さんの妹である津軽三佳がクラスメイトである事、嫌がらせを受けている事を隠した。
にしても…三佳は明らかに姉である真琴さんを無視していた。真琴さんの様子も何かおかしい。
「じゃぁ、行くわね。」
「は、はい…」
あたしは手を振ると、どことなしか急ぎ足で真琴さんは歩き去っていった。
よく分からないけど、真琴さんと一緒だった事で助かったわ。あたしも帰ろ。
確かに…津軽って、あまり聞かない苗字ね…頭の中の整理出来ないまま、家路へと急いだ。
さてと、今日はレベル上げしようかな。
新しい武具も試したいし。
オンラインゲーム、サウザントフェアリーにログインして装備を確認する。
この前のイベント報酬のガチャでボクは新しい武具をゲットした。
限定武具「ビックバン」…黒いグローブ。
ライトさんは『重力系の武具じゃないかな?』と予想していた。
一人で星屑の森へと向かう。
「あぁ、久しぶりに来たな…ここ。」
主にCランクモンスターが現れ、たまにBランクモンスターが出現する。一人でレベル上げするには最適な場所。
まだ、武具レベルも上がってないからね。早く慣れなくっちゃ。
「フェアリー、モンスターを探して。」
ボクは画面の右上に居るフェアリーに対し、モンスターの探索を依頼した。
「任せて、ブロッサム!」
探索を始めたフェアリーの体が緑色に点滅する。
「うーん…北東方向に100mの付近にモンスター発見。」
フェアリーのレーダー感知にモンスターが、かかった様子。
「よしっ、行ってみるっす。」
進んだ先に現れたのは、Bランクモンスターの”キャソウェバード”。
「うん、ちょうどいい。」
攻撃力の高い飛べない鳥。回避能力は低いのでゆっくりと戦える。
まずは通常攻撃でジャブを与える。
大きなクチバシを突き出すキャソウェイバードの攻撃を躱わす。
えーっと、新しい武具のスキルは…っと
「武技…暗黒流球!」
ボクはスキル名を叫びながら、黒いグローブをキャソウェイバードに向かいぶつけた。
ドッドーンッ!
クチバシの横側に攻撃がヒットすると、黒い球のような影が現れ…キャソウェイバードの体を吹き飛ばした。
おぉ…凄い。
えっと?これは…2段階攻撃…かな?
キャソウェイバードのHPが、ぐんっと減少する。
「よし、あとは連打で。」
ドンッドンッドンッ!
Bランクモンスターは叫び声を上げるとHPを喪失させた。
「うん…凄いスキルだ。」
この黒いグローブが持つ特殊スキルは実弾撃を与えた後、さらに黒い球を出して追加攻撃を発動する事が分かった。
星屑の森で、何体かのモンスターを倒した。
分かった事は、完全に当てないとスキルは発動しない。
MPを一気に持っていかれる。
そして、そのパワーは現在出ている武器の中で最強クラスである事。
「うん、レベルも上がったし満足かな。フェアリー、そろそろ街に帰ろうか。」
「たいへん、たいへん!」
「え?」
帰ろうとした矢先にフェアリーが騒ぎ出す。
これは…高ランクモンスターが現れる時の合図。
現れたのはAランクモンスターの”ブラックバックエース”
「あちゃー、すばしこいヤツだ。」
ボクの分身であるブロッサムは、攻撃力にステータスの多くを振り分け、素早さは二の次にしていた。
このモンスターは素早さが高い上に攻撃力も高い。唯一、防御力は中レベルだけど、それはこっちの攻撃が当てられればの話。
「うぉっ」
猛スピードで突っ込んできたブラックバックエース、鋭く尖った角の先制攻撃を喰らう。
なんとか紙一重で躱した…つもりだったけど、右腕をかすった様子。
「すばしこいヤツは嫌いなんだよなー。」
「ブロッサムさん、手伝おうか?」
「え?」
後ろを振り返ると、そこにはウインドさんの姿があった。
「どうしてここに?」
「オレもこの森でレベル上げをしてて、少し前から見てたんだ。」
「ウインドさん、ヘルプっす!」
「よし来た!」
「オレが引く付けるから、ブロッサムさんはヤツのスキを狙って!」
そうウィンドさんは言うと、ブラックバックエースに向かい走り出した。
モンスターの角攻撃を巧みに躱しながら戦うウインドさん…その洗練して動きには無駄が無く、的確にダメージを与えていく。
凄いな、ウインドさん…またスピードが上がってるや。
「ウィンドさん、しゃがんで!」
ボクはそう叫ぶと同時にスキルを発動した。
「武技…暗黒流球!」
ドッドーンッ!
ウィンドさんの頭を飛び越えて、ブラックバックエースに攻撃を加える。
黒いグローブが腹部にヒットすると共に黒い影が発せられた。
「おぉ~、ブロッサムさんの新スキル、凄い!」
「このまま押し切るっすよ!」
ボクは武技、爆裂連打を発動。ウインドさんはサイクロンソードを発動。
激しい連打、連撃がブラックエースの体を襲う。
チャラララーン♪
高ランクモンスターを倒した際に流れる音楽が鳴り響いた。
「ウインドさん、ありがとうっす!」
たまたま来たような事を言ってたけど…ウインドさんは、きっと心配で見ていてくれたんだろうな。
あたしはそう思いながら、じっとウインドさんの後姿を見つめた。
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