ビックバトル~夕凪
◇登場人物◇
ギルド”永遠の風”メンバー
一条風斗~ウインド ギルドマスター。男子高校生
三好月代~ムーン 女子高校生
佐竹咲華~ブロッサム 女子中学生
右京~ライト 社会人(営業職)
翠~グリーン 社会人(事務職)
ギルド”幻の兔”メンバー
尼子夕凪~イブニング ギルドマスター。女子高校生
「ちょっと!どういう事なのよ!トゥルース!トゥルースは居る!?」
今回のイベント、ビックバトルも終盤。当然、私が運営するギルド”幻の兔”は筆頭ギルドの座を維持している。けど…3位に少数ギルド"永遠の風”が迫ってきた。
「永遠の風…ほんと、生意気。前回は油断して首位の座を奪われたから、今回は気を付けて!と言ったのに!トゥルース!」
参謀であるトゥルースを大広間へと呼び寄せる。
ここは私がギルドメンバーから集めたマネーで購入した一軒家。ゲーム内で移動に便利な大きめの街にあり、幻の兎の拠点。"ホーム"と呼んでいる。
「イブニング様…すみません、遅れました。」
黒色のマントを翻して私の前に跪くトゥルース。細かい所作まで可能とするのは、このゲームの凄いところ。
「ちょっと、どうなっているのよ。永遠の風が3位に迫ってきているわ。」
「とうやら…メルメド火山でサラマンダーとキマイラを倒しまくっているようでして…」
「ちょっと…キマイラってSランクでしょ?あのギルド…そんなに強いの?」
「少数ギルドですが…個々の能力が高いようでして…」
「信じられないわ…トゥルース行くわよ。」
「はい?もしかして?」
「そうよ…メルメド火山に向かうわ。準備してちょうだい。」
「いや…あの火山は危険です。主力メンバーと一緒でなければ…」
「あなたが居れば大丈夫よ…それにちょっと様子を見るだけだから。」
「左様でございますか…では、アイテムだけ整理させていただきます。」
「早くしてね。」
この半年、イベントでは常に首位の座をキープしてきた。なのに前回は…。少数ギルドなんかに邪魔される訳には行かないわ。
「夕凪ー、ご飯出来たわよー。」
「今日は自分の部屋で食べるー。」
階段を登る音がした後、怪訝な顔をしながらお母さんが部屋へと入ってきた。
「もう、またゲームしてるの?」
「違うわよ、勉強してるの。」
画面をスタディソフトに切り替えながら答えた。
「そう、頑張ってね。」
「うん…期末試験が近いからねー、頑張らなくっちゃ。」
期末試験ごとき、まぁ…何とかなるわ。
「イブニング様、お待たせしました。」
「そう…行きましょ。」
メルメド火山…AランクとSランクモンスターの出現率が高い、最も危険なエリア。草原エリアとのはっきりとした境目が"この先、危険"を物語っている。
「ここから先は危険エリアです。」
「知ってるわ…来た事あるから。」
「19時になります…ご準備を。」
「分かったわ…」
「牙狼族…召喚」
呼び出した3体の狼を配置。
私の職業は"獣使い"…おそらく、私しか手に入れていない職業。二つの職業を組み合わせる事で転職に成功した。
どうやって獣使いになったかは内緒…だって、せっかくレアな職業を身につけたのに他に同じ職業の人が増えたら嫌でしょ。
「さて…"永遠の風"とやらを探しましょうか。」
「はい。」
狼たちの後ろをトゥルースと共に歩く。
トゥルースは、とてもログイン時間が長い。私がログインすると、ほぼ居る。仕事をしているとしたら自営業ね。
「イブニング様、右方向にサラマンダーです。」
「あー、あそこね。狼共…出番よ。」
ガルルルル〜と唸り声を上げながら3体の狼はサラマンダーに向かって走り出した。
けど…流石はAランクモンスターのサラマンダー、一体、また一体と狼は倒された。
「イブニング様、残った狼を下げて防御に…自分が参ります。」
「そう?じゃぁ…任せたわ。」
私は最後に残った一体を、呼び戻した。
同時にトゥルースが飛び出す。
「槍技…ターンオーバー。」
彼が両手で持つ武器は両側に刃が付けられた槍。技スキルを発動してサラマンダーに襲いかかる。
ドドドーン!
流石に一撃では倒せない。
が…2度…3度と技を繰り出すとサラマンダーのHPはみるみるうちに減少。
5度目の技スキルを放ったのち…サラマンダーは崩れ落ちた。
「トゥルース…流石ね。」
「かなり手こずりました。」
とても苦労したようには見えなかったけど…彼の中ては苦戦だったようね。
「やはり二人でここに長居するのは危険かと…」
「分かったわ…」
「大鷲族…召喚。」
私は2体の鷲を召喚し、大空へと飛び立たせた。
「お前たち…人の姿を探して。」
職業、獣使い…今のところ、一度に召喚出来る獣は3体まで。
レベルが上がればもっと多くの獣を同時に扱えるのかも知れないけど、誰に聞く事も出来ないし、調べる事も出来ない。
今は狼1体を傍に置き、鷲2体で"永遠の風"を探している。
「たいへん、たいへん!」
突然、フェアリーが騒ぎ出した。
「え?もしかして…」
「イブニング様…キマイラです。」
トゥルースが見上げる方向を見るとSランクモンスター"キマイラ"の姿があった。
「我々だけでは危険です。離脱アイテムを使用しましょう。」
「仕方ないわね…」
トゥルースがアイテムを取り出した時…
ズドドドーン!
突然、轟音が響いた。
「え?何事?」
「上級雷魔法…サンダーボルトです。」
見ると上空に先程放った偵察用の二体の大鷲が旋回する姿が見えた。ここに人が居る?
「大丈夫ですか!?」
背後からの声に振り返ると…あれ?なんか見た事があるような顔のプレイヤーだわ。
あちらも私を知っているのか、私の顔を見て固まっている。
「お久しぶりです、イブニングさん。覚えていないとは思いますが…以前、そちらのギルドに所属していたウインドと言います。」
思い出したわ…結構、優秀だったから期待していたのに私のギルドから出て行った男。
「えぇ…覚えていますわ。剣士の方でしたね。」
私が追い出したんじゃない…コイツが自ら出て行った…どうして私の素晴らしいギルドから出ていったのよ。
「今は"永遠の風"という小さなギルドを運営しています。」
「そう…あなたが…」
あームカつくわ。勝手に出て行ったクセに私のギルドの邪魔をしているのが、あなただったのね!?一体、何様のつもり??
「ウインドさんのお知り合いですか?私はムーンと言います。」
紫色のローブを見に纏った、可愛らしい雰囲気の魔法使いプレイヤーが自己紹介をしてきた。
他の"永遠の風"のメンバーは硬直している。
おそらく筆頭ギルドの代表である私の名前を知っているのだろう。
この、すっとぼけた魔法使いは私の名前を知らないようね。
「キマイラが来ます。」
前方で警戒をしていたトゥルースが伝えた。
「行くぞ!」
永遠の風のギルドマスターが叫ぶと剣士二人と武道家一人が走り出し、キマイラに攻撃を加える。
「うまく立ち回っていますね。」
冷静に分析をするトゥルース。確かに…キマイラに攻撃させないようにしながら戦っている。けど、HPを大きく削れてはいないわ。
「グリーンさん、ムーンさん、頼んだ!」
そう叫ぶ声が聞こえてすぐに、前衛の3人がキマイラから離れる。
ズドドドーン!
強烈な雷魔法が炸裂すると、キマイラのHPが大きく削られた。
「あの黒いローブを着た魔法使いがキーマンですね。」
トゥルースの言う通り、上級雷魔法のサンダーボルト…私のギルドでも使える人は居るけど、あれほど強烈じゃないわ。かなりの使い手ね。
「さっき自己紹介をしてきた紫の子はショボいわね…私に自己紹介するなんて10年早いわ。」
「"永遠の風"がSランクモンスター"キマイラ"でポイントを稼ぎ、3位まで昇って来たのは間違いないようです。」
「もう分かったわ…帰りましょ。あと…あのグリーンとか言う魔法使い、引き抜けないかしら?」
「どうでしょうね…まずは調査してみます。」
「よろしく頼むわ。」
キマイラとの戦闘は続いていたけど、私達はホームへの帰路へと就いた。
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